原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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故其火盛燒時 | かれその火の盛りに燃もゆる時に、 | その火が眞盛まつさかりに燃える時に |
所生之子名火照命。 〈此者隼人阿多君之祖〉 |
生あれませる子の名は、 火照ほでりの命 (こは隼人阿多の君の祖なり) |
お生まれになつた御子は ホデリの命で、 これは隼人等はやとらの祖先です。 |
次生子名火須勢理命。 〈須勢理三字以音〉 |
次に生れませる子の名は 火須勢理ほすせりの命、 |
次にお生まれになつた御子は ホスセリの命、 |
次生子御名 火遠理命。 |
次に生れませる子の御名は 火遠理ほをりの命、 |
次にお生まれになつた御子は ホヲリの命、 |
亦名 天津日高日子 穗穗手見命。 |
またの名は 天あまつ日高日子ひこひこ 穗穗出見ほほでみの命 |
またの名は アマツヒコヒコ ホホデミの命でございます。 |
〈三柱〉 | 三柱。 |
ホオリの別名に「天津日高日子穗穗手見命(アマツヒコヒコホホデミの命)」とあるが、これは彼がニニギの系譜ということを表わしている。
ニニギの名は「天津日高日子番能邇邇藝命(アマツヒコヒコホノニニギの命)」。つまりこの時点で、彼が次の系譜ということが推測できる。
両者に共通する「天津日高日子」とは、ニニギの前任者、「天菩比神」「天若日子」の両者を合わせた言葉。
いずれも天命を受けながら、地上に降って(天降=受肉し)、地上の権力(大国主)に媚びつき堕落した存在。天若日子は報告を求める天の使を射殺。
ニニギのサクヤ(と石長)に対する態度の描写からして、またもや天命をすぐ忘れた。
ホオリはその渦中に生まれたから、海の底までいっている(海・地底はスサノオの領分)。
天孫降臨と特別扱いされているが、特別なのは付随した神器の説明だけ。「天降」は普通の受肉。
猿田彦や猿女にまつわる描写はその象徴。古事記の原文に、天孫や降臨という言葉はない。
孫というのが大国主に媚びついた天菩比神の三代目という意味なら、良い意味でもない。