原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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於是送 猿田毘古神而。 |
ここに 猿田毘古の神を送りて、 |
ウズメの命は サルタ彦の神を送つてから |
還到。 | 還り到りて、 | 還つて來て、 |
乃悉追聚 鰭廣物 鰭狹物以。 問言 |
すなはち悉に 鰭はたの廣物 鰭の狹さ物を 追ひ聚めて問ひて曰はく、 |
悉く 大小樣々の 魚どもを集めて、 |
汝者 天神御子 仕奉耶 之時。 |
「汝いましは 天つ神の御子に 仕へまつらむや」 と問ふ時に、 |
「お前たちは 天の神の御子に お仕え申し上げるか、どうですか」 と問う時に、 |
諸魚。 皆仕奉 白之中。 |
諸の魚どもみな 「仕へまつらむ」 とまをす中に、 |
魚どもは皆 「お仕え申しましよう」 と申しました中に、 |
海鼠 不白。 |
海鼠こ 白さず。 |
海鼠なまこだけが 申しませんでした。 |
爾天宇受賣命。 | ここに天の宇受賣の命、 | そこでウズメの命が |
謂海鼠。 | 海鼠こに謂ひて、 | 海鼠に言うには、 |
云此口乎。 不答之口而。 |
「この口や 答へせぬ口」といひて、 |
「この口は 返事をしない口か」と言つて |
以紐小刀。 | 紐小刀ひもがたな以ちて | 小刀かたなで |
拆其口。 | その口を拆さきき。 | その口を裂さきました。 |
故於今 海鼠口拆也。 |
かれ今に 海鼠の口拆さけたり。 |
それで今でも 海鼠の口は裂けております。 |
是以 御世。 |
ここを以ちて、 御世みよみよ、 |
かようの次第で、 御世みよごとに |
嶋之 速贄 獻之時。 |
島の 速贄はやにへ 獻る時に、 |
志摩しまの國から 魚類の貢物みつぎものを 獻たてまつる時に |
給 猿女君等也。 |
猿女の君等に 給ふなり。 |
猿女の君等に 下くだされるのです。 |
冒頭、サルタを送り、還って来た 天宇受賣命(アメノウズメのミコト) とは、天から受けた天命を全うし、天に戻った女性という意味。
サルタを送ったとは、前段の文脈から子を生んだことを意味している。子を生むと掛け、この段のナマコ(生子)のご褒美。
前段で猿田神が精子を象徴している解釈を裏づける。
ここでサカナとナマコを出しているが、ナマコは魚ではない。つまりこれは肴に当てている。
「海鼠の口拆さけ」とはつまり、頑張って仕事をしたから、口に酒して、ナマコでも口なして下さいという意味。
これは子を生まないと仕事してないという意味ではない。子を生んだだけで仕事という意味。
それ以上に、前向きに生ききった(天に還る=天道を忘れない)だけで、報われる大変な仕事という意味。
ウズメは明らかにウマズメと掛かっている。それを天命を受けていると掛けている。そこまで安易ではないし、天道は物以上の真っ当な視点のこと。
これまでの男達(天菩比神、天若日子)はしばしば天に帰ってこなかった。地上の権力者に媚び付いて。つまり即物化した。
だからそういう行為は、天から見て仕事ではない(堕落)。しかしそれで仕事しているという。
神は公平。自然法則の精神が男尊女卑などおかしな話。おかしなのは神を私的に利用する野蛮な人達。
男女が一つになって至高の神。これが一つの三位一体。