原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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爾火遠理命。 | ここに火遠理ほをりの命、 | ところでホヲリの命が |
謂其兄 火照命。 |
その兄いろせ 火照ほでりの命に、 |
兄君 ホデリの命に、 |
各相易 佐知欲用。 |
「おのもおのも 幸易かへて用ゐむ」 と謂いひて、 |
「お互に道具えものを 取り易かえて使つて見よう」 と言つて、 |
三度雖乞。 | 三度乞はししかども、 | 三度乞われたけれども |
不許。 | 許さざりき。 | 承知しませんでした。 |
然遂 纔得相易。 |
然れども遂に わづかにえ易へたまひき。 |
しかし最後にようやく 取り易えることを承諾しました。 |
爾火遠理命。 | ここに火遠理ほをりの命、 | そこでホヲリの命が |
以海佐知 釣魚。 |
海幸をもちて 魚な釣らすに、 |
釣道具を持つて 魚をお釣りになるのに、 |
都不得魚。 | ふつに一つの魚だに得ず、 | 遂に一つも得られません。 |
亦其鉤 失海。 |
またその鉤つりばりをも 海に失ひたまひき。 |
その鉤はりまでも 海に失つてしまいました。 |