原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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於是 天照大御神。 |
ここに 天照らす大御神、 |
ここに 天照らす大神は |
告 速須佐之男命。 |
速須佐はやすさの男の命に 告のりたまはく、 |
スサノヲの命に 仰せになつて、 |
是後所生 五柱男子者。 |
「この後に生あれませる 五柱の男子ひこみこは、 |
「この後あとから生まれた 五人の男神は |
物實。 因我物所成。 |
物實ものざね 我が物に因りて成りませり。 |
わたしの身につけた珠によつて あらわれた神ですから |
故自吾子也。 | かれおのづから吾が子なり。 | 自然わたしの子です。 |
先所生之 三柱女子者。 |
先に生れませる 三柱の女子ひめみこは、 |
先に生まれた 三人の姫御子ひめみこは |
物實 因汝物所成。 |
物實 汝いましの物に因りて成りませり。 |
あなたの身につけたものによつて あらわれたのですから、 |
故乃汝子也。 | かれすなはち汝の子なり」と、 | やはりあなたの子です」 |
如此詔別也。 | かく詔のり別けたまひき。 | と仰せられました。 |
故其先所生之神。 | かれその先に生れませる神、 | その先にお生まれになつた神のうち |
多紀理毘賣命者。 |
多紀理毘賣 たきりびめの命は、 |
タギリヒメの命は、 |
坐胸形之 奧津宮。 |
胸形むなかたの 奧津おきつ宮にます。 |
九州の胸形むなかたの 沖つ宮においでになります。 |
次 市寸嶋比賣命者。 |
次に 市寸島比賣 いちきしまひめの命は |
次に イチキシマヒメの命は |
坐胸形之 中津宮。 |
胸形の 中津なかつ宮にます。 |
胸形の 中つ宮においでになります。 |
次田寸津比賣命者。 |
次に 田寸津比賣 たぎつひめの命は、 |
次に タギツヒメの命は |
坐胸形之 邊津宮。 |
胸形の 邊津へつ宮にます。 |
胸形の 邊へつ宮においでになります。 |
此三柱神者 胸形君等之 以伊都久 三前大神者也。 |
この三柱の神は、 胸形の君等が もち齋いつく 三前みまへの大神なり。 |
この三人の神は、 胸形の君たちが 大切にお祭りする 神樣であります。 |
故此後所生 五柱子之中。 |
かれこの後に生あれませる 五柱の子の中に、 |
そこでこの後でお生まれになつた 五人の子の中に、 |
天菩比命之子 建比良鳥命。 |
天の菩比ほひの命の子 建比良鳥 たけひらとりの命、 |
アメノホヒの命の子の タケヒラドリの命、 |
〈此出雲國造。 | こは出雲の國の造みやつこ、 |
これは 出雲の國の造みやつこ・ |
无邪志國造。 | 无耶志むざしの國の造、 | ムザシの國の造・ |
上菟上國造。 | 上かみつ菟上うなかみの國の造、 | カミツウナカミの國の造・ |
下菟上國造。 | 下しもつ菟上うなかみの國の造、 | シモツウナカミの國の造・ |
伊自牟國造。 | 伊自牟いじむの國の造、 | イジムの國の造・ |
津嶋縣直。 |
津島つしまの 縣あがたの直あたへ、 |
津島の 縣あがたの直あたえ・ |
遠江國造 等之祖也〉 |
遠江とほつあふみの國の造 等が祖おやなり。 |
遠江とおとおみの國の造 たちの祖先です。 |
次天津日子根命者。 | 次に天津日子根あまつひこねの命は、 | 次にアマツヒコネの命は、 |
〈凡川内國造。 | 凡川内おふしかふちの國の造、 | 凡川内おおしこうちの國の造・ |
額田部湯坐連。 | 額田部ぬかたべの湯坐ゆゑの連むらじ、 | 額田ぬかた部の湯坐ゆえの連・ |
茨木國造。 | 木きの國の造、 | 木の國の造・ |
倭田中直。 | 倭やまとの田中の直あたへ、 | 倭やまとの田中の直あたえ・ |
山代國造。 | 山代やましろの國の造、 | 山代やましろの國の造・ |
馬來田國造。 | 馬來田うまくたの國の造、 | ウマクタの國の造・ |
道尻岐閇國造。 | 道みちの尻岐閇しりきべの國の造、 | 道ノシリキベの國の造・ |
周芳國造。 | 周芳すはの國の造、 | スハの國の造・ |
倭淹知造。 | 倭やまとの淹知あむちの造みやつこ、 | 倭のアムチの造・ |
高市縣主。 | 高市たけちの縣主あがたぬし、 | 高市たけちの縣主・ |
蒲生稻寸。 | 蒲生かまふの稻寸いなぎ、 | 蒲生かもうの稻寸いなき・ |
三枝部造 等之祖也〉 |
三枝部さきくさべの造 等が祖なり。 |
三枝部さきくさべの造 たちの祖先です。 |