原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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爾 天照大御神 詔 |
ここに 天照らす大御神 詔りたまはく、 |
そこで 天照らす大神は、 |
然者 汝心之 清明。 |
「然らば 汝みましの心の 清明あかきは |
「それなら あなたの心の 正しいことは |
何以知。 |
いかにして知らむ」 とのりたまひしかば、 |
どうしたらわかるでしよう」 と仰せになつたので、 |
於是 速須佐之男命。 |
ここに 速須佐の男の命 答へたまはく、 |
スサノヲの命は、 |
答白 各 宇氣比而。 生子。 |
「おのもおのも 誓うけひて 子生まむ」 とまをしたまひき。 |
「誓約ちかいを立てて 子を生みましよう」 と申されました。 |
〈自宇以下 三字以音 下效此〉 |
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故爾 | かれここに | よつて |
各中置 天安河而。 |
おのもおのも 天の安の河を 中に置きて |
天のヤスの河を 中に置いて |
宇氣布時。 | 誓うけふ時に、 | 誓約ちかいを立てる時に、 |
天照大御神。 | 天照らす大御神 | 天照らす大神は |
先 乞度 建速須佐之男命所 佩十拳劔。 |
まづ建速須佐の男の命の 佩はかせる 十拳とつかの劒つるぎを 乞ひ度わたして、 |
まずスサノヲの命の 佩はいている 長い劒を お取りになつて |
打折 三段而。 |
三段みきだに 打ち折りて、 |
三段に 打うち折つて、 |
奴那登母 母由良邇。 |
ぬなとももゆらに、 | 音もさらさらと |
〈此八字以音 下效此〉 |
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振滌 天之眞名井而。 |
天あめの眞名井まなゐに 振り滌ぎて、 |
天の眞名井まないの 水で滌そそいで |
佐賀美邇 迦美而。 |
さ齧がみに 齧かみて、 |
囓かみに 囓かんで |
〈自佐下六字 以音下效此〉 |
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於吹棄氣吹之 | 吹き棄つる氣吹いぶきの | 吹き棄てる息の |
狹霧所 成神御名。 |
狹霧さぎりに 成りませる神の御名は、 |
霧の中から あらわれた神の名は |
多紀理毘賣命。 〈此神名以音〉 |
多紀理毘賣 たぎりびめの命、 |
タギリヒメの命 |
亦御名謂 奧津嶋比賣命。 |
またの御名は 奧津島比賣 おきつしまひめの命といふ。 |
またの名は オキツシマ姫の命でした。 |
次 市寸嶋〈上〉比賣命。 |
次に 市寸島比賣 いちきしまひめの命、 |
次に イチキシマヒメの命 |
亦御名謂 狹依毘賣命。 |
またの御名は 狹依毘賣 さよりびめの命といふ。 |
またの名は サヨリビメの命、 |
次 多岐都比賣命。 〈三柱。 此神名以音〉 |
次に 多岐都比賣 たぎつひめの命 三柱。 |
次に タギツヒメの命の お三方でした。 |