原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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御祖命 | 御祖の命、 | そこで母の神が |
告子云可參向 | 子に告りていはく、 | 「これは、 |
須佐能男命 所坐之 根堅州國。 |
「須佐の男の命の まします 根ねの堅州かたす國にまゐ向きてば、 |
スサノヲの命の おいでになる 黄泉の國に行つたなら、 |
必其大神 議也。 |
かならずその大神 議はかりたまひなむ」 とのりたまひき。 |
きつと よい謀はかりごとをして下さるでしよう」 と仰せられました。 |
故隨詔命而。 | かれ詔命みことのまにまにして | そこでお言葉のままに、 |
參到 須佐之男命之 御所者。 |
須佐の男の命の 御所みもとに 參ゐ到りしかば、 |
スサノヲの命の 御所おんもとに 參りましたから、 |
其女 須勢理毘賣出見。 |
その女須勢理毘賣 すせりびめ出で見て、 |
その御女おんむすめの スセリ姫ひめが出て見て |
爲目合而。相婚。 | 目合まぐはひして婚あひまして、 | おあいになつて、 |
還入。 白其父言 |
還り入りて その父に白して言さく、 |
それから還つて 父君に申しますには、 |
甚麗神來。 |
「いと麗しき神來ましつ」 とまをしき。 |
「大變りつぱな神樣がおいでになりました」 と申されました。 |
「御祖命」は、古事記では造化三神の「神產巢日(カミムスビ)」にのみかかる。
したがって、母の神といっても大国主の母ではなく、神々の母という意味。
一般にそう扱われる存在は普通は天照。つまり天照はカミムスビの一つの顕現(分神)。だから別格の扱いを受けている。
そして神產巢日と天照は、大国主に続く天若日子の段で何度も並べて記されている(別々の存在という訳ではなくパラレルの存在ということ)。
よって冒頭の表現は、天照がスサノオの行く末、その末裔である大国主を案じていることの表れ。
両者の関係性が切れていないことは、スサノオ神逐後、地上で天照の弟を名乗り、草薙の剣を天照に献上していることにも示される。
大国主は、行く先々で神々による受難を被ったが、その原因を作ったスサノオに、何か(アドバイスを)聞くようにと言っている。
大国主がなぜか国をまかせられるのは、スサノオの子孫というだけではなく、イザナギからの統治の命を受け継いでいるからそうなる。
つまり大国主はスサノオの分身(転生)。その本来の自分に自己内部の問題解決の相談をせよといっており、つまり内省を求めている。
根の国というのは、前段の木の国を受けているが、木の国とは木の俣から出て(無名になって堕ちて生まれ)逃げたことを受けている。
その見えている現象を生み出している、見えない根本原因、それを象徴させたが根の国。国の不幸の原因。それは外にはなく足元にある。
地中なので地獄。よってそういう描写になる。