原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
---|---|---|
於是大國主神 愁而。告 |
ここに大國主の神 愁へて告りたまはく、 |
そこで大國主の命が 心憂く思つて仰せられたことは、 |
吾獨 何能 得作此國。 |
「吾獨して、 如何いかにかもよく この國をえ作らむ。 |
「わたしはひとりでは どのようにして この國を作り得ましよう。 |
孰神與 吾能相作此國耶。 |
いづれの神とともに、 吾あはよくこの國を相作つくらむ」 とのりたまひき。 |
どの神樣と一緒に わたしはこの國を作りましようか」 と仰せられました。 |
是時。 | この時に | この時に |
有光海。 | 海を光てらして | 海上を照らして |
依來之神。 | 依り來る神あり。 | 寄つて來る神樣があります。 |
其神言。 | その神の言のりたまはく、 | その神の仰せられることには、 |
能治我前者。 | 「我あが前みまへをよく治めば、 | 「わたしに對してよくお祭をしたら、 |
吾能共與 相作成。 |
吾あれよくともどもに 相作り成さむ。 |
わたしが一緒になつて 國を作りましよう。 |
若不然者。 | もし然あらずは、 | そうしなければ |
國難成。 |
國成り難がたけむ」 とのりたまひき。 |
國はできにくいでしよう」 と仰せられました。 |
爾大國主神 曰。 |
ここに大國主の神 まをしたまはく、 |
そこで大國主の命が 申されたことには、 |
然者 治奉之状奈何。 |
「然らば 治めまつらむ状さまはいかに」 とまをしたまひしかば |
「それなら どのようにしてお祭を致しましよう」 と申されましたら、 |
答言。 | 答へてのりたまはく、 | |
吾者。 | 「吾あをば | 「わたしを |
伊都岐奉于 倭之青垣 東山上。 |
倭やまとの青垣あをかきの 東の山の上へに 齋いつきまつれ」とのりたまひき。 |
大和の國の青々と取り圍んでいる 東の山の上に お祭りなさい」と仰せられました。 |
此者 坐御諸山 上神也。 |
こは 御諸みもろの山の 上にます神なり。 |
これは 御諸みもろの山に おいでになる神樣です。 |