むかし、
そこにいるとは聞くが、そこにいるかと自ら行くことも言うこともできない、女の方(伊勢斎宮)を思って。
目には見て 手にはとられぬ 月のうちの 桂の如き 君にぞありける
桂とは、月の内にある理想の木。その木にかけて好きなる気持ちを歌います。
伊勢のむかし男による
「いくら愛でても手の届かない君」
ん~月並み? これは送らんでよし。
男女 及び 和歌 |
定家本 |
武田本 (定家系) |
朱雀院塗籠本 (群書類従本) |
---|---|---|---|
第73段 月のうちの桂 | |||
むかし、そこにはありと聞けど、 | 昔、そこにはありときけど、 | むかし。そこにありときゝけれど。 | |
せうそこをだにいふべくもあらぬ | せうそこをだにいふべくもあらぬ | せうそこをだにいふべくもあらぬ | |
? | 女のあたりを思ひける。 | 女のあたりを思ひける。 | 女のあたりをありきて。男のおもひける。 |
♪ 133 |
目には見て 手にはとられぬ月のうちの |
めには見て 手にはとられぬ月のうちの |
ありとみて 手にはとられぬ月のうちの |
桂の如き 君にぞありける |
かつらごとき きみにぞありける |
桂男の(のことく一本) 君にも有かな |
|
むかし、そこにはありと聞けど、
せうそこをだにいふべくもあらぬ女のあたりを思ひける。
目には見て 手にはとられぬ 月のうちの
桂の如き 君にぞありける
むかし
むかし
そこにはありと聞けど
そこにいるとは聞くが
せうそこをだにいふべくもあらぬ
そこにいるかと言うことも、そこに行くこともできない
せうそこ 【消息】:
①手紙。便り。
②訪問。取次ぎの依頼。
全て含めた用法。先の「そこ」とかけている。
女のあたりを思ひける
女の方を思って。
「あたり」は、方向とかけて、ある女の方(人)。ぼかしている。「月のおぼろなる」(69段)
つまり69段からの流れで伊勢斎宮。仕事でないと会えない、便りも出せない間柄。(業平は関係ない)
目には見て 手にはとられぬ
目で見ても、手にはとれない
月のうちの
月の内にかけて、好きな気持ちを歌います(破格)
桂の如き 君にぞありける
桂のごとき 手が届かない君。
かつら 【桂】
:中国の伝説で、月の中にあるという高い理想を表す木。
その心は、いくら目で愛でても手にとれない(抱けない)。
~
だから業平が斎宮に手をかけたとか、子を仕込んだとかいう極まった話はただの妄想。伊勢に乗じた汚れた売名行為。
主人公は、斎宮と寝ていない。肝心の伊勢にそう書いてある。根拠すらどうでもいいただの自称、それを妄想という。