昔男が、和泉住吉に行く。住吉の郡・里・浜とかけ、クリ浜として浜の貝を導く。
ある人がその浜にかけ歌を詠めというので、
雁鳴きて 菊の花さく秋はあれど 春の海辺に 住吉の浜
雁と貝をかけ、鳴きとあれどを対照し、春の海辺に無きと解く。
その心は、花がないのに歌っても甲斐なくない?
と詠めば、他の人は何も詠まなかった。
(それで、あ~不甲斐ないと)
こういう時ボケて明るくするのが、あの有名な「ナニワズ」の心でないの?
あ、チミたちナニワ出身じゃなかった?
ナニ?「違う、そうじゃない」?
ナニワズじゃなくて坊ズです、なんつって。
だめだこりゃ。流れ悪いわ。潮時だわ。
男女 及び 和歌 |
定家本 |
武田本 (定家系) |
朱雀院塗籠本 (群書類従本) |
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第68段 住吉の浜 | |||
♂ | むかし、男、 | むかし、おとこ、 | 昔男。 |
和泉の国へいきにけり。 | いづみのくにへいきけり。 | いづみの國にいきけり。 | |
住吉の郡、 | すみよしのこほり、 | つの國住よしのこほり | |
住吉の里、 | すみよしのさと、 | すみよしの里 | |
住吉の浜を行くに、 | すみよしのはまをゆくに、 | のはまゆくに。 | |
いとおもしろければ、降りゐつゝ行く。 | いとおもしろければ、おりゐつゝゆく。 | いとおもしろければおりゐつゝ。 | |
ある人が住吉の浜と詠めと言ふ。 | ある人、すみよしのはまとよめといふ。 | ある人すみよしのはまとよめといふに。 | |
♪ 125 |
雁鳴きて 菊の花さく秋はあれど |
鴈なきて 菊の花さく秋はあれど |
鴈なきて 菊の花さく秋はあれと |
春のうみべに 住吉の浜 |
はるのうみべに すみよしのはま |
春は海へに 住吉の濱 |
|
と詠めりければ、 | とよめりければ、 | とよめりければ。 | |
みな人は詠まずなりけり。 | みな人々よまずなりにけり。 | みな人よまずなりにけり。 | |
むかし、男、和泉の国へいきにけり。
住吉の郡、住吉の里、住吉の浜を行くに、いとおもしろければ、降りゐつゝ行く。
むかし男
和泉の国へいきにけり
和泉:大阪南部。堺を境に左下。
ここでは、前段とつなげて二月の頃。
住吉の郡
住吉の里
住吉の浜を行くに
郡は里の上のくくりだが、ここではクリ浜として貝にかける。
もちろん、クリは貝の暗示。潮で濡れるところね。
いとおもしろければ
お~おもしろいね(ウマいね)となって。
降(お)りゐつゝ行く
折々降りながら行く。
(原文の比較から原語は「おりいて」。時々馬から下りて歩く。うまいねというから馬去ね、いや色々無理あるって。なんで時々。
山の方から下ってきたという意味もある)
ある人が住吉の浜と詠めと言ふ。
雁鳴きて 菊の花さく 秋はあれど
春のうみべに 住吉の浜
と詠めりければ、みな人は詠まずなりけり。
ある人が住吉の浜と詠めと言ふ
ある人が住吉の浜にかけて歌を詠めという。
お~無茶ぶり。気安く言ってくれるねと。
雁鳴きて 菊の花さく秋はあれど
雁鳴きと 菊花の秋はあるが、
春のうみべに 住吉の浜
春の海辺にナキとかけ、住吉の浜ととく。
その心は、同じ彼岸でも貝(甲斐)ねえなあ~。男ばっかで歌っても花ないじゃん。よしなはれ。
(前段。今は春の雪の時。いちお、春秋と浜と菊花で彼岸花にかけてるの。当然ですけど。
加えて菊花で、前段の「この世」と「みつ」の舟を三途とかけた解釈を裏づける。世の憂い? うーん、そこまで何となくで詠んでないからね)
と詠めりければ
と読めば
みな人は詠まずなりけり
シーンとなって、他の人はだーれも詠まなかった。これが不甲斐ないってか。
せめて「お~!」と言って欲しい。あーあ。なんで読めてないのにしったかするかな。実力あるならともかく。謙虚でなきゃ進歩はないでしょ。
新しい知見を取り入れ精度を上げていくことが進歩。前提がおかしいよくわからん他人の解釈に、延々しがみついてもしょうがない。
古典の歌の理解のハードルが、ばかでもわかるほど安易なわけない。古典とは超一流という意味。だから残っているんでしょうが。
短いから入門に良い? まるっきり逆。まるで業平のように浅はか。