伊勢物語 67段:花の林 あらすじ・原文・現代語訳

第66段
みつの浦
伊勢物語
第三部
第67段
花の林
第68段
住吉の浜

 
 目次
 

 ・あらすじ(大意)
 

 ・原文対照
 

 ・現代語訳(逐語解説)
 
  和泉の国 
 
  河内の国 
 
  雲のたちまひ 
 
 
 
 

あらすじ

 
 
 昔男が、友達と和泉に二月に行き、河内の生駒山を見れば、雲たちこめ、雪も積もっている。
 

 昨日けふ 雲のたちまひ かくろふは 花のはやしを 憂しとなりけり
 
 和泉を前段の難波津とかけ、生駒の林と生やしをかけ、咲くやこの花冬籠り、今は春べと咲くや木の花と解く、その心は、
 
 昨日今日まで冬籠り、明日は晴れでハレルやね。今は牛でも、モーすぐ花も咲いて、ハレ晴れ愉快やね。どうウマい? いや、最後はうしにせんと。
 
 
 
 

原文対照

男女
及び
和歌
定家本 武田本
(定家系)
朱雀院塗籠本
(群書類従本)
  第67段 花の林 欠落
   
 むかし、男、  昔、男、  
  逍遥しに、思ひど親いつらねて、 せうえうしに、おもふどちかいつらねて、  
  和泉の国へ如月ばかりにいきにけり。 いづみのくにへきさらぎ許にいきけり。  
  河内の国生駒山を見れば、 かうちのくに、いこまの山を見れば、  
  曇りみ晴れみ、たちゐる雲やまず。 くもりみ、はれみ、たちゐるくもやまず、  
  あしたより曇りて、ひる晴れたり。 あしたよりくもりて、ひるはれたり。  
       
  雪いと白う木の末に降りたり。 雪いとしろう木のすゑにふりたり。  
  それを見て、 それを見て、  
  かのゆく人のなかにたゞ一人よみける。 かのゆく人のなかに、たゞひとりよみける。  
       

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 昨日けふ
 雲のたちまひかくろふは
 昨日けふ
 雲のたちまひかくろふは
 
  花のはやしを
  憂しとなりけり
  花の林を
  うしとなりけり
 
   

現代語訳

 
 

和泉の国

 

むかし、男、
逍遥しに、思ひど親いつらねて、和泉の国へ如月ばかりにいきにけり。

 
 
むかし男
 むかし男が、
 

逍遥しに思ひど(おもふど)
 どっかに行こうかと思って、
 

 せうえう 【逍遥】
 :気の向くまま歩き回ること。行楽。
 

親(ちか)いつらねて
 近しい者達で
 

 ちかし:親しい。身近。
 
 親にチカを当てるのは一般ではないので、親友という意味。
 

和泉の国へ如月ばかりにいきにけり
 いずみの国に二月の頃行った。
 

 如月:二月。こういう指定は漫然としていない。
 

 和泉の国
 :大阪南部。堺を境にして下の泉がつく地域。
 
 ここでは、続く生駒山が見えるということ、次段で住吉と明示されるので、その辺り。堺あたり。つまり境をまたいでうつろぐという趣旨の段。
 
 

河内の国

 

河内の国生駒山を見れば、曇りみ晴れみ、たちゐる雲やまず。
あしたより曇りて、ひる晴れたり。

 
 
河内の国生駒山を見れば
 そこで河内の生駒山を見れば、
 

 河内の国:和泉の右側。大阪における奈良と接する地域。
 

 生駒山:奈良の山。ここでは(花が)生えるとかける(花のはやし)。
 

曇りみ晴れみ、たちゐる雲やまず
 曇りか晴れか(とみても) 雲たちこめたまま、
 

あしたより曇りてひる晴れたり
 明日から雲って昼からは晴れや、
 その心は、
 今は夜でよーみえんけど、きっと晴れるんや! あ~春でハレルヤ~ などとしょーもないことを話しながら(上述の趣旨で)
 
 

雲のたちまひ

 

雪いと白う木の末に降りたり。
それを見て、かのゆく人のなかにたゞ一人よみける。
 
昨日けふ 雲のたちまひ かくろふは
 花のはやしを 憂しとなりけり

 
 
雪いと白う木の末に降りたり
 雪がとても白く木の根に降りかかっていた
 

それを見て
 

かのゆく人のなかにたゞ一人よみける
 このゆく人のなかでただ一人よんだ。
 
 このような歌を読むのは基本、著者。ただ一人も著者の性質。唯一無二の。
 

昨日けふ 雲のたちまひ かくろふは
 昨日今日で 雲でたちまち 隠れるは
 

 たちまふ 【立ち舞ふ】
 :立って舞う。立って漂う。
 

 かくろふ【隠ろふ】
 :隠れる。物陰にひそむ。人目を避ける。
 

花のはやしを 憂しとなりけり
 花の林を 憂いとするか(???)
 
 つまり、解釈しなければならない。頭使わなきゃ。そのままで味わうとかいうのは、歌をよう知らん人。しったかはだめよ。理解が全然進まない。
 せっかく物語にしている意味がどこにあると思っているの。
 
 前段からの難波津から、「さくやこの花」と生駒で「花の生やし」とかけ、冬ごもりで憂しと解く、
 その心は、昨日今日で、今は春べと咲くや木の花。
 春になれば晴れて咲くねん。曇っているうちは暦が春でも冬やねん。