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第17段 年にまれなる人 |
伊勢物語 第一部 第18段 白菊 |
第19段 天雲のよそ |
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男と女が、白い菊花にかけてやりとりする。しかし内容は非常に難解。何が言いたいのかわからない。
つまり『すいません、ちょっとなに言ってるかわかんない』と白々しく言うのが、おおまかな心。
前段で全然ウチにきてくれないという桜花の女から引き続き、しぼんだ菊の花を送ってくる女。まず同一人物。
そして次の段でおわかれすると。だから歌の構図がほぼ全く同じ。
男女 及び 和歌 |
定家本 |
武田本 (定家系) |
朱雀院塗籠本 (群書類従本) |
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第18段 白菊 | |||
? | むかし、なま心あるありけり。 | むかし、まな心ある女ありけり。 | むかし。なま心ある女ありけり。 |
男ちかうありけり。 | おとこちかうありけり。 | 男とかういひけり。 | |
女、歌よむ人なりければ、心みむとて、 | 女、うたよむ人なりければ、心見むとて、 | 女歌よむ人なりければ。こゝろみんとて | |
菊の花のうつろへる折りて、 男のもとへやる。 |
きくの花のうつろへるをゝりて、 おとこのもとへやる。 |
むめを折て やる。 |
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♪ 30 |
紅に にほふはいづら 白雪の |
くれなゐに ゝほふはいづら しらゆきの |
紅に ゝほふはいつら 白雪の |
枝もとをゝに 降るかとも見ゆ |
えだもとをゝに ふるかとも見ゆ |
枝もたはゝに ふるやとも見ゆ |
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男、知らずよみにける。 | おとこ、しらずによみによみける。 | おとこしらず。よみによみけり。 | |
♪ 31 |
紅に にほふがうへの 白菊は |
くれなゐに ゝほふがうへの しらぎくは |
紅に ゝほふかうへの しら雪は |
折りける人の 袖かとも見ゆ |
折ける人の そでかとも見ゆ |
折ける人の 袖かとそ見る |
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むかし、なま心あるありけり。男ちかうありけり。
女、歌よむ人なりければ、心みむとて、菊の花のうつろへる折りて、男のもとへやる。
むかし、なま(▲まな)心ある(▲女)ありけり。
むかし、なま心(?)あるものがいた。
(なま心(生心):中途半端な分別心や風流心。「なま」は接頭語とのこと。しかしこれは著者の造語だろう。説明の出典がこの段だから根拠にはできない。
この定義すら、中途半端に風流をきかせた分別かもしれないだろう。記述がぶれる所は注意して留保する。ぶれるということは、解釈の余地が広いから。
また、なま心のある者についても、明示されていない。
これは男女どちらにもかかっていると見るべき。だから明示していない。
続く「男ちかう」は、「なま心ある男ありけり」ではないという含みもある。)
男ちかうありけり(△とかういひけり)。
男ちかう(?)あった。
(男はその女に色々近かった。→次の段)
女、歌よむ人なりければ、心みむとて、
女は歌を詠む人であったので、心を見る=試みようとして
(試みる主体は、流れで女と解してよい。つまり女が男を試そうと。
しかし歌の実力のことや、風流なことをではない)
菊の花のうつろへる(△むめを)折りて、
菊の花がしぼんだのを折って
(うつろふ 【移ろふ】:変わりゆくこと→色あせる)
男のもとへやる。
男の元に送った。
(ここでやったのは、菊の花でしかないことに注意。歌を詠むこととは、微妙だが区別している。
したがって、以下の歌は女が詠んだ見るのが素直だが、正確には、送られた菊の意味を、男なりに解釈した内容と見るべき『枝をもとをゝに』)
紅に にほふはいづら 白雪の
枝もとをゝに 降るかとも見ゆ
紅に
(?)
にほふはいづら 白雪の
匂いはいかがか
(いづら 【何ら】:どうか・さあさあ・どれどれ)
枝もとをゝに(△枝もたはゝに)
(難解)
枝も折られて、首しか残っていない? コワ。
降るかとも見ゆ
(雪とふるにかけて、女が男を振ったのかなあと。この花はそういうフリかと。花と雪が降るは前段と同じ構図)
男、知らずよみにける。
紅に にほふがうへの 白菊は
折りける人の 袖かとも見ゆ
男、知らずよみにける。
男は、(女の心を)知らずに詠んだ。
(何を知らずかも定かではない。
お決まりの「返し」という言葉がないので、この文が上下どちらにかかるかも実は不明。ということは、どちらにもかかっていると見るべき。
そして、女の心男知らずで返しの歌を詠んだ。しかし返したかは不明。素朴に見ると返してはいない。詠んだだけ。(物は捨てた)→次の段)
紅に
(?)
にほふがうへの 白菊(△雪)は
におうのは、上の白菊だ。
(つまり、送られてきた菊がにおう。花が匂わないで逆に臭う。鼻につく。
「にほふ」(鼻につく)は、変な感じ・背後の企みのこと。
塗籠本は雪にしてしまうがそうではない。雪はにおわない。)
折りける人の
それを折った人の
袖かとも見ゆ
袖のことと見る。
袖にかかるのは上の「降る」であるから、袖振る・無心と見た。
だから(紅=くれない?)。花を折る心無いで無心か、おねだりか何かか? と。
しかしこれでは全然釈然としない。オチも落ち着かない。紅白というあからさまな仕掛けも拾い切れていない。菊花と桜花も。
先段の桜花と、本段の菊の花しぼめるにかけて、落ちないから拾えない、収拾つかない。それが「なま心」なのか。
その心は、そのなまでは、煮ても焼いても食えない(菊も雪も)。転じて、煎じて飲む? つまのアカを? まずい。だめぜったい。
なお、白菊の花言葉は真実。え? 白々しい。まっかなうそ。あ!だから紅? それが前段のサクラ(演技)、明日は雪が降るにかかっていると。
つまり前段から引き続く男女のコント。桜と菊にかけたボケ話。これにて回収完了。いやしかしつきあいきれんと思い、次段の別れ話になる。
昨日今日で「来てくれない!」はともかく、しぼんだ菊花を送ってくるのは軽くホラー。