原文 |
書き下し 漢文叢書 |
現代語訳 下村湖人+【独自】 要検討 |
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子 擊磬 於衞 |
子し 磬けいを 衞ゑいに 擊うつ。 |
先師が 衛に滞在中、 ある日磬けいを うって楽しんでいられた。 |
○磬=石の楽器、矩形の石をつるしたもの。 【『のど自慢』での鐘が石になったもの。 画像後掲】 |
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有 荷蕢者而 過 孔氏之門 者 |
蕢きを荷になひて 孔氏こうしの門もんを 過すぐる 者もの 有あり、 |
その時、もつこをかついで 門前を 通りがかった 男が、 |
曰 | 曰いはく、 | いった。 |
【※孔子の門は卑しめられる定石。前章参照】 | ||
有心哉 擊磬乎 |
心こゝろ有あるかな 磬けいを擊うつや。 |
おや、ケイを打つ 心得があるようだ】 |
×「ふふうむ。ちょっと意味ありげな 磬のうちかただな。」 |
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既而 曰 |
既すでにして 曰く、 |
【しばらくして、 またいった。 |
鄙哉 | 鄙ひなる哉かな |
品がないな、 (鄙:田舎・辺境・卑しい) |
硜硜乎 |
硜硜乎 こうこうこたり、 |
頑なで不自然な音だ。 (硜:硬い石を叩く音の形容。 硜硜:融通の利かなさ) |
×「だが、品がない。 執念深い音だ。 |
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莫 己知也 |
己おのれを知しる 莫なきなり、 |
己の立場を知る事がない、 (この発言者の冒頭描写参照) |
斯已 而已矣 |
斯これ已やまん のみ、 |
おのれのそれはやめた方がよい。 (己に、やめる・限定の已を掛ける) |
※あ~違う違う、 それは教科書と違う(笑)おじさん |
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×やっぱりまだ未練があるらしいな。 認めてもらえなけりゃあ、 ひっこむだけのことだのに。」 |
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『深 則厲 |
深ふかければ 則すなはち厲れいし、 |
低音は 激しく |
淺 則揭』 |
淺あさければ 則ち揭けいす |
高音は 上げて、だ。 |
※この句は孔子が編纂した(司馬遷の認定)という詩経の句で、つまり田舎の人が 教科書の理論を書いた人に教科書と違う我流はやめろと説教した。 いわゆる釈迦に説法が本章の趣旨。独自。 通説は下村訳のように自我の論点と解すが、補いに補いを重ねたもので、 以下の発言の趣旨も素直に捉えられない。 孔子は自身の礼楽を野人の先進と称したことも、私見の妥当性を裏付ける】 |
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× それから彼は歌をうたい出した。 「わしに添いたきゃ、渡っておじゃれ、 水が深かけりゃ腰までぬれて、 浅けりゃ、ちょいと小褄こづまをとって。 ほれなきゃ、そなたの気のままよ。」 それをきいていた門人の一人が、先師にそのことを話すと、 |
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子曰 | 子曰く、 | 先師はいわれた。 |
果哉 | 果くわなるかな、 | 【果敢だ(勇ましい)な、※独自 |
末 之難 矣 |
之これ 難かたき 末なし |
それは 難しく ないのだが。】 |
/國譯漢文大成之 これを難かたし とすること なしと |
×「思いきりのいい男だ。だが、思いきってよければ、 何もむずかしいことはない。 大事なのは、 一身を清くすることではなくて、 天下と共に清くなることなのだ。」 |