原文 |
書き下し 漢文叢書 |
現代語訳 下村湖人+【独自】 要検討 |
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逸民 | 逸民いつみんには、 | 古来、野の賢者として名高いのは、 |
伯夷、 叔齊、 虞仲、 夷逸、 朱張、 柳下惠、 少連 |
伯夷はくい・ 叔斉しゆくせい・ 虞仲ぐちう・ 夷逸いいつ・ 朱張しゆちやう・ 柳下恵りうかけい・ 少連せうれん。 |
伯夷はくい・ 叔斉しゅくせい・ 虞仲ぐちゅう・ 夷逸いいつ・ 朱張しゅちょう・ 柳下恵りゅうかけい・ 少連しょうれんなどであるが、 |
子曰 | 子曰く、 | 先師はいわれた。 |
不降其志 | 其志そのこゝろざしを降くださず、 | 「あくまでも志を曲げず、 |
不辱其身 | 其身そのみを辱はづかしめざるは、 | 身を辱かしめなかったのは、 |
伯夷 叔齊與 |
伯夷はくい・ 叔斉しゆくせいか。 |
伯夷と 叔斉であろう。」 |
謂 柳下惠、 少連 |
柳下恵りうかけい・ 少連せうれんを 謂いふ、 |
柳下恵と 少連とについては、 つぎのようにいわれた。 |
降志辱身矣 | 志こゝろざしを降くだし身みを辱はづかしむ、 | 「志をまげ、身を辱しめて仕えたこともあったが、 |
言中倫 | 言げんは倫りんに當あたり、 | いうことはあくまでも人倫の道にかなっていたし、 |
行中慮 | 行おこなひは慮おもんばかりに中あたる、 | 行動にも筋道が立っていた。 |
其斯而已矣 | 其それ斯これのみ。 | 二人はその点だけで、十分立派だ。」 |
謂 虞仲、 夷逸 |
虞仲ぐちう・ 夷逸いいつを謂いふ、 |
虞仲と 夷逸については、 つぎのようにいわれた。 |
隱居放言 | 隱居いんきよ言げんを放ほしいまゝにす、 | 「隠遁して無遠慮な放言ばかりしていたが、 |
身中淸 | 身みは淸せいに中あたり、 | しかし一身を守ることは清かったし、 |
廢中權 | 廃して權けんに中あたる。 | 世を捨てたのは時宜に適した道だったと言えるだろう。」 |
先師は、それにつけ加えて更にいわれた。 | ||
我則 異於是 |
我われは則すなはち 是これに異ことなり、 |
「私は、 しかし、こうした人たちとはちがう。 |
無可 無不可 |
可かも無なく、 不可ふかも無なし。 |
【即ち、そうした人ほど良くもないし、 逆にそれほど悪いことももなく、 無難に生きていると自分では思っている】 |
×私は、はじめから隠遁がいいとか わるいとかを決めてかかるような、 片意地な態度には出たくないのだ。」 |
○ 朱張についての孔子の評言がないのは、多分脱落したのであろう。
○ 列挙された人々のうち、伯夷・叔斉(一六一章參照)柳下恵(三九二章參照)以外の人々は、どんな人か詳らかでない。
○ 孔子の最後の言葉、原文の(無可無不可)は、「可もなし不可もなし」と読まれ、今では普通に「平凡だ」という意味に使われている。しかし、本来は、訳文のような意味【当サイトで青にした部分】に解するのが通説になつている。またそうでなければ本章の意味は通らない。