篇名 | 重要語句・キーワード | |
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巻一 | 学而第一 | 学而時習(1),巧言令色鮮矣仁(3),三省(4),和を用つて貴しと為す 礼節(12),切磋琢磨(15) |
為政第二 | 北辰(1),不惑 天命(4),温故知新(11),見義不爲無勇也(24) | |
巻二 | 八佾第三 | 吾従周,仲器小,祭神如神在(12) |
里仁第四 | 朝聞道夕死可矣(8),忠恕而已矣,訥言敏行 | |
巻三 | 公冶長第五 | 聞一知十(9),天道(13),盍各言爾志 |
雍也第六 | 孰為好学,賢哉回也,知之者不如好之者(18) | |
巻四 | 述而第七 | 不憤不啓,三人行必得師,神祇(34) |
泰伯第八 | 人之将死其言也善 | |
巻五 | 子罕第九 | 逝者如斯夫,後生可畏,松柏後彫 |
郷党第十 | 厩焚 | |
巻六 | 郷党第十一 | 孰為好学,顔淵死,天喪予(8),過猶不及=過ぎたるは及ばざるがごとし(15),未知生,聞斯行諸 |
顔淵第十二 | 民無信不立,政者正也,樊遅問仁 | |
巻七 | 子路第十三 | 葉公問政,直躬,和而不同 |
憲問第十四 | 古之学者為己,堯舜其猶病諸 | |
巻八 | 衛霊公第十五 | 如之何如,己所不欲勿施於人(23),過而不改是謂過矣(29) |
季氏第十六 | 益者三楽,君子有九思 | |
巻九 | 陽貨第十七 | 割鶏焉用牛刀,巧言令色鮮矣仁(17),三年之喪 |
微子第十八 | 長沮桀溺藕耕,子路遇丈人,無可無不可(8) | |
巻十 | 子張第十九 | 君子有三変,叔孫武叔 |
堯曰第二十 | 五美四悪 |
學而第一:がくじ |
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1-1 | |
子曰 | 子し曰く、 |
學而時習之 | 学まなびて時ときに之を習ならふ、 |
不亦說乎 | 亦また説よろこばしからずや。 |
有朋自遠方來 | 朋とも遠方えんぱうより来きたる有あり、 |
不亦樂乎 | 亦楽たのしからずや。 |
人不知而不慍 | 人ひと知しらずして慍うらみず、 |
不亦君子乎 | 亦君子くんしならずや。 |
1-2 | |
有子曰 | 有子いうし曰く、 |
其爲人也孝弟 | 其の人ひとと為なりや孝弟かうていにして、 |
而好犯上者 | 而して上かみを犯おかすを好このむ者ものは |
鮮矣 | 鮮すくなし。 |
不好犯上 | 上を犯すを好まずして、 |
而好作亂者 | 而して乱らんを作なすを好む者は、 |
未之有也 | 未いまだ之れ有あらざるなり。 |
君子務本 | 君子くんしは本もとを務つとむ、 |
本立而道生 | 本立たちて而して道みち生しやうず、 |
孝弟也者 | 孝弟かうていなる者は |
其爲仁之本歟 | 其それ仁じんの本もとたるか。 |
1-3 | |
子曰 | 子曰く、 |
巧言令色 | 巧言令色かうげんれいしよく、 |
鮮矣仁 | 鮮すくなし仁じん。 |
1-4 | |
曾子曰 | 曾子そうし曰く、 |
吾日三省吾身 | 吾われ日ひに吾が身みを三省さんせいす、 |
爲人謀 | 人の為ために謀はかりて |
而不忠乎 | 忠ちうならざるか、 |
與朋友交 | 朋友ほういうと交まじわりて |
而不信乎 | 信しんならざるか、 |
傳不習乎 | 伝でん、習ならはざるか。 |
1-5 | |
子曰 | 子曰く、 |
道千乘之國 | 千乗せんじようの国くにを道をさむるには、 |
敬事而信 | 事ことを敬つゝしみて信しん、 |
節用而愛人 | 用ようを節せつして人ひとを愛あいし、 |
使民以時 | 民たみを使つかふに時ときを以もつてす。 |
1-6 | |
子曰 | 子曰く、 |
弟子入則孝 | 弟子ていし入いりては則すなはち孝かう、 |
出則弟 | 出いでては則すなはち弟てい、 |
謹而信 | 謹つゝしんで而して信しん、 |
汎愛衆 | 汎ひろく衆しうを愛あいして |
而親仁 | 仁じんに親したしむ。 |
行有餘力 | 行おこなひて余力よりよく有あれば、 |
則以學文 | 則すなはち以もつて文ぶんを学まなべ。 |
1-7 | |
子夏曰 | 子夏しか曰く、 |
賢賢易色 | 賢けんを賢けんとして色いろに易かへ、 |
事父母 能竭其力 |
父母ふぼに事つかへて 能よく其力そのちからを竭つくし、 |
事君 能致其身 |
君きみに事つかへて 能よく其身そのみを致いたし、 |
與朋友交 | 朋友ほういうと交まじはり、 |
言而有信 | 言いひて信しん有あらば、 |
雖曰未學 | 未いまだ学まなばずと曰いふと雖いへども、 |
吾必謂之學矣 | 吾われは必かならず之これを学まなびたりと謂いはん。 |
1-8 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子不重則不威 | 君子くんし重おもからざれば則ち威ゐあらず、 |
學則不固 | 学まなべば則ち固こならず、 |
主忠信 | 忠信ちうしんを主しゆとし、 |
無友不如己者 | 己おのれに如しかざるものを友ともとする無なかれ。 |
過則勿憚改 | 過あやまたば則ち改あらたむるに憚はゞかる勿なかれ。 |
1-9 | |
曾子曰 | 曾子曰く、 |
愼終追遠 | 終をはりを慎つゝしみ遠とほきを追おへば、 |
民德歸厚矣 | 民たみの徳とく厚あつきに帰きす。 |
1-10 | |
子禽問於子貢曰 | 子禽しきん子貢しこうに問とうて曰く、 |
夫子至於是邦也 | 夫子ふうし是邦このくにに至いたるや、 |
必聞其政 | 必かならず其政そのまつりごとを聞きけり、 |
求之與 | 之これを求もとめたるか、 |
抑與之與 | 抑そもそも之れを与あたへたるか。 |
子貢曰 | 子貢曰く、 |
夫子 溫良恭儉讓 以得之 |
夫子は 温をん良りやう恭きよう倹けん讓じやう 以て之れを得えたり、 |
夫子之求之也 | 夫子の之れを求むるや、 |
其諸異乎 人之求之與 |
其それ諸これ 人の之れを求むるに異ことなるか。 |
1-11 | |
子曰 | 子曰く、 |
父在觀其志 | 父在いませば其志こゝろざしを観み、 |
父沒觀其行 | 父沒ぼつすれば其行おこなひを観みる、 |
三年無改於父之道 | 三年父の道みちを改あらたむる無なきは、 |
可謂孝矣 | 孝かうと謂いふ可べし。 |
1-12 | |
有子曰 | 有子いうし曰く、 |
禮之用和 爲貴 |
礼れいの和わを用もつて 貴たふとしと為する、 |
先王之道 | 先王せんわうの道みち |
斯爲美 | 斯これを美びと為なす。 |
小大由之 | 小大せうだい之これに由よれば、 |
有所不行 | 行おこなはれざる所ところあり、 |
知和而和 | 和わを知しりて和わすれども、 |
不以禮節之 | 礼れいを以もつて之れを節せつせざれば、 |
亦不可行也 | 亦また行おこなふ可べからざるなり。 |
1-13 | |
有子曰 | 有子いうし曰く、 |
信近於義 | 信しん、義ぎに近ちかければ、 |
言可復也 | 言げん復ふむべきなり、 |
恭近於禮 | 恭きよう、礼れいに近ければ、 |
遠恥辱也 | 恥辱ちじよくに遠ざかる、 |
因不失其親 | 因いん、其親そのしんを失うしなはざれば、 |
亦可宗也 | 亦また宗たつとぶべきなり。 |
1-14 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子 食無求飽 |
君子くんし 食しよくは飽あくことを求もとむる無なく、 |
居無求安 | 居きよは安やすきことを求むる無し、 |
敏於事 | 事ことに敏びんにして、 |
而愼於言 | 而して言げんを慎つゝしみ、 |
就有道而正焉 | 有道いうだうに就つきて正たださば、 |
可謂好學也已 | 学がくを好このむと謂いふ可べきのみ。 |
1-15 | |
子貢曰 | 子貢しこう曰く、 |
貧而無諂 | 貧ひんにして諂へつらふこと無なく、 |
富而無驕 | 富とんで驕おごる無なきは |
何如 | 如何いかん。 |
子曰 | 子曰く、 |
可也 | 可かなり、 |
未若 貧而樂 富而好 禮者也 |
未だ 貧ひんにして楽たのしみ、 富とみて礼れいを好このむ者ものに 若しかざるなり。 |
子貢曰 | 子貢曰く、 |
詩云 | 詩しに云いふ、 |
如切如磋 | 切せつするが如ごとく磋さするが如ごとく、 |
如琢如磨 | 琢たくするが如ごとく磨まするが如ごとしとは、 |
其斯之謂與 | 其それ斯これの謂いひか。 |
子曰 | 子曰く、 |
賜也 | 賜しや、 |
始可與言詩已矣 | 始はじめて興ともに詩しを言いふ可べきのみ、 |
吿諸往 | 諸これに往わうを告つげて、 |
而知來者 | 而しかうして来らいを知しる者なり。 |
1-16 | |
子曰 | 子曰く、 |
不患人之不己知 | 人の己おのれを知らざるを患うれへず、 |
患不知人也 | 人を知らざるを患ふるなり。 |
爲政第二:いせい |
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2-1 | |
子曰 | 子曰く、 |
爲政以德 | 政まつりごとを為なすに徳とくを以もつてせば、 |
譬如北辰 | 譬たとへば北辰ほくしん |
居其所 | 其所そのところに居ゐて |
而衆星共之 | 衆星しうせい之に共むかふが如ごときなり。 |
2-2 | |
子曰 | 子曰く、 |
詩三百 | 詩し三百さんびやく、 |
一言以 蔽之 |
一言いちげん以もつて 之これを蔽おほへば、 |
曰思無邪 | 曰く思おもひ邪よこしま無なし。 |
2-3 | |
子曰 | 子曰く、 |
道之以政 | 之これを道みちびくに政まつりごとを以もつてし、 |
齊之以刑 | 之これを斉ひとしくするに刑けいを以てすれば、 |
民免而無恥 | 民免まぬかれて恥はづる無なし。 |
道之以德 | 之れを道みちびくに徳とくを以てし、 |
齊之以禮 | 之れを斉しくするに礼れいを以てすれば、 |
有恥且格 | 恥はづる有ありて且かつ格ただす。 |
2-4 | |
子曰 | 子曰く、 |
吾十有五而志於學 | 吾われ十有五じふいうごにして学がくに志こゝろざし、 |
三十而立 | 三十にして立たち、 |
四十而不惑 | 四十にして惑まどはず、 |
五十而知天命 | 五十にして天命てんめいを知り、 |
六十而耳順 | 六十にして耳みゝ順したがふ、 |
七十而從心所欲 | 七十にして心こゝろの欲ほつする所ところに從したがへども、 |
不踰矩 | 矩のりを踰こえず。 |
2-5 | |
孟懿子問孝 | 孟懿子まういし孝かうを問とふ、 |
子曰 | 子曰く、 |
無違 | 違たがふ無なかれ。 |
樊遲御 | 樊遲はんち御ぎよたり、 |
子吿之曰 | 子し之これに告つげて曰く、 |
孟孫問孝於我 | 孟孫まうそん孝かうを我われに問とふ、 |
我對曰 | 我われ対こたへて曰く |
「無違」 | 違たがふ無なかれと。 |
樊遲曰 | 樊遲曰く、 |
何謂也 | 何なんの謂いひぞや。 |
子曰 | 子曰く、 |
生 | 生いけるには |
事之以禮 | 之れに事つかふるに礼れいを以もつてし、 |
死 | 死しせるには |
葬之以禮 | 之れを葬ほうむるに礼れいを以てし、 |
祭之以禮 | 之れを祭まつるに礼を以てす。 |
2-6 | |
孟武伯問孝 | 孟武伯まうぶはく孝かうを問とふ、 |
子曰 | 子曰く、 |
父母 | 父母は |
唯其疾之憂 | 唯たゞ其その疾やまひを之れ憂うれふ。 |
2-7 | |
子游問孝 | 子游しいう孝かうを問とふ、 |
子曰 | 子曰く、 |
今之孝者 | 今いまの孝は |
是謂能養 | 是これを能よく養やしなふと謂いふ、 |
至於犬馬 | 犬馬けんばに至いたるまで |
皆能有養 | 皆みな能よく養やしなう有り、 |
不敬 | 敬けいせずんば、 |
何以別乎 | 何を以て別わかたん。 |
2-8 | |
子夏問孝 | 子夏しか孝かうを問とふ、 |
子曰 | 子曰く、 |
色難 | 色いろ難かたし、 |
有事 | 事こと有あれば |
弟子服其勞 | 弟子ていし其その労らうに服ふくし、 |
有酒食 | 酒食しゆしあれば |
先生饌 | 先生せんせいに餞せんす、 |
曾是以爲孝乎 | 曾かつて是こゝを以もつて孝かうと為なるか。 |
2-9 | |
子曰 | 子曰く、 |
吾與回言 | 吾れ回くわいと言いふ、 |
終日不違如愚 | 終日しゆうじつ違たがはざること愚ぐなるが如ごとし、 |
退而省其私 | 退しりぞいて其私そのわたくしを省かへりみれば、 |
亦足以發 | 亦また以もつて発はつするに足たれり、 |
回也不愚 | 回くわいや愚ぐならず。 |
2-10 | |
子曰 | 子曰く、 |
視其所以 | 其その以なす所ところを視み、 |
觀其所由 | 其その由よる所ところを観み、 |
察其所安 | 其その安やすんずる所ところを察みれば、 |
人焉廋哉 | 人ひと焉いづくんぞ廋かくさんや、 |
人焉廋哉 | 人焉んぞ廋さんや。 |
2-11 | |
子曰 | 子曰く、 |
溫故而知新 | 故ふるきを温たづねて新あたらしきを知しる、 |
可以爲師矣 | 以もつて師しと為なる可べし。 |
2-12 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子不器 | 君子くんしは器きならず。 |
2-13 | |
子貢問君子 | 子貢しこう君子くんしを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
先行 | 行おこなひを先さきにし、 |
其言而後從之 | 其その言げんは而しかして後のちに之これに從したがふ。 |
2-14 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子周而不比 | 君子くんしは周しうして比ひせず、 |
小人比而不周 | 小人せうじんは比して周せず。 |
2-15 | |
子曰 | 子曰く、 |
學而不思則罔 | 学まなびて思おもはざれば、則すなはち罔くらし、 |
思而不學則殆 | 思おもひて学まなばざれば、則すなはち殆あやふし。 |
2-16 | |
子曰 | 子曰く、 |
攻乎異端 | 異端いたんを攻をさむるは、 |
斯害也已 | 斯これ害がいあるのみ。 |
2-17 | |
子曰 | 子曰く、 |
由 | 由ゆう |
誨女知之乎 | 汝なんぢに之これを知しるを誨をしへんか、 |
知之爲知之 | 之れを知しるは之これを知しると為なし、 |
不知爲不知 | 知しらざるは知しらずと為なせ、 |
是知也 | 是これ知しるなり。 |
2-18 | |
子張學干祿 | 子張しちやう禄ろくを干もとむるを学まなぶ。 |
子曰 | 子曰く、 |
多聞闕疑 | 多おほく聞ききて疑うたがはしきを闕かき、 |
慎言其餘 | 慎つゝしんで其余そのよを言いへば、 |
則寡尤 | 則ち尤とがめ寡すくなし、 |
多見闕殆 | 多おほく見みて殆うたがはしきを闕かき、 |
慎行其餘 | 慎つゝしんで其余そのよを行おこなへば、 |
則寡悔 | 則すなはち悔くい寡すくなし、 |
言寡尤 | 言げん尤とがめ寡すくなく、 |
行寡悔 | 行おこなひ悔くい寡すくなければ |
祿在其中矣 | 禄ろく其中そのうちに在あり。 |
2-19 | |
哀公問曰 | 哀公あいこう問とうて曰いはく、 |
何爲則民服 | 何なにを為なさば則すなはち民たみ服ふくせん。 |
孔子對曰 | 孔子こうし対こたへて曰いはく、 |
擧直錯諸枉 | 直なほきを挙あげて諸これを枉まがれるに錯おけば |
則民服 | 則すなはち民たみ服ふくす、 |
擧枉錯諸直 | 枉まがれるを挙げて諸これを直なほきに錯おけば、 |
則民不服 | 則すなはち民たみ服ふくせず。 |
2-20 | |
季康子問 | 季康子きかうし問とふ、 |
使民敬忠以勸 | 民たみをして敬忠けいちう以もつて勧すゝましむるには |
如之何 | 之これを如何いかん。 |
子曰 | 子曰く、 |
臨之 | 之れに臨のぞむに |
以莊則敬 | 荘さうを以もつてすれば、則すなはち敬けいす、 |
孝慈則忠 | 孝慈かうじなれば、則すなはち忠ちう、 |
擧善而 | 善ぜんを挙あげて |
敎不能 | 不能ふのうを教をしふれば |
則勸 | 則ち勧すゝまん。 |
2-21 | |
或謂孔子曰 | 或あるひと孔子に謂いつて曰く、 |
子奚 | 子し奚なんぞ |
不爲政 | 政まつりごとを為なさざると。 |
子曰 | 子し曰く、 |
《書》云 | 書しよに云いふ、 |
「孝乎惟孝 | 孝かうか惟これ孝かう、 |
友於兄弟」 | 兄弟けいていに友いうに、 |
施於有政 | 有政いうせいに施しくと、 |
是亦爲政 | 是これ亦また政を為なすなり、 |
奚其爲爲政 | 奚なんぞ其れ政を為なすを為せん。 |
2-22 | |
子曰 | 子曰く、 |
人而無信 | 人にして信しん無なくんば、 |
不知其可也 | 其その可かなるを知しらず、 |
大車無輗 | 大車たいしや輗げいなく、 |
小車無軏 | 小車せうしや軏げつ無なくんば、 |
其何以行之哉 | 其それ何なにを以もつて之これを行やらん。 |
2-23 | |
子張問 | 子張しちやう問とふ、 |
十世可知也 | 十世じつせい知しる可べきや、 |
子曰 | 子曰く、 |
殷因於夏禮 | 殷いんは夏かの礼れいに因よれり、 |
所損益可知也 | 損益そんえきする所ところ知しる可べし、 |
周因於殷禮 | 周しうは殷いんの礼れいに因よれり、 |
所損益可知也 | 損益する所知る可し、 |
其或繼周者 | 其それ周に継つぐ者もの或あらば、 |
雖百世可知也 | 百世ひやくせいと雖いへども知しる可べきなり。 |
2-24 | |
子曰 | 子曰く、 |
非其鬼而祭之 | 其鬼そのきに非あらずして之これを祭まつるは、 |
諂也 | 諂へつらふなり、 |
見義不爲 | 義ぎを見て為せざるは、 |
無勇也 | 勇ゆう無きなり。 |
八佾第三:はちいつ |
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3-1 | |
孔子謂季氏 | 孔子季氏を謂ふ。 |
八佾舞於庭 | 八佾はちいつして庭に舞はす、 |
是可忍也 | 是れを忍ぶ可んば、 |
孰不可忍也 | 孰いずれか忍ぶ可からざらん。 |
3-2 | |
三家者 | 三家者さんかしや |
以雍徹 | 雍ようを以て徹す。 |
子曰 | 子曰く、 |
「相維辟公 | 相たすくるは維これ辟公へきこうあり、 |
天子穆穆」 | 天子てんし穆穆ぼくぼくたりと。 |
奚取於三家之堂 | 奚なんぞ三家さんかの堂だうに取とらん。 |
3-3 | |
子曰 | 子曰く、 |
人而不仁 | 人ひとにして不仁ふじんならば、 |
如禮何 | 礼れいを如何いかんせん、 |
人而不仁 | 人にして不仁ならば、 |
如樂何 | 楽がくを如何いかんせん。 |
3-4 | |
林放問禮之本 | 林放りんぱう礼れいの本もとを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
大哉問 | 大おほいなるかな問とひや。 |
禮 | 礼れいは |
與其奢也 | 其その奢おごらん与よりは |
寧儉 | 寧むしろ倹けんせよ、 |
喪 | 喪もは |
與其易也 | 其その易そなはらん与よりは |
寧戚 | 寧むしろ戚いためよ。 |
3-5 | |
子曰 | 子曰く、 |
夷狄之有君 | 夷狄いてきの君きみあるは、 |
不如諸夏之亡也 | 諸夏しよかの亡なきに如しかず。 |
3-6 | |
季氏旅於泰山 | 季氏きし泰山たいざんに旅りよす。 |
子謂冉有曰 | 子し冉有ぜんいうに謂いつて曰く、 |
女弗能救與 | 女なんぢ救すくふ能あたはざるかと。 |
對曰 | 対こたへて曰く、 |
不能 | 能はずと。 |
子曰 | 子曰く、 |
嗚呼 | 嗚呼あゝ、 |
曾謂泰山 | 曾かつて泰山たいざんは |
不如林放乎 | 林放りんぱうに如しかずと謂おもへるか。 |
3-7 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子無所爭 | 君子くんしは争あらそふ所ところ無なし、 |
必也射乎 | 必かならずや射しやか、 |
揖讓而升下 | 揖讓いうじやうして升下しようかし、 |
而飮 | 而しかうして飮のましむ。 |
其爭也君子 | 其の争あらそひや君子なり。 |
3-8 | |
子夏問曰 | 子夏問うて曰く、 |
「巧笑倩兮 | 巧笑かうせう倩せんたり、 |
美目盼兮 | 美目びもく盼へんたり、 |
素以爲絢兮」 | 素そ以もつて絢けんを為なすとは、 |
何謂也 | 何なんの謂いひぞや。 |
子曰 | 子曰く、 |
繪事後素 | 絵えの事ことは素しろきを後のちにす。 |
曰 | 曰く、 |
禮後乎 | 礼は後か。 |
子曰 | 子曰く、 |
起予者 | 予よを起おこす者ものなり。 |
商也始可與言《詩》已矣 | 商しやうや始はじめて興ともに詩しを言いふ可べきのみ。 |
3-9 | |
子曰 | 子曰く、 |
夏禮 | 夏かの礼れいは |
吾能言之 | 吾われ能よく之これを言いへども、 |
杞不足徵也 | 杞き徴ちようするに足たらざるなり。 |
殷禮 | 殷いんの礼は |
吾能言之 | 吾れ能く之れを言へども、 |
宋不足徵也 | 宋そう徴するに足らざるなり。 |
文獻不足故也 | 文献ぶんけん足たらざるが故なり。 |
足 | 足らば |
則吾能徵之矣 | 則吾能く之れを徴せん。 |
3-10 | |
子曰 | 子曰く、 |
禘自既灌而往者 | 禘ていは既に灌くわんして自より往のち者は、 |
吾不欲觀之矣 | 吾れ之れを観みるを欲ほつせず。 |
3-11 | |
或問禘之說 | 或あるひと禘ていの説せつを問ふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
不知也 | 知らざるなり。 |
知其說者之於天下也 | 其の説せつを知しる者の天下てんかに於おけるや、 |
其如示諸斯乎 | 其それ諸これを斯こゝに示おくが如ごときかとて、 |
指其掌 | 其その掌たなごころを指さす。 |
3-12 | |
祭如在 | 祭まつれば在いますが如ごとく、 |
祭神如神在 | 神かみを祭まつれば神在すが如し。 |
子曰 | 子曰く、 |
吾不與祭 | 吾れ祭に与あづからざれば |
如不祭 | 祭らざるが如し。 |
3-13 | |
王孫賈問曰 | 王孫賈わうそんか問とうて曰く、 |
「與其媚於奧 | 其の奧あうに媚こびん与よりは、 |
寧媚於竈」 | 寧むしろ竈かまどに媚こびよとは、 |
何謂也 | 何なんの謂いひぞや。 |
子曰 | 子曰く、 |
不然 | 然らず、 |
獲罪於天 | 罪つみを天てんに獲うれば、 |
無所禱也 | 禱いのる所ところ無なし。 |
3-14 | |
子曰 | 子曰く、 |
周監於二代 | 周しうは二代を監かんすれば、 |
郁郁乎文哉 | 郁郁乎いくいくことして文ぶんなるかな、 |
吾從周 | 吾われは周しうに從したがはん。 |
3-15 | |
子入太廟 | 子し太廟たいべうに入いつて、 |
每事問 | 事毎ことごとに問とふ、 |
或曰 | 或あるひと曰く、 |
孰 謂 鄹人之子 知禮乎 |
孰たれか 鄹人すうひとの子こ 礼れいを知ると 謂いへる乎か、 |
入太廟 | 太廟に入つて |
每事問 | 事毎に問ふと。 |
子聞之曰 | 子之れを聞ききて曰く、 |
是禮也 | 是これ礼なり。 |
3-16 | |
子曰 | 子曰く、 |
射不主皮 | 射しやは主皮しゆひせず、 |
爲力不同科 | 力ちからの科しなを同おなじうせざるが為なり、 |
古之道也 | 古いにしへの道みちなり。 |
3-17 | |
子貢 | 子貢しこう |
欲去 吿朔之餼羊 |
告朔こくさくの餼羊きやうを 去さらんと欲ほつす。 |
子曰 | 子曰く、 |
賜也 | 賜しや、 |
爾愛其羊 | 爾なんぢは其羊そのひつじを愛あいす、 |
我愛其禮 | 我われは其礼れいを愛す。 |
3-18 | |
子曰 | 子曰く、 |
事君盡禮 | 君きみに事つかふるに礼れいを尽つくせば、 |
人以爲諂也 | 人ひと以もつて諂へつらふと為なすなり。 |
3-19 | |
定公問 | 定公ていこう問とふ、 |
君使臣 | 君きみ臣しんを使つかひ、 |
臣事君 | 臣しん君きみに事つかふるは、 |
如之何 | 之れを如何いかにすべき。 |
孔子對曰 | 孔子こうし対こたへて曰く、 |
君使臣以禮 | 君きみ臣しんを使ふに礼を以てし、 |
臣事君以忠 | 臣しん君きみに事つかふるに忠を以てす。 |
3-20 | |
子曰 | 子曰く、 |
《關雎》 | 關雎くわんしよは |
樂而不淫 | 楽たのしんで淫いんせず、 |
哀而不傷 | 哀かなしんで傷しやうせず。 |
3-21 | |
哀公問社於宰我 | 哀公あいこう社しやを宰我さいがに問とふ。 |
宰我對曰 | 宰我さいが対こたへて曰く、 |
夏后氏以松 | 夏后氏かこうしは松まつを以もつてし、 |
殷人以柏 | 殷人いんひとは柏はくを以てし、 |
周人以栗 | 周人しうひとは栗りつを以てし、 |
曰 | 曰く、 |
「使民戰栗」 | 民たみをして戦栗せんりつせしむと。 |
子聞之 | 子之れを聞ききて |
曰 | 曰く、 |
成事不說 | 成事せいじは説とかず、 |
遂事不諫 | 遂事すゐじは諌いさめず、 |
既往不咎 | 既往きわうは咎とがめず。 |
3-22 | |
子曰 | 子曰く、 |
管仲之器小哉 | 管仲くわんちうの器きは小せうなるかな。 |
或曰 | 或あるひと曰く、 |
管仲儉乎 | 管仲は倹けんか。 |
曰 | 曰く、 |
管氏有三歸 | 管氏くわんし三帰さんき有あり、 |
官事不攝 | 官事くわんじは攝かねず、 |
焉得儉 | 焉いづくんぞ倹けんを得えん。 |
然則 | 然しからば則すなはち |
管仲知禮乎 | 管仲くわんちうは礼れいを知しれるか。 |
曰 | 曰く、 |
邦君樹塞門 | 邦君はうくんは樹じゆして門もんを塞ふさぐ、 |
管氏亦樹塞門 | 菅氏も亦樹して門を塞ぐ、 |
邦君爲兩君之好 | 邦君兩君りやうくんの好よしみを為なすに |
有反坫 | 反坫はんてん有あり、 |
管氏亦有反坫 | 菅氏くわんし亦また反坫はんてん有り、 |
管氏而知禮 | 菅氏にして礼を知らば、 |
孰不知禮 | 孰たれか礼れいを知しらざらん。 |
3-23 | |
子語魯大師樂 | 子し魯ろの大師たいしに楽がくを語かたりて |
曰 | 曰く、 |
樂其可知也 | 楽がくは其それ知しる可べきなり。 |
始作 | 始はじめ作おこす |
翕如也 | 翕如きふじよたり。 |
從之 | 之れを從はなつ |
純如也 | 純如じゆんじよたり、 |
皦如也 | 皦如けふじよたり、 |
繹如也 | 繹如えきじよたり、 |
以成 | 以て成なる。 |
3-24 | |
儀封人請見 | 儀ぎの封人はうじん見まみえんと請こふ。 |
曰 | 曰く、 |
君子之至於斯也 | 君子の斯こゝに至いたるや、 |
吾未嘗不得見也 | 吾われ未いまだ嘗かつて見まみゆるを得えずんばあらずと。 |
從者見之 | 從者じゆうしや之これに見えしむ。 |
出曰 | 出いでて曰く、 |
二三子 | 二三子 |
何患於喪乎 | 何ぞ喪さうを患うれへん、 |
天下之無道也久矣 | 天下てんかの道みちなきや久ひさし、 |
天將以夫子爲木鐸 | 天てん将まさに夫子ふうしを以て木鐸ぼくたくと為なさんとすと。 |
3-25 | |
子謂韶 | 子し韶せうを謂いふ。 |
盡美矣 | 美びを尽つくし、 |
又盡善也 | 又また善ぜんを尽つくせり。 |
謂武 | 武ぶを謂いふ、 |
盡美矣 | 美びを尽つくし、 |
未盡善也 | 未いまだ善ぜんを尽さざるなり。 |
3-26 | |
子曰 | 子曰く、 |
居上不寬 | 上かみに居ゐて寬くわんならず、 |
爲禮不敬 | 礼れいを為なして敬けいせず、 |
臨喪不哀 | 喪もに臨のぞんで哀かなしまずんば、 |
吾何以觀之哉 | 吾れ何を以て之れを観みんや。 |
里仁第四:りじん |
|
4-1 | |
子曰 | 子曰く、 |
里仁爲美 | 仁じんに里をるを美びと為なす、 |
擇不處仁 | 択えらんで仁じんに處をらざれば、 |
焉得知 | 焉いづくんぞ知ちたるを得えん。 |
4-2 | |
子曰 | 子曰く、 |
不仁者 | 不仁者ふじんしやは |
不可以久處約 | 以もつて久ひさしく約やくに處をる可べからず、 |
不可以長處樂 | 以もつて長ながく楽らくに處をる可べからず、 |
仁者安仁 | 仁者じんしやは仁に安やすんじ、 |
知者利仁 | 知者ちしやは仁を利りす。 |
4-3 | |
子曰 | 子曰く、 |
惟仁者能好人 | 惟たゞ仁者じんしやは能よく人ひとを好このみ、 |
能惡人 | 能よく人ひとを悪にくむ。 |
4-4 | |
子曰 | 子曰く、 |
苟志於仁矣 | 苟いやしくも仁じんに志こゝろざさば |
無惡也 | 悪あくなきなり。 |
4-5 | |
子曰 | 子し曰く、 |
富與貴 | 富とみと貴たふときとは、 |
是人之所欲也 | 是これ人ひとの欲ほつする所ところなり、 |
不以其道得之 | 其その道みちを以もつて之これを得えざれば、 |
不處也 | 處をらざるなり。 |
貧與賤 | 貧まづしきと賤いやしきとは、 |
是人之所惡也 | 是これ人ひとの悪にくむ所ところなり、 |
不以其道得之 | 其その道みちを以もつて之これを得えざれば、 |
不去也 | 去さらざるなり。 |
君子去仁 | 君子くんしは仁じんを去りて |
惡乎成名 | 悪いづくにか名なを成なさん、 |
君子無終食之閒違仁 | 君子は食しよくを終をふるの閒あひだも仁じんに違たがふことなし、 |
造次必於是 | 造次ざうじにも必かならず是こゝに於おいてし、 |
顚沛必於是 | 顚沛てんぱいにも必かならず是こゝに於おいてす。 |
4-6 | |
子曰 | 子曰く、 |
我未見好仁者 | 我われ未いまだ仁じんを好このむ者もの、 |
惡不仁者 | 不仁ふじんを悪にくむ者ものを見みず、 |
好仁者 | 仁じんを好このむ者もの、 |
無以尙之 | 以もつて之これに尙くはふるなし、 |
惡不仁者 | 不仁ふじんを悪にくむ者ものも、 |
其爲仁矣 | 其それ仁たり、 |
不使不仁者加乎其身 | 不仁者をして其身そのみに加くはへしめざればなり、 |
有能一日用其力於仁矣乎 | 能よく一日いちじつ其力そのちからを仁じんに用もちふる有あらんか、 |
我未見力不足者 | 我われ未だ力ちからの足たらざる者ものを見みず、 |
蓋有之矣 | 蓋けだし之これ有あらん、 |
我未之見也 | 我われ未いまだ之これを見みざるなり。 |
4-7 | |
子曰 | 子曰く、 |
人之過也 | 人ひとの誤あやまちや、 |
各於其黨 | 各おのおの其党そのたうに於おいてす、 |
觀過 | 過あやまちを観みれば |
斯知仁矣 | 斯こゝに仁じんを知しる。 |
4-8 | |
子曰 | 子曰く、 |
朝聞道 | 朝あしたに道みちを聞きかば、 |
夕死可矣 | 夕ゆふべに死しすとも可かなり。 |
4-9 | |
子曰 | 子曰く、 |
士志於道而 | 士し道みちに志こゝろざして、 |
恥惡衣惡食者 | 悪衣あくい悪食あくしよくを恥はづる者ものは、 |
未足與議也 | 未いまだ与ともに議はかるに足たらざるなり。 |
4-10 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子之於天下也 | 君子くんしの天下てんかに於おけるや、 |
無適也 | 適てきなきなり、 |
無莫也 | 莫ばくなきなり、 |
義之與比 | 義ぎ之これと与ともに比したがふ。 |
4-11 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子懷德 | 君子くんしは徳とくを懷おもへば、 |
小人懷土 | 小人せうじんは土どを懷おもひ、 |
君子懷刑 | 君子は刑けいを懷おもへば、 |
小人懷惠 | 小人せうじんは恵けいを懷おもふ。 |
4-12 | |
子曰 | 子曰く、 |
放於利而行 | 利りに放よりて行おこなへば、 |
多怨 | 怨うらみ多おほし。 |
4-13 | |
子曰 | 子曰く、 |
能以禮讓爲國乎 | 能よく礼讓れいじやうを以もつて国くにを為をさめんか、 |
何有 | 何なにか有あらん、 |
不能以禮讓爲國 | 礼讓れいじやうを以もつて国くにを為をさむること能あたはざれば、 |
如禮何 | 礼れいを如何いかにせん。 |
4-14 | |
子曰 | 子曰く、 |
不患無位 | 位くらゐなきを患うれへず、 |
患所以立 | 立たつ所以ゆゑんを患うれふ、 |
不患莫己知 | 己おのれを知しる莫なきを患うれへず、 |
求爲可知也 | 知しらる可べきを為なすを求もとむるなり。 |
4-15 | |
子曰 | 子曰く、 |
參乎 | 參しんか、 |
吾道一以貫之 | 吾わが道みちは一いつ以もつて之これを貫つらぬく。 |
曾子曰 | 曾子そうし曰く、 |
唯 | 唯い。 |
子出 | 子し出いづ。 |
門人問曰 | 門人もんじん問とふ、 |
何謂也 | 曰いはく何なんの謂いひぞや。 |
曾子曰 | 曾子そうし曰いはく、 |
夫子之道 | 夫子ふうしの道は、 |
忠恕而已矣 | 忠恕ちうじよのみ。 |
4-16 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子喻於義 | 君子くんしは義ぎに喻さとり、 |
小人喻於利 | 小人せうじんは利りに喻さとる。 |
4-17 | |
子曰 | 子曰く、 |
見賢思齊焉 | 賢けんを見みては斉ひとしからんことを思おもひ、 |
見不賢而內自省也 | 不賢ふけんを見みては内うちに自みづから省かへりみるなり。 |
4-18 | |
子曰 | 子曰く、 |
事父母幾諫 | 父母ふぼに事つかふるには幾諫きかんす、 |
見志不從 | 志こゝろざしの從したがはざるを見みては、 |
又敬而不違 | 又また敬けいして違たがはず、 |
勞而不怨 | 労らうして怨うらみず。 |
4-19 | |
子曰 | 子曰く、 |
父母在 | 父母ふぼ在いませば、 |
不遠遊 | 遠とほく遊あそばず、 |
遊必有方 | 遊あそべば必かならず方はう有あり。 |
4-20 | |
子曰 | 子曰く、 |
三年無改於父之道 | 三年さんねん父ちゝの道みちを改あらたむるなき、 |
可謂孝矣 | 孝かうと謂いふ可し。 |
4-21 | |
子曰 | 子曰く、 |
父母之年 | 父母ふぼの年としは、 |
不可不知也 | 知しらざる可べからざるなり、 |
一則以喜 | 一いつは則すなはち以もつて喜よろこび、 |
一則以懼 | 一いつは則すなはち以もつて懼おそる。 |
4-22 | |
子曰 | 子曰く、 |
古者言之不出 | 古者こしや言げんの出いださざるは、 |
恥躬之不逮也 | 躬みの逮およばざるを恥はづればなり。 |
4-23 | |
子曰 | 子曰く、 |
以約失之者 | 約やくを以もつて之これを失うしなふ者もの |
鮮矣 | 鮮すくなし。 |
4-24 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子 | 君子くんしは |
欲訥於言而敏於行 | 言げんに訥とつにして行おこなひに敏びんならんことを欲ほつす。 |
4-25 | |
子曰 | 子曰く、 |
德不孤 | 徳とく孤こならず、 |
必有鄰 | 必かならず隣となり有あり。 |
4-26 | |
子游曰 | 子游しいう曰いはく、 |
事君數 | 君きみに事つかへて数しばしばすれば、 |
斯辱矣 | 斯こゝに辱はづかしめらる、 |
朋友數 | 朋友ほういうに数しばしばすれば、 |
斯疏矣 | 斯こゝに疎うとんぜらる。 |
公冶長第五:こうやちょう |
|
5-1 | |
子謂公冶長 | 子し公冶長こうやちやうを謂いふ。 |
可妻也 | 妻めあはす可べきなり、 |
雖在縲絏之中 | 縲絏るゐせつの中うちに在ありと雖いへども、 |
非其罪也 | 其罪つみに非あらざるなりと。 |
以其子妻之 | 其子こを以もつて之れに妻めあはす。 |
5-2 | |
子謂南容 | 子し南容なんようを謂いふ。 |
邦有道 | 邦くに道みちあれば |
不廢 | 廃すてられず、 |
邦無道 | 邦くに道みち無なきも |
免於刑戮 | 刑戮けいりくを免まぬがると。 |
以其兄之子妻之 | 其兄あにの子こを以もつて之れに妻めあはす。 |
5-3 | |
子謂子賤 | 子し子賤しせんを謂いふ、 |
君子哉 | 君子くんしなるかな、 |
若人 | 若かくのごとき人ひと、 |
魯無君子者 | 魯ろに君子くんしなる者無なくば、 |
斯焉取斯 | 斯れ焉いづくんぞ斯これを取とらんと。 |
5-4 | |
子貢問曰 | 子貢しこう問とうて曰いはく、 |
賜也何如 | 賜しや如何いかん。 |
子曰 | 子曰く、 |
女器也 | 女なんぢは器きなり。 |
曰 | 曰く、 |
何器也 | 何なんの器きぞ。 |
曰 | 曰く、 |
瑚璉也 | 瑚璉これんなり。 |
5-5 | |
或曰 | 或あるひと曰く、 |
雍也仁 | 雍ようや仁じんなれども |
而不佞 | 佞ねいならずと。 |
子曰 | 子曰く、 |
焉用佞 | 焉いづくんぞ佞ねいを用もちひん、 |
禦人以口給 | 人ひとに禦あたるに口給こうきふを以もつてすれば、 |
屢憎於人 | 屢しばしば人ひとに憎にくまる。 |
不知其仁 | 其仁じんを知しらず、 |
焉用佞 | 焉いづくんぞ佞ねいを用もちひん。 |
5-6 | |
子使漆雕開仕 | 子し漆雕開しつてうかいをして仕つかへしむ。 |
對曰 | 対こたへて曰く、 |
吾斯之未能信 | 吾われ斯これを之れ未いまだ信しんずる能あたはずと。 |
子說 | 子し説よろこぶ。 |
5-7 | |
子曰 | 子曰く、 |
道不行 | 道みち行おこなわれず、 |
乘桴浮於海 | 桴いかだに乗のりて海うみに浮うかばん、 |
從我者 | 我われに從したがふ者ものは |
其由與 | 其それ由いうなるか。 |
子路聞之喜 | 子路しろ之これを聞ききて喜よろこぶ。 |
子曰 | 子曰く、 |
由也 | 由いうや |
好勇過我 | 勇ゆうを好このむこと我われに過すぎたり、 |
無所取材 | 材ざいを取とる所ところなしと。 |
5-8 | |
孟武伯問 | 孟武伯まうぶはく問とふ、 |
子路仁乎 | 子路しろ仁じんなるか。 |
子曰 | 子曰く、 |
不知也 | 知らざるなり。 |
又問 | 又また問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
由也 | 由いうや |
千乘之國 | 千乗せんじようの国くに、 |
可使治其賦也 | 其賦そのふを治をさめしむべきなり、 |
不知其仁也 | 其仁じんを知しらざるなりと。 |
求也何如 | 求きうや如何いかん。 |
子曰 | 子曰く、 |
求也 | 求きうや |
千室之邑 | 千室せんしつの邑いふ、 |
百乘之家 | 百乗ひやくじようの家いへ、 |
可使爲之宰也 | 之れが宰さいたらしむべきなり。 |
不知其仁也 | 其仁じんを知しらざるなり。 |
赤也何如 | 赤せきや如何いかん。 |
子曰 | 子曰く、 |
赤也 | 赤せきや |
束帶立於朝 | 束帶そくたいして朝てうに立たち、 |
可使與賓客言也 | 賓客ひんかくと言はしむべきなり、 |
不知其仁也 | 其仁じんを知しらざるなり。 |
5-9 | |
子謂子貢曰 | 子し子貢しこうに謂いつて曰く、 |
女與回也孰愈 | 女なんぢと回くわいと孰いずれか愈まされる。 |
對曰 | 対こたへて曰く、 |
賜也 | 賜しや、 |
何敢望回 | 何なんぞ敢あへて回くわいを望のぞまん。 |
回也 | 回くわいや、 |
聞一以知十 | 一を聞ききて以て十を知り、 |
賜也 | 賜しや |
聞一以知二 | 一を聞ききて以もつて二を知る。 |
子曰 | 子曰く、 |
弗如也 | 如しかざるなり、 |
吾與女 | 吾われ女なんぢと |
弗如也 | 如しかざるなり。 |
5-10 | |
宰予晝寢 | 宰予さいよ晝ひる寝しんす。 |
子曰 | 子曰く、 |
朽木不可雕也 | 朽木きうぼくは雕ほる可べからざるなり、 |
糞土之牆 | 糞土ふんどの牆かきは |
不可杇也 | 杇ぬる可べからざるなり、 |
於予與何誅 | 予よに於おいて何なんぞ誅せめん。 |
子曰 | 子曰く、 |
始吾於人也 | 始はじめ吾われ人ひとに於おけるや、 |
聽其言而 | 其言そのげんを聴ききて、 |
信其行 | 其行おこなひを信しんぜり、 |
今吾於人也 | 今いま吾われ人ひとに於おいてや、 |
聽其言而 | 其言げんを聴ききて、 |
觀其行 | 其行おこなひを観みる、 |
於予與改是 | 予よに於おいてか是れを改あらたむ。 |
5-11 | |
子曰 | 子曰く、 |
吾未見剛者 | 吾われ未いまだ剛者がうしやを見ず、 |
或對曰 | 或あるひと対こたへて曰く、 |
申棖 | 申棖しんたうと。 |
子曰 | 子曰く、 |
棖也慾 | 棖たうや慾よくあり、 |
焉得剛 | 焉いづくんぞ剛がうを得えん。 |
5-12 | |
子貢曰 | 子貢しこう曰く、 |
我不欲人之加諸我也 | 我れ人の諸これを我われに加くはふるを欲ほつせざるや、 |
吾亦欲無加諸人 | 吾われ亦また諸これを人ひとに加くはふる無なからんを欲ほつす。 |
子曰 | 子し曰く、 |
賜也 | 賜しや、 |
非爾所及也 | 爾なんぢが及およぶ所ところにあらざるなり。 |
5-13 | |
子貢曰 | 子貢しこう曰いはく、 |
夫子之文章 | 夫子ふうしの文章ぶんしやうは、 |
可得而聞也 | 得えて聞きく可べきなり、 |
夫子之言性與天道 | 夫子ふうしの性せいと天道てんだうとを言ふは、 |
不可得而聞也 | 得えて聞きくべからず。 |
5-14 | |
子路有聞 | 子路しろ聞きくことありて、 |
未之能行 | 未いまだ之れを行おこなふ能あたはずんば、 |
唯恐有聞 | 唯たゞ聞きくことあるを恐おそる。 |
5-15 | |
子貢問 | 子貢しこう問とふ、 |
曰 | 曰く、 |
孔文子 | 孔文子こうぶんし |
何以謂之文也 | 何なにを以もつて之れを文ぶんと謂いふ、 |
子曰 | 子曰く、 |
敏而好學 | 敏びんにして学がくを好このみ |
不恥下問 | 下問かもんを恥はぢず、 |
是以謂之文也 | 是これを以もつて之れを文ぶんと謂いふなり。 |
5-16 | |
子謂子產 | 子し子産しさんを謂いふ、 |
有君子之道四焉 | 君子くんしの道みち四有り、 |
其行己也恭 | 其の己おのれを行おこなふや恭きよう、 |
其事上也敬 | 其の上かみに事つかふるや敬けい、 |
其養民也惠 | 其の民たみを養やしなふや恵けい、 |
其使民也義 | 其その民たみを使つかふや義ぎと。 |
5-17 | |
子曰 | 子曰く、 |
晏平仲善與人交 | 晏平仲あんぺいちう善よく人ひとと交まじはる、 |
久而敬之 | 久ひさしくして之れを敬けいす。 |
5-18 | |
子曰 | 子曰く、 |
臧文仲居蔡 | 臧文仲ぞうぶんちう蔡さいを居おく、 |
山節藻梲 | 節せつを山やまにし梲せつを藻もにす、 |
何如其知也 | 如何いかんぞ其それ知ちならん。 |
5-19 | |
子張問曰 | 子張しちやう問とふ。 |
令尹子文 | 曰く、 |
三仕爲令尹 | 令尹れいいん子文しぶん、 |
無喜色 | 三みたび仕つかへて令尹れいいんと為なり、 |
三已之 | 喜色きしよくなし、 |
無慍色 | 三たび之れを已やめられて慍うらめる色いろなし、 |
舊令尹之政 | 旧令尹きうれいいんの政まつりごとは、 |
必以吿新令尹 | 必かならず以て新令尹しんれいいんに告つぐ、 |
何如 | 如何いかん。 |
子曰 | 子し曰く、 |
忠矣 | 忠ちうなり。 |
曰 | 曰く、 |
仁矣乎 | 仁じんなるか。 |
曰 | 曰く、 |
未知 | 未いまだ知しらず。 |
焉得仁 | 焉いづくんぞ仁じんを得えん。 |
崔子弒齊君 | 崔子さいし斉君せいくんを弑しいす。 |
陳文子有馬十乘 | 陳文子ちんぶんし馬うま十乗じようあり、 |
棄而違之 | 棄すてて之れを去さる。 |
至於他邦 | 他邦たはうに至いたれば |
則曰 | 則すなはち曰いはく、 |
「猶吾大夫崔子也」 | 猶なほ吾われが大夫たいふ崔子さいしのごときなりと。 |
違之 | 之れを違さる。 |
之一邦 | 一邦はうに之ゆきては |
則又曰 | 則すなはち又また曰く、 |
「猶吾大夫崔子也」 | 猶なほ吾わが大夫たいふ崔子さいしの如ごときなりと。 |
違之 | 之を違さる。 |
何如 | 如何いかん。 |
子曰 | 子し曰く、 |
淸矣 | 淸きよし。 |
曰 | 曰く、 |
仁矣乎 | 仁じんなるか。 |
曰 | 曰く、 |
未知 | 未いまだ知らず。 |
焉得仁 | 焉いづくんぞ仁じんなるを得えん。 |
5-20 | |
季文子三思而後行 | 季文子きぶんし三思さんしして而しかる後に行おこなふ。 |
子聞之曰 | 子し之れを聞ききて曰く、 |
再 | 再ふたたびせば |
斯可矣 | 斯こゝに可かなり。 |
5-21 | |
子曰 | 子曰く、 |
甯武子 | 甯武子ねいぶし、 |
邦有道則知 | 邦くに道みち有あれば則すなはち知、 |
邦無道則愚 | 邦くに道みち無なければ則すなはち愚ぐ、 |
其知可及也 | 其知ちは及およぶ可きなり、 |
其愚不可及也 | 其愚ぐは及およぶ可べからざるなり。 |
5-22 | |
子在陳 | 子し陳ちんに在あり、 |
曰 | 曰く、 |
歸與歸與 | 帰かへらんか帰かへらんか、 |
吾黨之小子 | 吾党わがたうの小子せうし、 |
狂簡斐然成章 | 狂簡きやうかん斐然ひぜんとして章しやうを成なす、 |
不知所以裁之 | 之れを裁さいする所以ゆゑんを知しらず。 |
5-23 | |
子曰 | 子曰く、 |
伯夷、叔齊 | 伯夷はくい叔斉しゆくせいは、 |
不念舊惡 | 旧悪きうあくを念おもはず、 |
怨是用希 | 怨うらみ是ここを用もつて希まれなり。 |
5-24 | |
子曰 | 子曰く、 |
孰謂微生高直 | 孰たれか微生高びせいかうを直なほしと謂いふ。 |
或乞醯焉 | 或あるひと酢すを乞こふ、 |
乞諸其鄰而與之 | 諸これを其の隣となりに乞こひて之れを与ふ。 |
5-25 | |
子曰 | 子曰く、 |
巧言、令色、足恭 | 巧言こうげん令色れいしよく足恭すうきようする、 |
左丘明恥之 | 左丘明さきうめい之れを恥はづ、 |
丘亦恥之 | 丘きうも亦また之これを恥はづ、 |
匿怨而友其人 | 怨うらみを匿かくして其人ひとを友ともとするは |
左丘明恥之 | 左丘明さきうめい之れを恥はづ、 |
丘亦恥之 | 丘きうも亦また之れを恥はづ。 |
5-26 | |
顏淵、季路侍 | 顏淵がんゑん・季路きろ侍じす。 |
子曰 | 子曰く、 |
盍各言爾志 | 盍なんぞ各おのおの爾なんぢの志こゝろざしを言いはざる。 |
子路曰 | 子路しろ曰いはく、 |
願車馬、衣、輕裘 | 願ねがはくは車馬しやば衣い軽裘けいきう、 |
與朋友共 | 朋友ほういうと共ともに之れを敝やぶりて、 |
敝之而無憾 | 憾うらむ無なけん。 |
顏淵曰 | 顏淵がんゑん曰く、 |
願無伐善 | 願ねがはくは善ぜんに伐ほこる無く、 |
無施勞 | 労らうを施ほどこす無なけん。 |
子路曰 | 子路しろ曰く、 |
願聞子之志 | 願ねがはくは子しの志こゝろざしを聞きかん。 |
子曰 | 子曰く、 |
老者安之 | 老者らうしや之れを安やすんじ、 |
朋友信之 | 朋友ほういう之れを信しんじ、 |
少者懷之 | 少者せうしやは之れを懷なつかしめん。 |
5-27 | |
子曰 | 子曰く、 |
已矣乎 | 已やんぬるかな、 |
吾未見能見其過而 | 吾われ未いまだ能よく其過あやまちを見みて |
內自訟者也 | 内うちに自みづから訟せむる者ものを見ざるなり。 |
5-28 | |
子曰 | 子曰く、 |
十室之邑 | 十室じつしつの邑いふ、 |
必有忠信如丘者焉 | 必かならず忠信ちうしん丘きうの如ごとき者あらん、 |
不如丘之好學也 | 丘きうの学がくを好このむに如しかざるなり。 |
雍也第六:ようや |
|
6-1 | |
子曰 | 子曰く、 |
雍也 | 雍ようや |
可使南面 | 南面なんめんせしむべし。 |
仲弓問子桑伯子 | 仲弓ちうきう子桑伯子しさうはくしを問とふ、 |
子曰 | 子曰く、 |
可也 | 可かなり、 |
簡 | 簡かんなればなり。 |
仲弓曰 | 仲弓ちうきう曰く、 |
居敬而行簡 | 敬けいに居ゐて簡かんを行おこなひ、 |
以臨其民 | 以て其の民たみに臨のぞまば、 |
不亦可乎 | 亦可かならずや、 |
居簡而行簡 | 簡かんに居ゐて簡かんを行おこなふは、 |
無乃大簡乎 | 乃すなはち大簡たいかんなる無なからんか。 |
子曰 | 子曰く、 |
雍之言然 | 雍ようの言げん然しかり。 |
6-2 | |
哀公問 | 哀公あいこう問とふ。 |
弟子孰爲好學 | 弟子ていし孰たれか学がくを好このむと為なす。 |
孔子對曰 | 孔子こうし対こたへて曰いはく、 |
有顏回者 | 顏回がんくわいといふ者ものあり、 |
好學 | 学がくを好このんで、 |
不遷怒 | 怒いかりを遷うつさず、 |
不貳過 | 過あやまちを貳ふたたびせず。 |
不幸短命死矣 | 不幸ふかう短命たんめいにして死しせり。 |
今也則亡 | 今いまや則すなはち亡し。 |
未聞好學者也 | 未いまだ学がくを好このむ者を聞きかざるなり。 |
6-3 | |
子華使於齊 | 子華しくわ斉せいに使つかひす、 |
冉子爲其母請粟 | 冉子ぜんし其母はゝの為めに粟ぞくを請こふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
與之釜 | 之れに釜ふを与あたへよ。 |
請益 | 益えきを請こふ。 |
曰 | 曰く、 |
與之庾 | 之れに庾ゆを与あたへよ。 |
冉子與之粟五秉 | 冉子ぜんし之れに粟ぞく五秉ごへいを与あたふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
赤之適齊也 | 赤せきの斉せいに適ゆくや、 |
乘肥馬 | 肥馬ひばに乗のり、 |
衣輕裘 | 軽裘けいきうを衣きる、 |
吾聞之也 | 吾われ之れを聞きく、 |
君子周急不繼富 | 君子くんしは急きふに周しうして富とめるに継つがずと。 |
原思爲之宰 | 原げん思之これが宰さいとなる、 |
與之粟九百 | 之れに粟ぞく九百を与あたふ。 |
辭 | 辞じす。 |
子曰 | 子曰く、 |
毋 | 毋なかれ、 |
以與爾鄰里鄕黨乎 | 以て爾なんぢが隣里りんり郷党きやうたうに与あたへんか。 |
6-4 | |
子謂仲弓 | 子し仲弓ちうきうを謂いふ。 |
曰 | 曰く、 |
犁牛之子 | 犁牛りぎうの子も、 |
騂且角 | 騂あかくして且かつ角つのあらば、 |
雖欲勿用 | 用もちふる勿なからんと欲ほつすと雖いへども、 |
山川其舍諸 | 山川さんせん其それ諸これを舍すてんや。 |
6-5 | |
子曰 | 子曰く、 |
回也 | 回くわいや、 |
其心三月不違仁 | 其心こゝろ三月ぐわつ仁じんに違たがはずんば、 |
其餘則 | 其余よは則すなはち |
日月至焉而已矣 | 日月じつげつに至いたらん而已矣のみ。 |
6-6 | |
季康子問 | 季康子きかうし問とふ、 |
仲由可使從政也與 | 仲由ちういう政まつりごとに從したがはしむ可べきか。 |
子曰 | 子曰く、 |
由也果 | 由いうや果かなり、 |
於從政乎何有 | 政まつりごとに從したがふに於おいて何なにか有あらん。 |
曰 | 曰く、 |
賜也可使從政也與 | 賜しや政に從はしむ可きか。 |
曰 | 曰く、 |
賜也達 | 賜しや達たつなり、 |
於從政乎何有 | 政まつりごとに從ふに於おいて何なにか有あらん。 |
曰 | 曰く、 |
求也可使從政也與 | 求きうや政に從はしむべきか。 |
曰 | 曰く、 |
求也藝 | 求きうや芸げいあり、 |
於從政乎何有 | 政に從ふに於おいて何なにか有あらん。 |
6-7 | |
季氏使閔子騫爲費宰 | 季氏きし閔子騫びんしけんをして費ひの宰さいならしむ。 |
閔子騫曰 | 閔子騫びんしけん曰く、 |
善爲我辭焉 | 善く我わが為ために辞じせよ。 |
如有復我者 | 如もし我われを復ふたゝびする者有あらば、 |
則吾必在汶上矣 | 則すなはち吾われは必かならず汶ぶんの上ほとりに在あらん。 |
6-8 | |
伯牛有疾 | 伯牛はくぎう疾やまひあり、 |
子問之 | 子し之れを問とふ、 |
自牖執其手 | 牖まどより其手を執とり、 |
曰 | 曰く、 |
亡之 | 之れ亡なし、 |
命矣夫 | 命めいなるかな、 |
斯人也 | 斯この人ひとにして、 |
而有斯疾也 | 斯この疾やまひあり、 |
斯人也 | 斯この人ひとにして、 |
而有斯疾也 | 斯この疾やまひありと。 |
6-9 | |
子曰 | 子曰く、 |
賢哉回也 | 賢けんなるかな回くわいや、 |
一簞食 | 一簞たんの食し、 |
一瓢飮 | 一瓢ぺうの飮いん、 |
在陋巷 | 陋巷ろうこうに在あり、 |
人不堪其憂 | 人は其の憂うれへに堪たへず、 |
回也 | 回くわいや、 |
不改其樂 | 其楽たのしみを改あらためず、 |
賢哉回也 | 賢けんなるかな回くわいや。 |
6-10 | |
冉求曰 | 冉求ぜんきう曰く、 |
非不說子之道 | 子しの道みちを説よろこばざるにあらず、 |
力不足也 | 力ちから足たらざるなり。 |
子曰 | 子曰く、 |
力不足者 | 力ちから足たらざるものは、 |
中道而廢 | 中道ちうだうにして廃はいす、 |
今女畫 | 今いま女なんぢは画かぎれり。 |
6-11 | |
子謂子夏曰 | 子し子夏しかに謂いつて曰く、 |
女爲君子儒 | 女なんぢ君子くんしの儒じゆと為なれ、 |
無爲小人儒 | 小人せうじんの儒じゆと為なる無なかれ。 |
6-12 | |
子游爲武城宰 | 子游しいう武城ぶじやうの宰さいと為なる。 |
子曰 | 子曰く、 |
女得人焉耳乎 | 女なんぢ人ひとを得えたるか。 |
曰 | 曰く、 |
有澹臺滅明者 | 澹臺たんだい滅明めつめいなる者有り。 |
行不由徑 | 行くに径けいに由よらず。 |
非公事 | 公事こうじに非あらざれば、 |
未嘗至於偃之室也 | 未いまだ嘗かつて偃えんの室しつに至いたらざるなり。 |
6-13 | |
子曰 | 子曰く、 |
孟之反不伐 | 孟之反まうしはん伐ほこらず。 |
奔而殿 | 奔はしりて殿しんがりす。 |
將入門 | 将まさに門もんに入いらんとするや、 |
策其馬 | 其馬うまに策むちうちて |
曰 | 曰く、 |
「非敢後也 | 敢あへて後おくるゝにあらざるなり。 |
馬不進也」 | 馬うま進すすまざればなり。 |
6-14 | |
子曰 | 子曰く、 |
不有祝鮀之佞 | 祝鮀しゆくだの佞ねいあらずして、 |
而有宋朝之美 | 宋朝そうてうの美びあらば、 |
難乎免於今之世矣 | 難かたいかな今の世よに免まぬかるゝこと。 |
6-15 | |
子曰 | 子曰く、 |
誰能出不由戶 | 誰たれか能よく出いづるに戸とに由よらざらん。 |
何莫由斯道也 | 何なんぞ斯この道みちに由よる莫なきや。 |
6-16 | |
子曰 | 子曰く、 |
質勝文則野 | 質しつ、文ぶんに勝かてば、 |
文勝質則史 | 野や、文ぶん、質しつに勝かてば史し、 |
文質彬彬 | 文質ぶんしつ彬彬ひんぴんとして、 |
然後君子 | 然しかる後のちに君子くんしなり。 |
6-17 | |
子曰 | 子曰く、 |
人之生也直 | 人ひとの生いくるゝや直なほし。 |
罔之生也 | 之れを罔しひて生いくるや、 |
幸而免 | 幸さいはひにして免まぬかるゝなり。 |
6-18 | |
子曰 | 子曰く、 |
知之者 | 之れを知る者ものは、 |
不如好之者 | 之れを好このむ者ものに如しかず。 |
好之者 | 之れを好このむ者ものは、 |
不如樂之者 | 之れを楽たのしむ者に如しかず。 |
6-19 | |
子曰 | 子曰く、 |
中人以上 | 中人ちうじん以上いじやうは、 |
可以語上也 | 以て上かみを語かたる可べきなり。 |
中人以下 | 中人以下いかは、 |
不可以語上也 | 以て上を語かたる可べからざるなり。 |
6-20 | |
樊遲 | 樊遲ほんち、 |
問知 | 知ちを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
務民之義 | 民たみの義ぎを務つとめ、 |
敬鬼神而遠之 | 鬼神きしんを敬けいして之れを遠とほざく。 |
可謂知矣 | 知ちと謂いふ可べし。 |
問仁 | 仁じんを問とふ。 |
曰 | 子曰く、 |
仁者先難而後獲 | 仁者じんしやは難かたきを先さきにして獲うるを後のちにす。 |
可謂仁矣 | 仁じんと謂いふ可べし。 |
6-21 | |
子曰 | 子曰く、 |
知者樂水 | 知者ちしやは水みづを楽たのしみ、 |
仁者樂山 | 仁者じんしやは山やまを楽たのしむ、 |
知者動 | 知者ちしやは動うごき、 |
仁者靜 | 仁者じんしやは靜しづかに、 |
知者樂 | 知者ちしやは楽たのしみ、 |
仁者壽 | 仁者じんしやは壽いのちながし。 |
6-22 | |
子曰 | 子曰く、 |
齊一變 | 斉せい一変ぺんせば |
至於魯 | 魯ろに至いたらん、 |
魯一變 | 魯ろ一変ぺんせば |
至於道 | 道みちに至いたらん。 |
6-23 | |
子曰 | 子曰く、 |
觚不觚 | 觚こ觚こならず。 |
觚哉 | 觚こならんや、 |
觚哉 | 觚こならんや。 |
6-24 | |
宰我問 | 宰我さいが問とふ。 |
曰 | 曰く、 |
仁者雖吿之曰 「井有仁焉」 |
仁者じんしやは之れに告つげて 井ゐどに仁じんありと曰ふと雖いへども、 |
其從之也 | 其れ之れに從したがはんや。 |
子曰 | 子曰く、 |
何爲其然也 | 何為なんすれぞ其れ然しからん。 |
君子可逝也 | 君子くんしは逝ゆかしむ可し、 |
不可陷也 | 陥おとしいる可べからざるなり。 |
可欺也 | 欺あざむく可べし、 |
不可罔也 | 罔しふ可からざるなり。 |
6-25 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子博學於文 | 君子くんしは博ひろく文ぶんを学まなび、 |
約之以禮 | 之を約やくするに礼れいを以てせば、 |
亦可以弗畔矣夫 | 亦また以て畔そむかざる可べきか。 |
6-26 | |
子見南子 | 子し南子なんしを見みる。 |
子路不說 | 子路しろ説よろこばず、 |
夫子矢之曰 | 夫子ふうし之れに矢ちかつて曰く、 |
予所否者 | 予よの否ひなる所ところの者ものは、 |
天厭之 | 天てん之れを厭すてん、 |
天厭之 | 天てん之れを厭すてん。 |
6-27 | |
子曰 | 子曰く、 |
中庸之爲德也 | 中庸ちうようの徳とくたる、 |
其至矣乎 | 其それ至いたれるかな、 |
民鮮久矣 | 民たみ鮮すくなきこと久ひさし。 |
6-28 | |
子貢曰 | 子貢しこう曰く、 |
如有博施於民而 | 如もし博ひろく民たみに施ほどこして |
能濟衆 | 能よく衆しうを済すくふあらば、 |
何如 | 如何いかん。 |
可謂仁乎 | 仁じんと謂いふ可きか。 |
子曰 | 子曰く、 |
何事於仁 | 何なんぞ仁じんを事こととせん、 |
必也聖乎 | 必かならずや聖せいか、 |
堯舜其猶病諸 | 堯舜げうしゆんも其それ猶なほ諸これを病やめり。 |
夫仁者 | 夫それ仁者じんしやは |
己欲立 | 己おのれ立たたんと欲ほつし、 |
而立人 | 而しかして人を立たて、 |
己欲達 | 己おのれ達たつせんと欲ほつし、 |
而達人 | 而しかして人を達たつし、 |
能近取譬 | 能よく近ちかく譬たとへを取とる、 |
可謂仁之方也已 | 仁じんの方みちと謂いふ可べきのみ。 |
述而第七:じゅつじ |
|
7-1 | |
子曰 | 子曰く、 |
述而不作 | 述のべて作つくらず、 |
信而好古 | 信しんじて古いにしへを好このむ。 |
竊比於我老彭 | 窃ひそかに我わが老彭らうはうに比ひす。 |
7-2 | |
子曰 | 子曰く、 |
默而識之 | 默もくして之れを識しるし、 |
學而不厭 | 学まなんで厭いとはず、 |
誨人不倦 | 人を誨をしへて倦うまず。 |
何有於我哉 | 何なにか我われに有あらん。 |
7-3 | |
子曰 | 子曰く、 |
德之不修 | 徳とくの脩をさまらざる、 |
學之不講 | 学がくの講かうぜざる、 |
聞義不能徙 | 義ぎを聞ききて徙うつる能あたはざる、 |
不善不能改 | 不善ふぜん改あらたむる能あたはざる、 |
是吾憂也 | 是これ吾わが憂うれひなり。 |
7-4 | |
子之燕居 | 子しの燕居えんきよ、 |
申申如也 | 申申如しんしんじよたり、 |
夭夭如也 | 夭夭如えうようじよたり |
7-5 | |
子曰 | 子曰く、 |
甚矣吾衰也 | 甚はなはだしきかな吾わが衰おとろへたるや、 |
久矣 | 久ひさしきかな |
吾不復夢見周公 | 吾われ復また夢ゆめに周公しうこうを見みず。 |
7-6 | |
子曰 | 子曰く、 |
志於道 | 道みちに志こゝろざし、 |
據於德 | 徳とくに拠より、 |
依於仁 | 仁じんに依より、 |
游於藝 | 芸げいに游あそぶ。 |
7-7 | |
子曰 | 子曰く、 |
自行束脩以上 | 束脩そくしうを行おこなふより以上いじやうは、 |
吾未嘗無誨焉 | 吾われ未いまだ嘗かつて誨をしへ無なくんばあらず。 |
7-8 | |
子曰 | 子曰く、 |
不憤不啟 | 憤ふんせざれば啓けいせず、 |
不悱不發 | 悱ひせざれば発はつせず、 |
擧一隅不以三隅反 | 一隅ぐうを挙あげて三隅ぐうを以て反はんせざれば、 |
則不復也 | 則すなはち復またせざるなり。 |
7-9 | |
子食於有喪者之側 | 子喪もある者ものの側かたはらに食しよくすれば、 |
未嘗飽也 | 未いまだ嘗かつて飽あかざるなり。 |
子於是日哭 | 子是この日に於おいて哭こくすれば、 |
則不歌 | 則すなはち歌うたはず。 |
7-10 | |
子謂顏淵曰 | 子し顏淵がんゑんに謂いひて曰く、 |
用之則行 | 之れを用もちふれば則すなはち行おこなひ、 |
舍之則藏 | 之れを舍おけば則すなはち蔵かくる。 |
惟我與爾有是夫 | 唯たゞ我われと爾なんぢと是これ有あるか。 |
子路曰 | 子路しろ曰く、 |
子行三軍 | 子し三軍ぐんを行やらば、 |
則誰與 | 則すなはち誰たれと与ともにせん。 |
子曰 | 子曰く、 |
暴虎馮河 | 暴虎ばうこ馮河ひようかし、 |
死而無悔者 | 死しして悔くゆることなき者ものは、 |
吾不與也 | 吾われ与ともにせざるなり。 |
必也臨事而懼 | 必かならずや事ことに臨のぞんで懼おそれ、 |
好謀而成者也 | 謀はかりごとを好このんで成なる者ものなり。 |
7-11 | |
子曰 | 子曰く、 |
富而可求也 | 富とみにして求もとむ可くんば、 |
雖執鞭之士 | 執鞭しつべんの士しと雖いへども、 |
吾亦爲之 | 吾われ亦また之れを為なさん、 |
如不可求 | 如もし求む可からずんば |
從吾所好 | 吾が好このむ所に從したがはん。 |
7-12 | |
子之所愼 | 子しの慎つゝしむ所ところは |
齊戰疾 | 斉戦疾さいせんしつ。 |
7-13 | |
子在齊 | 子し斉せいに在あり、 |
聞韶三月 | 韶せうを聞きくこと三月ぐわつ、 |
不知肉味 | 肉にくの味あぢはひを知しらず。 |
曰 | 曰く、 |
不圖爲樂之至於斯也 | 楽がくを為なすの斯こゝに至いたるを図はからざるなり。 |
7-14 | |
冉有曰 | 冉有ぜんいう曰く、 |
夫子爲衞君乎 | 夫子ふうしは衞君ゑいくんを為たすけんか。 |
子貢曰 | 子貢しこう曰く、 |
諾 | 諾だく。 |
吾將問之 | 吾われ将まさに之れを問とはんとす。 |
入曰 | 入りて曰く、 |
伯夷叔齊 | 伯夷はくい叔斉しゆくせいは |
何人也 | 何人なにびとぞ。 |
曰 | 曰く |
古之賢人也 | 古いにしへの賢人けんじんなり。 |
曰 | 曰く |
怨乎 | 怨うらみたるか。 |
曰 | 曰く |
求仁而得仁 | 仁じんを求もとめて仁じんを得えたり、 |
又何怨 | 又また何なんぞ怨うらみんや。 |
出 | 出いでて |
曰 | 曰く、 |
夫子不爲也 | 夫子は為たすけざるなり。 |
7-15 | |
子曰 | 子曰く、 |
飯疏食 | 疏食そしを飯くらひ、 |
飮水 | 水みづを飮のみ、 |
曲肱而枕之 | 肱ひぢを曲まげて之れを枕まくらとす。 |
樂亦在其中矣 | 楽たのしみ亦また其中うちに在あり。 |
不義而富且貴 | 不義ふぎにして富とみ且かつ貴たふときは、 |
於我如浮雲 | 我われに於おいて浮雲ふうんの如し。 |
7-16 | |
子曰 | 子曰く、 |
加我數年 | 我われに数年すうねんを加かし、 |
五十以學易 | 卒つひに以て易えきを学まなばしめば、 |
可以無大過矣 | 以て大過たいくわ無なかる可べし。 |
7-17 | |
子所雅言 | 子しの雅言がげんする所ところ、 |
詩、書、 | 詩書ししよ、 |
執禮 | 執礼しつれい、 |
皆雅言也 | 皆みな雅言がげんなり。 |
7-18 | |
葉公 | 葉公せふこう、 |
問孔子於子路 | 孔子こうしを子路しろに問とふ。 |
子路不對 | 子路対こたへず。 |
子曰 | 子曰く、 |
女奚 | 女なんぢ奚なんぞ、 |
不曰 | 曰はざるや。 |
「其爲人也 | 其の人と為なりや |
發憤忘食 | 憤いきどほりを発はつして食しよくを忘わすれ、 |
樂以忘憂 | 楽たのしんで以て憂うれへを忘わすれ、 |
不知老之將至 | 老おいの将まさに至いたらんとするを知らず、 |
云爾」 | 爾しかりと。 |
7-19 | |
子曰 | 子曰く、 |
我非生而知之者 | 我われ生うまれながらにして之れを知しる者ものに非あらず。 |
好古 | 古いにしへを好このみて |
敏以求之者也 | 敏とく以もつて之れを求もとめたる者なり。 |
7-20 | |
子 | 子し |
不語 怪、力、亂、神 |
怪くわい力りよく乱らん神しんを 語かたらず。 |
7-21 | |
子曰 | 子曰く、 |
三人行 | 三人行けば、 |
必有我師焉 | 必かならず我わが師しを得う。 |
擇其善者而從之 | 其の善ぜんなる者を択えらんで之れに從したがひ、 |
其不善者而改之 | 其の善ぜんならざる者ものをば之れを改あらたむ。 |
7-22 | |
子曰 | 子曰く、 |
天生德於予 | 天てん徳とくを予われに生なせり。 |
桓魋其如予何 | 桓魋くわんたい其れ予われを如何いかにせん。 |
7-23 | |
子曰 | 子曰く、 |
二三子 | 二三子し |
以我爲隱乎 | 我われを以もつて隱かくすと為なすか。 |
吾無隱乎爾 | 吾われは隱かくすこと無なきのみ。 |
吾無行而不與二三子者 | 吾われ行おこなふとして二三子と与ともにせざる者もの無なし。 |
是丘也 | 是これ丘きうなり。 |
7-24 | |
子以四敎 | 子し四よつを以て教をしふ、 |
文、行、忠、信 | 文ぶん行かう忠ちう信しん。 |
7-25 | |
子曰 | 子曰く、 |
聖人 | 聖人せいじんを |
吾不得而見之矣 | 吾われ得えて之を見みず、 |
得見君子者 | 君子者くんししやを見みるを得えば |
斯可矣 | 斯こゝに可かなり。 |
子曰 | 子曰く、 |
善人 | 善人ぜんにんをば |
吾不得而見之矣 | 吾われ得えて之を見みず、 |
得見有恆者 | 恒つねある者を見みるを得えば |
斯可矣 | 斯こゝに可かなり、 |
亡而爲有 | 亡なくして有ありと為なし、 |
虛而爲盈 | 虚むなしうして盈みてりと為なし、 |
約而爲泰 | 約やくにして泰おごれりと為なさば、 |
難乎有恆矣 | 恒つねあること難かたし。 |
7-26 | |
子釣而不綱 | 子し釣つりして綱かうせず。 |
弋而不射宿 | 弋よくして宿やどれるを射いず。 |
7-27 | |
子曰 | 子曰く、 |
蓋有不知而作之者 | 蓋けだし知しらずして之これを作なす者もの有あらん、 |
我無是也 | 我われは是これ無なきなり。 |
多聞 | 多おほく聞きき、 |
擇其善者而從之 | 其の善者ぜんしやを択えらんで之に從したがひ、 |
多見而識之 | 多おほく見みて之を識しるす。 |
知之次也 | 知しるの次つぎなり。 |
7-28 | |
互鄕難與言 | 互郷ごきやう与ともに言いひ難がたし、 |
童子見 | 童子どうじ見まみゆ、 |
門人惑 | 門人もんじん惑まどふ、 |
子曰 | 子曰く、 |
與其進也 | 其の進すすむを与ゆるす、 |
不與其退也 | 其の退しりぞくを与ゆるさざるなり。 |
唯何甚 | 唯たゞ何なんぞ甚はなはだしきや、 |
人潔己以進 | 人ひと己おのれを潔いさぎよくして以もつて進すゝむ、 |
與其潔也 | 其潔いさぎよきを与ゆるす、 |
不保其往也 | 其の往わうを保ほせざるなり。 |
7-29 | |
子曰 | 子曰く、 |
仁遠乎哉 | 仁じん遠とほからんや。 |
我欲仁 | 我われ仁じんを欲ほつせば、 |
斯仁至矣 | 斯こゝに仁じん至いたる。 |
7-30 | |
陳司敗問 | 陳司敗ちんしはい問とふ、 |
昭公知禮乎 | 昭公せうこう、礼れいを知しれるか。 |
孔子對曰 | 孔子こうし対こたへて曰く、 |
知禮 | 礼れいを知れりと。 |
孔子退 | 孔子退しりぞく。 |
揖巫馬期而進之 | 巫馬期ふばきを揖いふして之を進すゝめて、 |
曰 | 曰く、 |
吾聞 | 吾われ聞きく、 |
君子不黨 | 君子くんしは党たうせずと。 |
君子亦黨乎 | 君子も亦また党たうするか、 |
君取於吳爲 | 君きみ吳ごに取めとり、 |
同姓 | 同姓どうせいたり、 |
謂之吳孟子 | 之を吳孟子ごまうしと謂いふ。 |
君而知禮 | 君きみにして礼れいを知しらば、 |
孰不知禮 | 孰たれか礼れいを知しらざらん。 |
巫馬期以吿 | 巫馬期ふばき以もつて告つぐ、 |
子曰 | 子曰く、 |
丘也幸 | 丘きうや幸さいはひなり。 |
苟有過 | 苟いやしくも過あやまち有あれば、 |
人必知之 | 人ひと必かならず之を知しる。 |
7-31 | |
子與人歌而善 | 子し人ひとと与ともに歌うたひて善よければ、 |
必使反之 | 必かならず之れを反かへさしめて、 |
而後和之 | 而しかる後のち之これに和わす。 |
7-32 | |
子曰 | 子曰く、 |
文莫 | 文ぶん莫ばくは |
吾猶人也 | 吾われ猶なほ人ひとのごときなり。 |
躬行君子 | 君子くんしを躬行きうかうす、 |
則吾未之有得 | 則すなはち吾われ未いまだ之これを得うる有あらざるなり。 |
7-33 | |
子曰 | 子曰く、 |
若聖與仁 | 聖せいと仁じんとの若ごときは、 |
則吾豈敢 | 則すなはち吾われ豈あに敢あへてせんや。 |
抑爲之不厭 | 抑そもそも之これを為なして厭いとはず、 |
誨人不倦 | 人ひとを誨をしへて倦うまざるは、 |
則可謂云爾已矣 | 則すなはち爾しかりと謂いふ可べきのみ。 |
公西華曰 | 公西華こうせいくわ曰く、 |
正唯 | 正まさに唯しかり。 |
弟子不能學也 | 弟子ていし学まなぶ能あたはざるなり。 |
7-34 | |
子疾病 | 子し疾やみて病へいす。 |
子路請禱 | 子路しろ禱いのらんと請こふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
有諸 | 諸これ有ありや。 |
子路對曰 | 子路しろ対こたへて曰く、 |
有之 | 之これ有あり。 |
誄曰 | 誄るゐに曰く、 |
「禱爾于上下神祇」 | 上下じやうかの神祇しんぎに禱爾とうじす。 |
子曰 | 子曰く、 |
丘之禱久矣 | 丘きうの禱いのること久ひさし。 |
7-35 | |
子曰 | 子し曰く、 |
奢則不孫 | 奢しやなれば則すなはち不孫ふそん、 |
儉則固 | 倹けんなれば則すなはち固こ。 |
與其不孫也 | 其の不孫ふそんならん与よりは、 |
甯固 | 寧むしろ固こなれ。 |
7-36 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子坦蕩蕩 | 君子くんしは坦たんにして蕩蕩たうたう、 |
小人長戚戚 | 小人せうじんは長ながく戚戚せきせき。 |
7-37 | |
子溫而厲 | 子し温をんにして厲れい、 |
威而不猛 | 威ゐにして猛たけからず、 |
恭而安 | 恭きようにして安やすし。 |
泰伯第八:たいはく |
|
8-1 | |
子曰 | 子曰く、 |
泰伯 | 泰伯たいはくは |
其可謂至德也已矣 | 其それ至徳しとくと謂いふ可べきのみ。 |
三以天下讓 | 三みたび天下てんかを以もつて讓ゆづり、 |
民無得而稱焉 | 民たみ得えて称しようすることなし。 |
8-2 | |
子曰 | 子曰く、 |
恭而無禮則勞 | 恭きようにして礼れいなければ、則すなはち労らうす。 |
愼而無禮則葸 | 慎しんにして礼れいなければ、則すなはち葸しす、 |
勇而無禮則亂 | 勇ゆうにして礼なければ、則ち乱らんす。 |
直而無禮則絞 | 直ちよくにして礼なければ、則ち絞かうす。 |
君子篤於親 | 君子くんし親しんに篤あつければ、 |
則民興於仁 | 則ち民たみ仁じんに与おこる。 |
故舊不遺 | 故旧こきう遺わすれざれば、 |
則民不偷 | 則ち民たみ偷うすからず。 |
8-3 | |
曾子有疾 | 曾子そうし疾やまひ有あり、 |
召門弟子 | 門弟もんてい子しを召めして、 |
曰 | 曰く、 |
啟予足 | 予よが足あしを啓ひらけ、 |
啟予手 | 予よが手てを啓ひらけ。 |
詩云 | 詩しに云ふ、 |
「戰戰兢兢 | 戦戦せんせん兢兢きようきよう、 |
如臨深淵 | 深淵しんゑんに臨のぞむが如ごとく、 |
如履薄冰」 | 薄冰はくひようを履ふむが如ごとしと。 |
而今而後 | 而今じこん而後じご、 |
吾知免夫 | 吾われ免まぬかるゝを知るかな |
小子 | 小子せうし。 |
8-4 | |
曾子有疾 | 曾子そうし疾やまひ有あり、 |
孟敬子問之 | 孟敬子まうけいし之を問とふ。 |
曾子言曰 | 曾子そうし言いふ、 |
鳥之將死 | 曰く鳥とりの将まさに死しなんとするとき、 |
其鳴也哀 | 其の鳴なくや哀かなし、 |
人之將死 | 人の将まさに死しなんとするとき、 |
其言也善 | 其の言げんや善よしと。 |
君子所貴乎道者三 | 君子くんしの道みちに貴たふとぶ所ところの者もの三みつ、 |
動容貌 | 容貌ようぼうを動うごかして、 |
斯遠暴慢矣 | 斯こゝに暴慢ばうまんに遠とほざかり、 |
正顏色 | 顏色がんしよくを正ただしくして、 |
斯近信矣 | 斯こゝに信しんに近ちかづき、 |
出辭氣 | 辞気じきを出いだして |
斯遠鄙倍矣 | 斯こゝに鄙倍ひばいに遠とほざかる。 |
籩豆之事 | 籩豆へんとうの事は、 |
則有司存 | 則すなはち有司いうし存そんせり。 |
8-5 | |
曾子曰 | 曾子そうし曰く、 |
以能問於不能 | 能のうを以て不能ふのうに問とひ、 |
以多問於寡 | 多おほきを以て寡すくなきに問とひ、 |
有若無 | 有あれども無なきが若ごとくし、 |
實若虛 | 實みつれども虚むなしきが若ごとくし、 |
犯而不校 | 犯おかさるゝも校はからず。 |
昔者吾友 | 昔者むかし吾わが友とも |
嘗從事於斯矣 | 嘗かつて斯こゝに從事じゆうじせり。 |
8-6 | |
曾子曰 | 曾子そうし曰いはく、 |
可以託六尺之孤 | 以て六尺しやくの孤こを託たくす可べく、 |
可以寄百里之命 | 以もつて百里りの命めいを寄よす可べし、 |
臨大節而 | 大節たいせつに臨のぞんで、 |
不可奪也 | 奪うばふ可べからざるなり、 |
君子人與 | 君子人くんしじんか、 |
君子人也 | 君子人くんしじんなり。 |
8-7 | |
曾子曰 | 曾子そうし曰く、 |
士不可以不弘毅 | 士し以て弘毅こうきならざる可べからず、 |
任重而道遠 | 任にん重おもくして道みち遠とほし、 |
仁以爲己任 | 仁じん以もつて己おのが任にんとなす、 |
不亦重乎 | 亦また重おもからずや、 |
死而後已 | 死しして後のち已やむ、 |
不亦遠乎 | 亦また遠とほからずや。 |
8-8 | |
子曰 | 子曰く、 |
興於詩 | 詩しに興おこり、 |
立於禮 | 礼れいに立たち、 |
成於樂 | 楽がくに成なる。 |
8-9 | |
子曰 | 子曰く、 |
民可使由之 | 民たみは之これに由よら使しむ可べし、 |
不可使知之 | 之を知しら使しむ可べからず。 |
8-10 | |
子曰 | 子曰く、 |
好勇疾貧 | 勇ゆうを好このみて貧ひんを疾にくむは |
亂也 | 乱らんなり、 |
人而不仁 | 人として不仁ふじんなる、 |
疾之已甚 | 之これを疾にくむ已甚はなはだしきは |
亂也 | 乱らんなり。 |
8-11 | |
子曰 | 子曰く、 |
如有周公之才之美 | 如もし周公しうこうの才さいの美び有あるも、 |
使驕且吝 | 驕けう且かつ吝りんならしめば、 |
其餘不足觀也已 | 其余よは観みるに足たらざるのみ。 |
8-12 | |
子曰 | 子曰く、 |
三年學 | 三年学まなびて、 |
不至於穀 | 穀こくに至いたらざるは、 |
不易得也 | 得え易やすからざるのみ。 |
8-13 | |
子曰 | 子曰く、 |
篤信好學 | 篤あつく信しんじて学がくを好このみ、 |
守死善道 | 死しを守まもりて道みちを善よくし、 |
危邦不入 | 危邦きはうに入らず、 |
亂邦不居 | 乱邦らんはうには居をらず。 |
天下有道則見 | 天下てんか道みち有れば則すなはち見あらはし、 |
無道則隱 | 道みち無ければ則すなはち隱かくす。 |
邦有道 | 邦くに道みち有ありて、 |
貧且賤焉 | 貧ひん且かつ賎せんなるは |
恥也 | 恥はぢなり。 |
邦無道 | 邦くに道みち無なくして、 |
富且貴焉 | 富とみ且かつ貴たふときは |
恥也 | 恥はぢなり。 |
8-14 | |
子曰 | 子曰く、 |
不在其位 | 其位そのくらゐに在あらざれば、 |
不謀其政 | 其政そのまつりごとを謀はからず。 |
8-15 | |
子曰 | 子曰く、 |
師摯之始 | 師摯ししの始はじめは、 |
關雎之亂 | 關雎くわんしよの乱らん、 |
洋洋乎 | 洋洋乎やうやうことして |
盈耳哉 | 耳みみに盈みてるかな。 |
8-16 | |
子曰 | 子曰く、 |
狂而不直 | 狂きやうにして直ちよくならず、 |
侗而不愿 | 侗とうにして愿げんならず、 |
悾悾而不信 | 悾悾こうこうにして信しんならずんば、 |
吾不知之矣 | 吾われ之これを知しらず。 |
8-17 | |
子曰 | 子曰く、 |
學如不及 | 学がくは及ばざるが如くするも、 |
猶恐失之 | 猶なほ之これを失うしなはんことを恐おそる。 |
8-18 | |
子曰 | 子曰く、 |
巍巍乎 | 巍巍乎ぎぎこたり、 |
舜、禹之有天下也 | 舜禹しゆんうの天下てんかの有たもつや。 |
而不與焉 | 而しかして与あづからず。 |
8-19 | |
子曰 | 子曰く、 |
大哉 | 大だいなるかな |
堯之爲君也 | 堯げうの君きみたるや、 |
巍巍乎 | 巍巍乎ぎぎことして、 |
唯天爲大 | 唯ただ天てんを大だいと為なす。 |
唯堯則之 | 唯ただ堯げう之これに則のつとる。 |
蕩蕩乎 | 蕩蕩乎たうたうことして |
民無能名焉 | 民たみ能よく名なづくる無なし。 |
巍巍乎 | 巍巍乎ぎぎことして |
其有成功也 | 其の成功せいこう有あるや、 |
煥乎 | 煥乎くわんことして |
其有文章 | 其それ文章ぶんしやうあり。 |
8-20 | |
舜有臣五人 | 舜しゆんに臣しん五人にん有あり、 |
而天下治 | 而しかして天下てんか治をさまる。 |
武王曰 | 武王ぶわう曰く、 |
予有亂臣十人 | 予よに乱臣らんしん十人有あり、 |
孔子曰 | 孔こう子曰く、 |
「才難」 | 才さい難かたしと。 |
不其然乎 | 其それ然しからざらんや。 |
唐虞之際 | 唐虞たうぐの際さい、 |
於斯爲盛 | 斯こゝに於おいて盛さかんなりと為なせど、 |
有婦人焉 | 婦人ふじん有あり、 |
九人而已 | 九人にんのみ。 |
三分天下 | 天下てんかを三分ぶんして、 |
有其二 | 其二を有たもち、 |
以服事殷、 | 以て殷いんに服事ふくじす。 |
周之德 | 周しうの徳とくは、 |
其可謂至德也已矣 | 其それ至徳しとくと謂いふ可べきのみ。 |
8-21 | |
子曰 | 子曰く、 |
禹 | 禹うは |
吾無間然矣 | 吾われ間然かんぜんすること無なし、 |
菲飮食 | 飮食いんしよくを菲うすくして、 |
而致孝乎鬼神 | 而しかして孝かうを鬼神きしんに致いたす、 |
惡衣服 | 衣服いふくを悪あしくして、 |
而致美乎黻冕 | 美びを黻冕ふつべんに致いたし、 |
卑宮室 | 宮室きうしつを卑ひくうして、 |
而盡力乎溝洫 | 而しかして力ちからを溝洫こうきよくに尽つくす、 |
禹 | 禹うは |
吾無間然矣 | 吾われ間然かんぜんすること無なし。 |
子罕第九:しかん |
|
9-1 | |
子罕言利 | 子し罕まれに利りを言いふ。 |
與命與仁 | 命めいと与ともにし仁じんと与ともにす。 |
9-2 | |
達巷黨人曰 | 達巷たつかう党人とうじん曰く、 |
大哉孔子 | 大だいなるかな孔子こうし、 |
博學而無所成名 | 博学はくがくにして名なを成なす所ところなし。 |
子聞之 | 子し之これを聞きき |
謂門弟子曰 | 門弟子もんていしに謂いひて曰く、 |
吾何執 | 吾われ何なにをか執とらん。 |
執御乎 | 御ぎよを執とらんか、 |
執射乎 | 射しやを執とらんか、 |
吾執御矣 | 吾われは御ぎよを執とらん。 |
9-3 | |
子曰 | 子曰く、 |
麻冕 | 麻冕まべんは |
禮也 | 礼れいなり、 |
今也純儉 | 今いまや純じゆんは倹けん、 |
吾從衆 | 吾われは衆しうに從したがはん。 |
拜下 | 下しもに拝はいするは |
禮也 | 礼れいなり、 |
今拜乎上 | 今いまや上かみに拝はいするは |
泰也 | 泰たいなり。 |
雖違衆 | 衆しうに達たがふと雖いへども、 |
吾從下 | 吾われは下しもに從したがはん。 |
9-4 | |
子絕四 | 子四を絕つ。 |
毋意 | 意い毋なく、 |
毋必 | 必ひつ毋なく、 |
毋固 | 固こ毋なく、 |
毋我 | 我が毋なし。 |
9-5 | |
子 | 子し、 |
畏於匡 | 匡きやうに畏ゐす。 |
曰 | 曰く、 |
文王既沒 | 文王ぶんわう既すでに沒ぼつしたれども、 |
文不在茲乎 | 文ぶん茲ここに在あらざるか。 |
天之將喪斯文也 | 天てんの将まさに斯この文ぶんを喪ほろぼさんとするや、 |
後死者 | 後死者こうししやは |
不得與於斯文也 | 斯この文ぶんに与あづかるを得えざるなり、 |
天之未喪斯文也 | 天てんの未いまだ斯この文ぶんを喪ほろぼささるや、 |
匡人其如予何 | 匡人きやうひと其それ予われを如何いかにせん。 |
9-6 | |
大宰 | 大宰だいさい、 |
問於子貢 | 子貢しこうに問とふ、 |
曰 | 曰いはく、 |
夫子聖者與 | 夫子ふうしは聖者せいじやか、 |
何其多能也 | 何なんぞ其その多能たのうなる。 |
子貢曰 | 子貢しこう曰いはく、 |
固天縱之將聖 | 固もとより天てん之これを縱ゆるし将まさに聖せいならんとして、 |
又多能也 | 又また多能たのうなり。 |
子聞之 | 子し之これを聞きいて、 |
曰 | 曰く、 |
大宰知我乎 | 大宰だいさい我われを知しるか。 |
吾少也賤 | 吾われ少わかくして賤せん、 |
故多能鄙事 | 故ゆゑに鄙事ひじに多能たのうなり。 |
君子多乎哉 | 君子くんしは多たならんや、 |
不多也 | 多たならざるなり。 |
9-7 | |
牢曰 | 牢らう曰いはく、 |
子云 | 子し云ふ、 |
「吾不試 | 吾われ試もちひられず、 |
故藝」 | 故ゆゑに芸げいあり。 |
9-8 | |
子曰 | 子曰く、 |
吾有知乎哉 | 吾われ知しる有あらんや、 |
無知也 | 知しる無なきなり。 |
有鄙夫 | 鄙夫ひふ有あり、 |
問於我 | 我われに問とふ、 |
空空如也 | 空空如くうくうじよたり、 |
我扣其兩端而竭焉 | 我われ其その兩端りやうたんを扣ひらきて竭つくせり。 |
9-9 | |
子曰 | 子曰く、 |
鳳鳥不至 | 鳳鳥ほうてう至いたらず、 |
河不出圖 | 河か図とを出いださず、 |
吾已矣夫 | 吾われ已やんぬるかな。 |
9-10 | |
子見齊衰者 | 子し斉衰者しさいしやを見み、 |
冕衣裳者 | 冕衣裳者べんいしやうしやと |
與瞽者 | 瞽者こしやとは、 |
見之 | 之これを見みれば、 |
雖少必作 | 少わかしと雖いへども必かならず作たつ、 |
過之必趨 | 之これを過すぐれば必かならず趨はしる。 |
9-11 | |
顏淵喟然歎曰 | 顏淵がんゑん喟然きぜんとして歎たんじて曰く、 |
仰之彌高 | 之これを仰あふげば彌々いよいよ高たかく、 |
鑽之彌堅 | 之これを鑽きれば彌々いよいよ堅かたし、 |
瞻之在前 | 之これを瞻みれば前まへに在あり、 |
忽焉在後 | 忽焉こつえんとして後しりへに在あり、 |
夫子循循然善誘人 | 夫子ふうし循循然じゆんじゆんぜんとして善よく人ひとを誘いざなひ、 |
博我以文 | 我われを博ひろむるに文ぶんを以もつてし、 |
約我以禮 | 我を約やくするに礼れいを以もつてす、 |
欲罷不能 | 罷やめんと欲ほつすれども能あたはず、 |
既竭吾才 | 既すでに吾わが才さいを竭つくせり、 |
如有所立卓爾 | 立たつ所ところ有あつて卓爾たくじたるが如ごとし、 |
雖欲從之 | 之これに從したがはんと欲ほつすと雖いへども、 |
末由也已 | 由よる末なきのみ |
9-12 | |
子疾病 | 子し疾やみて病へいす、 |
子路使門人爲臣 | 子路しろ門人もんじんをして臣しんたらしむ。 |
病間 | 病間びやうかんに曰いはく、 |
曰 | 久ひさしいかな、 |
久矣哉 | 由いうの詐さを行おこなふや、 |
由之行詐也 | 臣しん無なくして、 |
無臣而爲有臣 | 而しかして臣しん有ありと為なす。 |
吾誰欺 | 吾われ誰たれをか欺あざむかん、 |
欺天乎 | 天てんを欺あざむかんや。 |
且予與其死於臣之手也 | 且かつ予われ其その臣しんの手てに死しなん与よりは、 |
無寧死於二三子之手乎 | 無寧むしろ二三子にさんしの手てに死しなん、 |
且予縱不得大葬 | 且かつ予われ縱たとひ大葬たいさうを得えざるも |
予死於道路乎 | 吾われは道路だうろに死しなんや。 |
9-13 | |
子貢曰 | 子貢しこう曰いはく、 |
有美玉於斯 | 斯こゝに美玉びぎよく有あらば、 |
韞櫝而藏諸 | 櫝ひつに韞つゝみて蔵ざうせんか、 |
求善賈而沽諸 | 善賈ぜんこを求もとめて沽うらんか。 |
子曰 | 子曰く、 |
沽之哉 | 之これを沽うらんかな、 |
沽之哉 | 之これを沽うらんかな、 |
我待賈者也 | 我われは賈こを待まつ者ものなり。 |
9-14 | |
子欲居九夷 | 子し九夷きういに居をらんと欲ほつす。 |
或曰 | 或あるひと曰いはく、 |
陋 | 陋ろうなり、 |
如之何 | 之これを如何いかにせん。 |
子曰 | 子曰く、 |
君子居之 | 君子くんし之これに居をらば、 |
何陋之有 | 何なんの陋ろうか之れ有あらん。 |
9-15 | |
子曰 | 子曰く、 |
吾自衞反魯 | 吾われ衞ゑいより魯ろに反かへり、 |
然後樂正 | 然しかる後のち楽がく正ただしく、 |
雅頌各得其所 | 雅頌がしよう各おのおの其所そのところを得えたり。 |
9-16 | |
子曰 | 子曰く、 |
出則事公卿 | 出いでては則すなはち公卿こうけいに事つかへ、 |
入則事父兄 | 入いりては則すなはち父兄ふけいに事つかへ、 |
喪事不敢不勉 | 喪もの事ことは敢あへて勉つとめずんばあらず、 |
不爲酒困 | 酒さけの困くるしみを為なさず。 |
何有於我哉 | 何いづくんか我われに有あらんや。 |
9-17 | |
子在川上 | 子川の上に在りて、 |
曰 | 曰く、 |
逝者如斯夫 | 逝ゆく者は斯かくの如きか。 |
不舍晝夜 | 晝夜を舍おかず。 |
9-18 | |
子曰 | 子曰く、 |
吾未見好德如好色者也 | 吾われ未いまだ徳とくを好このむこと色いろを好このむが如ごとくなる者ものを見みざるなり。 |
9-19 | |
子曰 | 子曰く、 |
譬如爲山 | 譬たとへば山やまを為つくるが如ごとし。 |
未成一簣 | 未いまだ一簣いつきを成なさずして、 |
止 | 止やむは |
吾止也 | 吾わが止やむなり。 |
譬如平地 | 譬たとへば地ちを平たひらかにするが如ごとし。 |
雖覆一簣 | 一簣いつきを覆くつがへすと雖いへども、 |
進 | 進すゝむは |
吾往也 | 吾わが往ゆくなり。 |
9-20 | |
子曰 | 子曰く、 |
語之 | 之これに語つげて、 |
而不惰者 | 而しかうして惰おこたらざる者ものは、 |
其回也與 | 其それ回かいなるか。 |
9-21 | |
子謂顏淵 | 子し顏淵がんゑんを謂いつて |
曰 | 曰く、 |
惜乎 | 惜をしいかな |
吾見其進也 | 吾われ其その進すゝむを見みるなり。 |
未見其止也 | 未いまだ其その止やむを見みざるなり。 |
9-22 | |
子曰 | 子曰く、 |
苗而不秀者 | 苗なへにして秀ひいでざる者もの |
有矣夫 | 有あるかな、 |
秀而不實者 | 秀ひいでて實みのらざるもの |
有矣夫 | 有あるかな。 |
9-23 | |
子曰 | 子曰く、 |
後生可畏 | 後世こうせい畏おそる可べし、 |
焉知來者之不如今也 | 焉いづくんぞ来者らいしやの今いまの如ごとくならざるを知しらん。 |
四十五十 | 四十五十、 |
而無聞焉 | 而しかうして聞きこゆる無なくば、 |
斯亦不足畏也已 | 斯これ亦また畏おそるゝに足たらざるのみ。 |
9-24 | |
子曰 | 子曰く、 |
法語之言 | 法語はふごの言げんは、 |
能無從乎 | 能よく從したがふ無なからんや。 |
改之爲貴 | 之これを改あらたむるを貴たふとしと為なす。 |
巽與之言 | 巽与そんよの言げんは、 |
能無說乎 | 能よく説よろこぶ無なからんや。 |
繹之爲貴 | 之これを繹たづぬるを貴たふとしと為なす。 |
說而不繹 | 説よろこんで繹たづねず、 |
從而不改 | 從したがつて改あらためず。 |
吾末如之何也已矣 | 吾われ之これを如何いかんともする末なきのみ。 |
9-25 | |
子曰 | 子曰く、 |
主忠信 | 忠信ちうしんを主しゆとせよ、 |
毋友不如己者 | 己おのれに如しかざる者ものを友ともとする毋なかれ、 |
過則勿憚改 | 過あやまつては則すなはち改あらたむるに憚はゞかる勿なかれ。 |
9-26 | |
子曰 | 子曰く、 |
三軍可奪帥也 | 三軍さんぐんも帥すゐを奪うばふ可べきなり。 |
匹夫不可奪志也 | 匹夫ひつぷも志こゝろざしを奪うばう可べからざるなり。 |
9-27 | |
子曰 | 子曰く、 |
衣敝縕袍 | 敝やぶれたる縕袍うんぱうを衣き、 |
與衣狐貉者立 | 狐貉こかくを衣きる者ものと立たちて、 |
而不恥者 | 恥はぢざる者ものは、 |
其由也與 | 其それ由いうなるか。 |
「不忮不求 | 忮そこなはず求もとめず、 |
何用不臧」 | 何なにを用もつて臧よからざらん。 |
子路終身誦之 | 子路しろ終身しゆうしん之これを誦しようす。 |
子曰 | 子曰く、 |
是道也 | 是この道みちや、 |
何足以臧 | 何なんぞ以もつて臧よしとするに足たらん。 |
9-28 | |
子曰 | 子曰く、 |
歲寒 | 歳とし寒さむくして、 |
然後 | 然しかる後のちに |
知松柏之後彫也 | 松柏しようはくの後のちに彫しぼむを知しるなり。 |
9-29 | |
子曰 | 子曰く、 |
智者不惑 | 智者ちしやは惑まどはず、 |
仁者不憂 | 仁者じんしやは憂うれへず、 |
勇者不懼 | 勇者ゆうしやは懼おそれず。 |
9-30 | |
子曰 | 子曰く、 |
可與共學 | 共ともに学まなぶ可べきも、 |
未可與適道 | 未いまだ興ともに道みちに適ゆく可べからず。 |
可與適道 | 興ともに道みちに適ゆく可べきも、 |
未可與立 | 未いまだ興ともに立たつ可べからず。 |
可與立 | 興ともに立たつ可べきも、 |
未可與權 | 未いまだ興ともに權けんす可べからず。 |
9-31 | |
唐棣之華 | 唐棣たうていの華はなは、 |
偏其反而 | 偏へんとして其それ反はんせり、 |
豈不爾思 | 豈あに爾なんぢを思おもはざらんや、 |
室是遠而 | 室しつ是これ遠とほし。 |
子曰 | 子曰く、 |
未之思也 | 未いまだ之これを思おもはざるなるか、 |
夫何遠之有 | 何なんの遠とほきか之これ有あらん。 |
鄕黨第十:きょうとう |
|
10-1 | |
孔子於鄕黨 | 孔子こうし郷党きやうたうに於おいて、 |
恂恂如也 | 恂恂如じゆんじゆんじよたり。 |
似不能言者 | 言いふ能あたはざる者ものに似にたり。 |
其在宗廟朝廷 | 其その宗廟そうべう朝廷てうていに在ありては、 |
便便言 | 便便べんべんとして言いふ。 |
唯謹爾 | 唯ただ謹つゝしめり。 |
10-2 | |
朝與下大夫言 | 朝てうにて下大夫かたいふと言いへば、 |
侃侃如也 | 侃侃如かんかんじよたり。 |
與上大夫言 | 上大夫じやうたいふと言いへば、 |
誾誾如也 | 誾誾如ぎんぎんじよたり。 |
君在 | 君きみ在いませば、 |
踧踖如也 | 踧踖如しゆくせきじよたり、 |
與與如也 | 与与如よよじよたり。 |
10-3 | |
君召使擯 | 君きみ召めして擯ひんせしむれば、 |
色勃如也 | 色いろ勃如ぼつじよたり。 |
足躩如也 | 足あし躩如くわくじよたり。 |
揖所與立 | 与ともに立たつ所ところを揖いふすれば、 |
左右手 | 手てを左右さいうにす。 |
衣前後 | 衣ころもの前後ぜんごは |
襜如也 | 襜如せんじよたり。 |
趨進 | 趨はしり進すゝむは |
翼如也 | 翼如よくじよたり。 |
賓退 | 賓ひん退しりぞけば、 |
必復命 | 必かならず復命ふくめいして |
曰 | 曰いはく、 |
賓不顧矣 | 賓ひん顧かへりみずと。 |
10-4 | |
入公門 | 公門こうもんに入いれば、 |
鞠躬如也 | 鞠躬如きくきうじよたり、 |
如不容 | 容いれざるが如ごとくす、 |
立不中門 | 立たつに門もんに中ちうせず、 |
行不履閾 | 行ゆくに閾しきゐを履ふまず。 |
過位 | 位くらゐを過すぐれば、 |
色勃如也 | 色勃如いろぼつじよたり。 |
足躩如也 | 足躩如あしくわくじよたり。 |
其言似不足者 | 其言そのげんは足たらざる者ものに似にたり。 |
攝齊升堂 | 斉しを攝かかげて堂だうに升のぼれば、 |
鞠躬如也 | 鞠躬如きくきうじよたり、 |
屛氣似不息者 | 気きを屛ひそめて息いきせざる者ものに似にたり。 |
出 | 出いでて |
降一等 | 一等いつとうを降くだれば、 |
逞顏色 | 顏色がんしよくを逞のべて |
怡怡如也 | 怡怡如いいじよたり。 |
沒階趨進 | 階かいを沒ぼつして趨はしり進すゝめば、 |
翼如也 | 翼如よくじよたり。 |
復其位 | 其位そのくらゐに復かへれば、 |
踧踖如也 | 踧踖如しゆくせきじよたり。 |
10-5 | |
執圭 | 圭けいを執とれば |
鞠躬如也 | 鞠躬如きくきうじよたり、 |
如不勝 | 勝たへざるが如ごとくす。 |
上如揖 | 上あぐるには揖いふするが如くし、 |
下如授 | 下さぐるには授さづくるが如ごとくす。 |
勃如戰色 | 勃如ぼつじよとして戦色せんしよくあり。 |
足蹜蹜如有循 | 足蹜蹜あししゆくしゆくとして循したがふ有あるが如ごとし。 |
享禮 | 享礼きやうれいには |
有容色 | 容色ようしよくあり、 |
私覿 | 私覿してきには |
愉愉如也 | 愉愉如ゆゆじよたり。 |
10-6 | |
君子不以紺緅飾 | 君子くんしは紺緅かんしうを以もつて飾かざらず、 |
紅紫不以爲褻服 | 紅紫こうしは以もつて褻服せつふくと為なさず。 |
當暑 | 暑しよに當あたつては |
袗絺綌 | 袗ひとへの絺綌ちげきす。 |
必表而出之 | 必かならず表へうして出いづ。 |
緇衣羔裘 | 緇衣しいには羔裘こうきう、 |
素衣麑裘 | 素衣そいには麑裘げいきう、 |
黃衣狐裘 | 黃衣くわういには狐裘こきう、 |
褻裘長 | 褻裘せつきうは長ながし、 |
短右袂 | 右袂いうべいを短みじかくす。 |
(必有寢衣 | 必かならず寝衣しんい有あり、 |
長一身有半) | 長ながさ一身有半いつしんいうはん。 |
狐貉之厚以居 | 狐貉こかくの厚あつき以もつて居をる、 |
去喪 | 喪もを去されば |
無所不佩 | 佩おびざる所ところ無し。 |
非帷裳 | 帷裳ゐしやうに非あらざれば、 |
必殺之 | 必かならず之これを殺さいす。 |
羔裘玄冠 | 羔裘玄冠こうきうげんくわん、 |
不以弔 | 以もつて弔てうせず。 |
吉月 | 吉月きつげつには、 |
必朝服而朝 | 必かならず朝服てうふくして朝てうす。 |
10-7 | |
齊必有明衣布 | 斉さいすれば必かならず明衣めいいありて布ぬのす。 |
齊必變食 | 斉さいすれば必かならず食しを変へんず。 |
居必遷坐 | 居きよには必かならず坐ざを遷うつす。 |
10-8 | |
食不厭精 | 食しは精せいを厭いとはず、 |
膾不厭細 | 膾なますは細さいを厭いとはず。 |
食饐而餲 | 食しの饐いして餲あいせる、 |
魚餒而肉敗 | 魚うをの餒たいしたると肉の敗やぶれたるとは |
不食 | 食くらはず。 |
色惡不食 | 色いろの悪あしきは食くらはず。 |
臭惡不食 | 臭にほひの悪あしきは食くらはず。 |
失飪不食 | 飪じんを失うしなへば食くらはず。 |
不時不食 | 時ときならざるは食くらはず。 |
割不正不食 | 割さくこと正たゞしからざれば食くらはず。 |
不得其醬不食 | 其醬そのしやうを得えざれば食はず。 |
肉雖多 | 肉にく多おほしと雖いへども |
不使勝食氣 | 食気しきに勝かたしめず。 |
唯酒無量 | 唯ただ酒さけは量りやうなく、 |
不及亂 | 乱らんに及およばず。 |
沽酒市脯不食 | 沽酒こしゆ市脯しほは食くらはず。 |
不撤薑食 | 薑はじかみを撤てつせずして食しよくす。 |
不多食 | 多食たしよくせず。 |
祭于公 | 公こうに祭まつれば |
不宿肉 | 肉にくを宿とどめず。 |
祭肉不出三日 | 祭肉さいにくは三日みつかを出いださず。 |
出三日 | 三日みつかを出いだせば、 |
不食之矣 | 之これを食しよくせざるなり。 |
食不語 | 食くらふに語かたらず、 |
寢不言 | 寝いねるに言いはず、 |
雖疏食菜羹瓜 | 疏食そし菜羹さいかう瓜くわと雖いへども、 |
祭 | 祭まつる、 |
必齊如也 | 必かならず斉如さいじよたり。 |
10-9 | |
席不正不坐 | 席せき正ただしからざれば坐ざせず。 |
10-10 | |
鄕人飮酒 | 郷人きやうひとと酒さけを飮のむに、 |
杖者出 | 杖者ぢやうしや出いづれば |
斯出矣 | 斯ともに出いづ。 |
鄕人儺 | 郷人きやうひとの儺だには、 |
朝服而立於阼階 | 朝服てうふくして阼階そかいに立たつ。 |
10-11 | |
問人於他邦 | 人を他邦に問はしむれば、 |
再拜而送之 | 再拝して之を送る。 |
康子饋藥 | 康子かうし薬くすりを饋おくる。 |
拜而受之 | 拝はいして之これを受うく。 |
曰 | 曰いはく、 |
丘未達 | 丘きう未いまだ達たつせず、 |
不敢嘗 | 敢あへて嘗なめず。 |
10-12 | |
廄焚 | 廄うまや焚やけたり。 |
子退朝 | 子し朝てうより退しりぞく。 |
曰 | 曰く、 |
傷人乎 | 人ひとを傷きずつけたるかと、 |
不問馬 | 馬うまを問とはざりき。 |
10-13 | |
君賜食 | 君きみ食しよくを賜たまへば、 |
必正席先嘗之 | 必かならず席せきを正ただして先まづ之これを嘗なむ、 |
君賜腥 | 君きみ腥せいを賜たまへば、 |
必熟而薦之 | 必かならず熟じゆくして之これを薦すゝむ。 |
君賜生 | 君きみ生せいを賜たまへば、 |
必畜之 | 必かならず之これを畜やしなふ。 |
侍食於君 | 君きみに侍食じしよくするに、 |
君祭 | 君きみ祭まつれば |
先飯 | 先まづ飯はんす。 |
疾 | 疾やまひあるに |
君視之 | 君きみ之これを視みれば、 |
東首 | 東首とうしゆして、 |
加朝服 | 朝服てうふくを加くはへ、 |
拖紳 | 紳しんを拖ひく。 |
君命召 | 君きみ命めいじて召めせば、 |
不俟駕行矣 | 駕がを俟またずして行ゆく。 |
10-14 | |
入太廟 | 太廟たいべうに入いれば |
每事問 | 事毎ことごとに問とふ。 |
10-15 | |
朋友死 | 朋友ほういう死しして、 |
無所歸 | 帰きする所ところ無なければ、 |
曰 | 曰く、 |
於我殯 | 我われに於おいて殯ひんせよと。 |
朋友之饋 | 朋友ほういうの饋きは、 |
雖車馬 | 車馬しやばと雖いへども、 |
非祭肉 | 祭肉さいにくに非あらざれば |
不拜 | 拝はいせず。 |
10-16 | |
寢不尸 | 寝しんに尸しせず、 |
居不容 | 居きよに容ようせず。 |
見齊衰者 | 斉衰者しさいしやを見みれば、 |
雖狎必變 | 狎なれたりと雖いへども必かならず変へんず。 |
見冕者與瞽者 | 冕者べんしやと瞽者こしやとを見みれば、 |
雖褻必以貌 | 褻なれたりと雖いへども必かならず貌かたちを以もつてす。 |
凶服者式之 | 凶服者きようふくしやには之これに式しよくし、 |
式負版者 | 負版者ふばんしやに式しよくす、 |
有盛饌 | 盛饌せいせん有あれば、 |
必變色而作 | 必かならず色いろを変へんじて作たつ。 |
迅雷風烈 | 迅雷じんらい風烈ふうれつには |
必變 | 必ず変へんず。 |
10-17 | |
升車 | 車くるまに升のぼれば、 |
必正立 | 必かならず正立せいりつして |
執綏 | 綏すゐを執とる。 |
車中不內顧 | 車中しやちうには内顧ないこせず、 |
不疾言 | 疾言しつげんせず、 |
不親指 | 親指しんしせず。 |
10-18 | |
色斯擧矣 | 色しきすれば斯こゝに挙あがる。 |
翔而後集 | 翔しやうして而しかる後のちに集あつまる。 |
曰 | 曰く、 |
山梁雌雉 | 山梁さんりやうの雌雉しち、 |
時哉時哉 | 時ときなるかな時なるかなと。 |
子路共之 | 子路しろ之これを共とちへんとす。 |
三嗅 | 三嗅さんきうし、 |
而作 | 而しかして作たつ。 |
先進第十一:せんしん |
|
11-1 | |
子曰 | 子曰く、 |
先進於禮樂 | 先進せんしんの礼楽れいがくに於おけるは |
野人也 | 野人やじんなり。 |
後進於禮樂 | 後進こうしんの礼楽れいがくに於おけるは |
君子也 | 君子くんしなり。 |
如用之 | 如もし之これを用もちひば、 |
則吾從先進 | 則すなはち吾われは先進せんしんに從したがはん。 |
11-2 | |
子曰 | 子曰く、 |
從我於陳蔡者 | 我われに陳蔡ちんさいに從したがふ者もの、 |
皆不及門也 | 皆みな門もんに及およばざるなり。 |
德行 | 徳行とくかうには |
顏淵、閔子騫、冉伯牛、仲弓 | 顏淵がんゑん・閔子騫びんしけん・冉伯牛ぜんはくぎう・仲弓ちうきう、 |
言語 | 言語げんごには |
宰我、子貢 | 宰我さいが・子貢しこう、 |
政事 | 政事せいじには |
冉有、季路 | 冉有ぜんいう・季路きろ、 |
文學 | 文学ぶんがくには |
子游、子夏 | 子游しいう・子夏しか。 |
11-3 | |
子曰 | 子曰く、 |
回也 | 回くわいや |
非助我者也 | 我われを助たすくる者ものに非あらざるなり。 |
於吾言 | 吾わが言げんに於おいて |
無所不說 | 説よろこばざる所ところなし。 |
11-4 | |
子曰 | 子曰く、 |
孝哉閔子騫 | 孝かうなるかな閔子騫びんしけん、 |
人不間於 其父母 昆弟之言 |
人ひと 其その父母ふぼ 昆弟こんていの言げんを間かんせず。 |
11-5 | |
南容 三復白圭 |
南容なんよう 白圭はくけいを三復さんぷくす、 |
孔子 以其兄之子 妻之 |
孔子こうし 其兄そのあにの子こを以もつて 之これに妻めあはす。 |
11-6 | |
季康子問 | 季康子きかうし問とふ、 |
弟子孰爲好學 | 弟子ていし孰たれか学がくを好このむと為なす。 |
孔子對曰 | 孔子こうし対こたへて曰く、 |
有顏回者 | 顏回がんくわいといふ者もの有あり、 |
好學 | 学がくを好このむ、 |
不幸短命死矣 | 不幸ふかう短命たんめいにして死しせり、 |
今也則亡 | 今いまや則すなはち亡なし。 |
11-7 | |
顏淵死 | 顏淵がんゑん死しす。 |
顏路請子之車以爲之槨 | 顏路がんろ子しの車くるま以もつて之これが槨くわくを為つくらんと請こへり。 |
子曰 | 子曰く、 |
才不才 | 才さいも不才ふさいも、 |
亦各言其子也 | 亦また各おのおの其子そのこと言いふ |
鯉也死 | 鯉りや死しせしとき、 |
有棺而無槨 | 棺くわん有ありて槨くわく無なかりき |
吾不徒行以爲之槨 | 吾われ徒行とかうして以もつて之これが槨くわくを為つくらざりしは、 |
以吾從大夫之後 | 吾われ大夫たいふの後しりへに從したがひて、 |
不可徒行也 | 徒行とかうす可べからざるを以もつてなり |
11-8 | |
顏淵死 | 顏淵がんゑん死しす。 |
子曰 | 子曰く、 |
噫 | 噫あゝ、 |
天喪予 | 天てん予われを喪ほろぼせり、 |
天喪予 | 天てん予われを喪ほろぼせり。 |
11-9 | |
顏淵死 | 顏淵死しす。 |
子哭之慟 | 子し之これを哭こくして慟どうす。 |
從者曰 | 從者じゆうしや曰いはく、 |
子慟矣 | 子し慟どうせり。 |
曰 | 曰いはく慟どうする有あるか、 |
有慟乎 | 夫かの人ひとの為ために慟どうするに非あらずして、 |
非夫人之爲慟而誰爲 | 而しかして誰たれが為ためにせん。 |
11-10 | |
顏淵死 | 顏淵がんゑん死しす。 |
門人欲厚葬之 | 門人もんじん厚あつく之これを葬ほうむらんと欲ほつす。 |
子曰 | 子曰く、 |
不可 | 不可ふかなり。 |
門人厚葬之 | 門人もんじん厚あつく之これを葬ほうむる。 |
子曰 | 子曰く、 |
回也 | 回くわいや |
視予猶父也 | 予よを視みること猶なほ父ちゝのごとくせり、 |
予不得視猶子也 | 予よの視みること猶なほ子このごとくするを得えざるや、 |
非我也 | 我われに非あらざるなり、 |
夫二三子也 | 夫かの二三子にさんしなり。 |
11-11 | |
季路問事鬼神 | 季路きろ鬼神きしんに事つかふるを問とふ、 |
子曰 | 子曰く、 |
未能事人 | 未いまだ人ひとに事つかふること能あたはず、 |
焉能事鬼 | 為いづくんぞ能よく鬼きに事つかへん。 |
曰 | 曰いはく、 |
敢問死 | 敢あへて死しを問とふ。 |
曰 | 曰く、 |
未知生 | 未いまだ生せいを知しらず、 |
焉知死 | 為いづくんぞ死しを知しらん。 |
11-12 | |
閔子侍側 | 閔子びんし側かたはらに侍じす。 |
誾誾如也 | 誾誾如ぎんぎんじよたり。 |
子路 | 子路しろ |
行行如也 | 行行如かうかうじよたり |
冉有、子貢 | 冉有ぜんいう子貢しこう |
侃侃如也 | 侃侃如かんかんじよたり |
子樂 | 子し楽たのしむ |
若由也 | 曰く、由いうが若ごときは |
不得其死然 | 其その死然しぜんを得えざらん |
11-13 | |
魯人爲長府 | 魯人ろじん長府ちやうふを為つくる。 |
閔子騫曰 | 閔子騫びんしけん曰いはく、 |
仍舊貫 | 旧貫きうくわんに仍よらば |
如之何 | 之これを如何いかん、 |
何必改作 | 何なんぞ必かならずしも改あらため作つくらん。 |
子曰 | 子曰く、 |
夫人不言 | 夫かの人ひとは言いはず、 |
言必有中 | 言いへば必かならず中あたる有り。 |
11-14 | |
子曰 | 子曰く、 |
由之鼓瑟 | 由いうの瑟しつを鼓こするは、 |
奚爲於丘之門 | 奚為なんすれぞ丘きうの門もんに於おいてせん。 |
門人不敬子路 | 門人もんじん子路しろを敬けいせず。 |
子曰 | 子曰く、 |
由也升堂矣 | 由いうや堂だうに升のぼれり。 |
未入於室也 | 未いまだ室しつに入いらざるなり。 |
11-15 | |
子貢問 | 子貢しこう問とふ、 |
師與商也孰賢 | 師しと商しやうと孰いずれか賢まされる。 |
子曰 | 子曰く、 |
師也過 | 師しや過すぎたり、 |
商也不及 | 商しやうや及およばず。 |
曰 | 曰いはく、 |
然則師愈與 | 然しからば則すなはち師しは愈まされるか。 |
子曰 | 子曰く、 |
過猶不及 | 過すぎたるは猶なほ及およばざるがごとし。 |
11-16 | |
季氏富於周公 | 季氏きし周公しうこうより富とむ。 |
而求也爲之聚斂而附益之 | 求きうや之これが為ために聚斂しうれんして之これに附益ふえきす。 |
子曰 | 子曰く、 |
非吾徒也 | 吾わが徒とに非あらざるなり。 |
小子鳴鼓而 | 小子せうし鼓つづみを鳴ならして |
攻之可也 | 之これを攻せめて可かなり。 |
11-17 | |
柴也愚 | 柴さいや愚ぐ、 |
參也魯 | 參しんや魯ろ、 |
師也辟 | 師しや辟へき、 |
由也喭 | 由いうや喭がん。 |
11-18 | |
子曰 | 子曰く、 |
回也其庶乎 | 回くわいや其それ庶ちかきか。 |
屢空 | 屢々しばしば空むなし、 |
賜不受命而 | 賜しは命めいを受うけずして、 |
貨殖焉 | 貨殖くわしよくす、 |
億則屢中 | 億はかれば則すなはち屢々しばしば中あたる。 |
11-19 | |
子張問善人之道 | 子張しちやう善人ぜんにんの道みちを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
不踐跡 | 跡あとを踐ふまざれども、 |
亦不入於室 | 亦また室しつに入いらず。 |
11-20 | |
子曰 | 子曰く、 |
論篤是與 | 論ろん篤あつきにのみ是これ与くみせば、 |
君子者乎 | 君子者くんししやか、 |
色莊者乎 | 色荘者しきさうしやか。 |
11-21 | |
子路問 | 子路しろ問ふ、 |
聞斯行諸 | 聞きくまゝに斯これ諸これを行おこなはんか。 |
子曰 | 子曰く、 |
有父兄在 | 父兄ふけい在います有あり、 |
如之何其聞斯行之 | 之これを如何いかんぞ其それ聞きくまゝに斯これ之これを行おこなはんや。 |
冉有問 | 冉有ぜんいう問とふ、 |
聞斯行諸 | 聞きくまゝに斯これ諸これを行おこなはんか。 |
子曰 | 子曰く、 |
聞斯行之 | 聞きくまゝに斯これ之これを行おこなへ。 |
公西華曰 | 公西華こうせいくわ曰いはく、 |
由也問 | 由いうや問とふ、 |
「聞斯行諸」 | 聞きくまゝに諸これを行おこなはんかと。 |
子曰 | 子曰く、 |
「有父兄在」求也問 | 父兄ふけい在います有ありと。 |
「聞斯行諸」 | 求きうや問とふ聞きくまゝに斯これ諸これを行おこなはんかと。 |
子曰 | 子曰く、 |
「聞斯行之」 | 聞くまゝに斯れ之を行へと。 |
赤也惑 | 赤せきや惑まどふ、 |
敢問 | 敢あへて問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
求也退 | 求きうや退しりぞく。 |
故進之 | 故ゆゑに之これを進すゝむ。 |
由也兼人 | 由いうや人ひとを兼かぬ、 |
故退之 | 故ゆゑに之これを退しりぞく。 |
11-22 | |
子 | 子し、 |
畏於匡 | 匡きやうに畏ゐす。 |
顏淵後 | 顏淵がんゑん後おくれたり。 |
子曰 | 子曰く、 |
吾以女爲死矣 | 吾われ女なんぢを以もつて死しせりと為なせり。 |
曰 | 曰いはく、 |
子在 | 子し在いませり。 |
回何敢死 | 回くわい何なんぞ敢あへて死しせん。 |
11-23 | |
季子然問 | 季子然きしぜん問とふ。 |
仲由 | 仲由ちういう、 |
冉求可謂大臣與 | 冉求ぜんきうは大臣だいじんと謂いふべきか。 |
子曰 | 子曰く、 |
吾以子爲異之問 | 吾われ子しを以もつて異ことなるの問とひと為なす。 |
曾由與求之問 | 曾すなはち由いうと求きうとの問とひか。 |
所謂大臣者 | 所謂いはゆる大臣だいじんとは、 |
以道事君 | 道みちを以もつて君きみに事つかふ、 |
不可則止 | 不可ふかなれば則すなはち止やむ。 |
今由與求也 | 今いま由いうと求きうとは、 |
可謂具臣矣 | 具臣ぐしんと謂いふ可べきなり。 |
曰 | 曰いはく、 |
然則從之者與 | 然しからば則すなはち之これに從したがふ者もの与か。 |
子曰 | 子曰く、 |
弒父與君 | 父ちゝと君きみとを弑しいせば、 |
亦不從也 | 亦また從したがはざるなり。 |
11-24 | |
子路使子羔爲費宰 | 子路しろ子羔しかうをして費ひの宰さいたらしむ。 |
子曰 | 子曰く、 |
賊夫人之子 | 夫かの人ひとの子こを賊そこなふ。 |
子路曰 | 子路しろ曰いはく、 |
有民人焉 | 民人みんじん有り。 |
有社稷焉 | 社稷しやしよく有あり、 |
何必讀書 | 何なんぞ必かならずしも書しよを読よみて、 |
然後爲學 | 然しかる後のち学まなびたりと為なさん。 |
子曰 | 子曰く、 |
是故惡夫佞者 | 是この故ゆゑに夫かの佞者ねいしやを悪にくむ。 |
11-25 | |
子路、 | 子路しろ、 |
曾皙、 | 曾皙そうせき、 |
冉有、 | 冉有ぜんいう、 |
公西華侍坐 | 公西華こうせいくわ侍坐じざす。 |
子曰 | 子曰く、 |
以吾一日長乎爾 | 吾わが一日いちじつ爾なんぢより長ちやうぜるを以もつて、 |
毋吾以也 | 吾われを以もつてする毋なかれ。 |
居則曰 | 居をれば則すなはち曰いふ、 |
「不吾知也」 | 吾われを知しらざるなりと、 |
如或知爾 | 如もし或あるひは爾なんぢを知しらば、 |
則何以哉 | 則すなはち何なにを以もつてせんや。 |
子路率爾而對 | 子路しろ率爾そつじとして対こたふ。 |
曰 | 曰いはく、 |
千乘之國 | 千乗せんじようの国くに、 |
攝乎大國之閒 | 大国たいこくの閒あひだに攝せつし、 |
加之以師旅 | 之これに加くはふるに師旅を以もつてし、 |
因之以饑饉 | 之これに因よるに饑饉ききんを以もつてす。 |
由也爲之 | 由いうや之これを為をさめば、 |
比及三年 | 三年さんねんに及およぶ比ころほひ、 |
可使有勇 且知方也 |
勇ゆう有あり 且かつ方はうを知しらしむべきなり。 |
夫子哂之 | 夫子ふうし之これを哂わらふ。 |
求 | 求きう |
爾何如 | 爾なんぢは何如いかん。 |
對曰 | 対こたへて曰いはく、 |
方六七十 | 方はう六七十、 |
如五六十 | 如もしくは五六十。 |
求也爲之 | 求きうや之これを為をさめば、 |
比及三年 | 三年さんねんに及およぶ比ころほひ、 |
可使足民 | 民たみを足たらしむ可べし。 |
如其禮樂 | 其その礼楽れいがくの如ごときは、 |
以俟君子 | 以もつて君子くんしを俟またん。 |
赤 | 赤せき |
爾何如 | 爾なんぢは何如いかん。 |
對曰 | 対こたへて曰いはく、 |
非曰能之 | 之これを能よくすと曰いふに非あらざれども、 |
願學焉 | 願ねがはくは学まなばん、 |
宗廟之事 | 宗廟そうべうの事こと、 |
如會同 | 如もしくは会同くわいどうには、 |
端章甫 | 端章甫たんしやうほして、 |
願爲小相焉 | 願ねがはくは小相せうしやうたらん。 |
點 | 點てん |
爾何如 | 爾なんぢは何如いかん。 |
鼓瑟希 | 瑟しつを鼓こすること希やみて、 |
鏗爾 | 鏗爾かうじとして |
舍瑟而作 | 瑟しつを舍おきて作たつ。 |
對曰 | 対こたへて曰いはく、 |
異乎三子者之撰 | 三子者さんししやの撰せんに異ことなり。 |
子曰 | 子曰く、 |
何傷乎 | 何なんぞ傷いたまん、 |
亦各言其志也 | 亦また各々おのおの其その志こゝろざしを言いふ |
曰 | 曰いはく、 |
莫春者 | 莫春ぼしゆんには |
春服既成 | 春服しゆんぷく既すでに成なり、 |
冠者五六人 | 冠者くわんじや五六人、 |
童子六七人 | 童子どうし六七人、 |
浴乎沂 | 沂きに浴よくし、 |
風乎舞雩 | 舞雩ぶうに風ふうし、 |
詠而歸 | 詠えいじて帰かへらん |
夫子喟然歎曰 | 夫子ふうし喟然きぜんとして歎たんじて曰く、 |
吾與點也 | 吾われは點てんに与くみせん |
三子者出 | 三子者さんししや出いづ |
曾皙後 | 曾皙そうせき後おくる |
曾皙曰 | 曾皙そうせき曰いはく、 |
夫三子者之言何如 | 夫かの三子者さんししやの言げんは何如いかん |
子曰 | 子曰く、 |
亦各言其志也已矣 | 亦また各々おのおの其その志こゝろざしを言いふのみ |
曰 | 曰いはく、 |
夫子何哂由也 | 夫子ふうし何なんぞ由いうを哂わらふや |
曰 | 曰く、 |
爲國以禮 | 国くにを為をさむるには礼れいを以もつてす |
其言不讓 | 其その言げん讓ゆづらず |
是故哂之 | 是この故ゆゑに之これを哂わらふ |
唯求則非邦也與 | 唯たゞ求きうは則すなはち邦くにに非あらざる与か |
安見方六七十 | 安いづくんぞ方はう六七十 |
如五六十 | 如もしくは五六十にして |
而非邦也者 | 邦くにに非あらざる者ものを見みん |
唯赤則非邦也與 | 唯たゞ赤せきは則すなはち邦くにに非あらざるか |
宗廟會同 | 宗廟そうべう会同くわいどう、 |
非諸侯而何 | 諸侯しよこうに非あらずして何なんぞ |
赤也爲之小 | 赤せきや之これが小せうたらば、 |
孰能爲之大 | 孰たれか能よく之これが大だいたらん |
顏淵第十二:がんえん |
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12-1 | |
顏淵 | 顏淵がんゑん、 |
問仁 | 仁じんを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
克己復禮爲仁 | 己おのれに克かちて礼れいを復やむを仁じんと為なす。 |
一日克己復禮 | 一日いちじつ己おのれに克かちて礼れいを復やめば、 |
天下歸仁焉 | 天下てんか仁じんに帰きす。 |
爲仁由己 | 仁じんを為なすは己おのれに由よる、 |
而由人乎哉 | 人ひとに由よらんや。 |
顏淵曰 | 顏淵曰いはく、 |
請問其目 | 其その目もくを請こひ問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
非禮勿視 | 非礼ひれい視みる勿なかれ、 |
非禮勿聽 | 非礼ひれい聴きく勿なかれ、 |
非禮勿言 | 非礼ひれい言いふ勿なかれ、 |
非禮勿動 | 非礼ひれい動うごく勿なかれ。 |
顏淵曰 | 顏淵曰いはく、 |
回雖不敏 | 回くわい不敏ふびんと雖いへども、 |
請事斯語矣 | 請こふ斯この語ごを事こととせん。 |
12-2 | |
仲弓問仁 | 仲弓ちうきう仁じんを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
出門如見大賓 | 門もんを出いでては大賓たいひんを見みるが如ごとくし、 |
使民如承大祭 | 民たみを使つかふには大祭たいさいを承うくるが如ごとくす、 |
己所不欲 | 己おのれの欲ほつせざる所ところをば、 |
勿施於人 | 人ひとに施ほどこす勿なかれ、 |
在邦無怨 | 邦くにに在ありても怨うらみ無なく、 |
在家無怨 | 家いへに在ありても怨うらみ無なし。 |
仲弓曰 | 仲弓ちうきう曰いはく、 |
雍雖不敏 | 雍よう不敏ふびんと雖いへども、 |
請事斯語矣 | 請こふ斯この語ごを事こととせん。 |
12-3 | |
司馬牛問仁 | 司馬牛しばぎう仁じんを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
仁者 | 仁じんとは |
其言也訒 | 其その言いふや訒じんす、 |
曰 | 曰いはく、 |
其言也訒 | 其その言いふや訒じんす。 |
斯謂之「仁」已夫 | 斯こゝに之これを仁じんと謂いふか。 |
子曰 | 子曰く、 |
爲之難 | 之これを為なすは難かたし、 |
言之得無訒乎 | 之これを言いふに訒じんする無なきを得えんや。 |
12-4 | |
司馬牛問君子 | 司馬牛しばぎう君子くんしを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
君子不憂不懼 | 君子くんしは憂うれへず懼おそれず。 |
曰 | 曰いはく、 |
不憂不懼 | 憂うれへず懼おそれざる、 |
斯謂之「君子」矣夫 | 斯こゝに之これを君子くんしと謂いふか。 |
子曰 | 子曰く、 |
內省不疚 | 内うちに省かへりみて疚やましからずんば、 |
夫何憂何懼 | 夫それ何なんぞ憂うれへ何なんぞ懼おそれん。 |
12-5 | |
司馬牛憂 | 司馬牛しばぎう憂うれふ。 |
曰 | 曰いはく、 |
人皆有兄弟 | 人ひと皆みな兄弟けいてい有あり、 |
我獨亡 | 我われ独ひとり亡なし。 |
子夏曰 | 子夏しか曰いはく、 |
商聞之矣 | 商せう之これを聞きく、 |
「死生有命 | 死生しせい命めい有あり、 |
富貴在天」 | 富貴ふうき天てんに在あり、 |
君子敬而無失 | 君子くんしは敬けいして失うしなふこと無なく、 |
與人恭而有禮 | 人ひとと恭きようして礼れい有あらば、 |
四海之內 | 四海しかいの内うち |
皆兄弟也 | 皆みな兄弟けいていたり。 |
君子何患乎無兄弟也 | 君子くんし何なんぞ兄弟けいてい無なきを患うれへん。 |
12-6 | |
子張問明 | 子張しちやう明めいを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
浸潤之譖 | 浸潤しんじゆんの譖しん、 |
膚受之愬 | 膚受ふじゆの愬そ、 |
不行焉 | 行おこなはれざるは、 |
可謂明也已矣 | 明めいと謂いふ可べきのみ。 |
浸潤之譖 | 浸潤しんじゆんの譖しん、 |
膚受之愬 | 膚受ふじゆの愬そ、 |
不行焉 | 行おこなはれざるは、 |
可謂遠也已矣 | 遠とほきと謂いふ可べきのみ。 |
12-7 | |
子貢問政 | 子貢しこう政まつりごとを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
足食 | 食しよくを足たし |
足兵 | 兵へいを足たし、 |
民信之矣 | 民たみは之これに信しんにす。 |
子貢曰 | 子貢しこう曰いはく、 |
必不得已而去 | 必かならず已やむを得えずして去さらば、 |
於斯三者何先 | 斯この三者さんしやに於おいて何なにをか先さきんぜん。 |
曰 | 曰いはく、 |
去兵 | 兵へいを去さらん。 |
子貢曰 | 子貢しこう曰いはく、 |
必不得已而去 | 必かならず已やむを得えずして去さらば、 |
於斯二者何先 | 斯この二者にしやに於おいて何なにをか先さきんぜん。 |
曰 | 曰いはく、 |
去食 | 食しよくを去さらん。 |
自古皆有死 | 古いにしへより皆みな死し有あり、 |
民無信不立 | 民たみは信しん無なくんば立たたず。 |
12-8 | |
棘子成曰 | 棘子成きよくしせい曰いはく、 |
君子質而已矣 | 君子くんしは質しつのみ、 |
何以文爲 | 何なんぞ文ぶんを以もつて為せん。 |
子貢曰 | 子貢しこう曰いはく、 |
惜乎 | 惜をしいかな |
夫子之說 君子也 |
夫子ふうしの 君子くんしを説とくや、 |
駟不及舌 | 駟しも舌したに及およばず、 |
文猶質也 | 文ぶんは猶なほ質しつの如ごときなり、 |
質猶文也 | 質しつは猶なほ文ぶんの如ごときなり。 |
虎豹之鞹 | 虎豹こへうの鞹くわくは |
猶犬羊之鞹 | 猶なほ犬羊けんやうの鞹くわくのごとし。 |
12-9 | |
哀公問於有若曰 | 哀公あいこう有若いうじやくに問とひて、 |
年饑 | 曰いはく、 |
用不足 | 年とし饑うゑて用よう足たらず、 |
如之何 | 之これを如何いかにせん。 |
有若對曰 | 有若いうじやく対こたへて曰いはく、 |
盍徹乎 | 盍なんぞ徹てつせざる。 |
曰 | 曰いはく、 |
二吾猶不足 | 二にも吾われ猶なほ足たらず、 |
如之何其徹也 | 之これを如何いかんぞ其それ徹てつせんや。 |
對曰 | 対こたへて曰いはく、 |
百姓足 | 百姓ひやくせい足たらば、 |
君孰與不足 | 君きみ孰たれと与ともに足たらざらん。 |
百姓不足 | 百姓足たらずんば、 |
君孰與足 | 君きみ孰たれと与ともに足たらん。 |
12-10 | |
子張問 崇德辨惑 |
子張しちやう 徳とくを崇たかうし惑まどひを弁べんずるを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
主忠信 | 忠信ちうしんを主しゆとし、 |
徙義 | 義ぎに徙うつるは、 |
崇德也 | 徳とくを崇たかうするなり。 |
愛之欲其生 | 之これを愛あいしては、其その生せいを欲ほつし、 |
惡之欲其死 | 之これを悪にくみては、其その死しを欲ほつす。 |
既欲其生 | 既すでに其その生せいを欲ほつし、 |
又欲其死 | 又また其その死しを欲ほつするは、 |
是惑也 | 是これ惑まどひなり。 |
(誠不以富 | 誠まことに以もつて富とまず、 |
亦祇以異) | 亦また祇まさに以もつて異ことなり。 |
12-11 | |
齊景公問政於孔子 | 斉せいの景公けいこう政まつりごとを孔子こうしに問とふ。 |
孔子對曰 | 孔子こうし対こたへて曰く、 |
君君 | 君きみは君きみたり、 |
臣臣 | 臣しんは臣しんたり、 |
父父 | 父ちゝは父ちゝたり、 |
子子 | 子こは子こたり。 |
公曰 | 公こう曰いはく、 |
善哉 | 善よきかな、 |
信如君不君 | 信まことに如もし君きみ君きみたらず、 |
臣不臣 | 臣しん臣しんたらず、 |
父不父 | 父ちゝ父ちゝたらず、 |
子不子 | 子こ子こたらずんば、 |
雖有粟 | 粟ぞく有ありと雖いへども、 |
吾得而食諸 | 吾われ得えて諸これを食くらはんや。 |
12-12 | |
子曰 | 子曰く、 |
片言可以折獄者 | 片言へんげん以もつて獄うつたへを折さだむ可べき者ものは、 |
其由也與 | 其それ由いうなるか。 |
子路無宿諾 | 子路しろ諾だくを宿とゞむるなし。 |
12-13 | |
子曰 | 子曰く、 |
聽訟 | 訟うつたへを聴きくは |
吾猶人也 | 吾われ猶なほ人ひとのごときなり。 |
必也使無訟乎 | 必かならずや訟うつたへなからしめんか。 |
12-14 | |
子張問政 | 子張しちやう政せいを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
居之無倦 | 之これに居をりて倦うむなく、 |
行之以忠 | 之これを行おこなふに忠ちうを以もつてす。 |
12-15 | |
子曰 | 子曰く、 |
博學以文 | 博ひろく文ぶんを学まなび、 |
約之以禮 | 之これを約やくするに礼れいを以もつてせば、 |
亦可以弗畔矣夫 | 亦また以もつて畔そむかざる可べきか。 |
12-16 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子成人之美 | 君子くんしは人ひとの美びを成なして、 |
不成人之惡 | 人ひとの悪あくを成なさず。 |
小人反是 | 小人せうじんは是これに反はんす。 |
12-17 | |
季康子問政於孔子 | 季康子きかうし政まつりごとを孔子こうしに問とふ。 |
孔子對曰 | 孔子こうし対こたへて曰く、 |
「政」者 | 政せいは |
正也 | 正せいなり。 |
子帥以正 | 子し帥ひきゐるに正せいを以てせば、 |
孰敢不正 | 孰たれか敢あへて正たゞしからざらん。 |
12-18 | |
季康子患盜 | 季康子きかうし盜たうを患うれへて |
問於孔子 | 孔子こうしに問とふ。 |
孔子對曰 | 孔子こうし対こたへて曰く、 |
苟子之不欲 | 苟いやしくも子し不欲ふよくならば、 |
雖賞之不竊 | 之これを賞しやうすと雖いへども窃ぬすまじ。 |
12-19 | |
季康子問政於孔子 | 季康子きかうし政まつりごとを孔子こうしに問とうて、 |
曰 | 曰いはく、 |
如殺無道 | 如もし無道むだうを殺ころして、 |
以就有道 | 以もつて有道いうだうを就なさば、 |
何如 | 如何いかん。 |
孔子對曰 | 孔子こうし対こたへて曰く、 |
子爲政 | 子し政まつりごとを為なす、 |
焉用殺 | 焉いづくんぞ殺ころすを用もちひん。 |
子欲善 | 子し善ぜんを欲ほつすれば、 |
而民善矣 | 民たみ善ぜんなり。 |
君子之德風 | 君子くんしの徳とくは風かぜなり、 |
小人之德草 | 小人せうじんの徳とくは草くさなり。 |
草上之風 | 草くさ之これに風かぜを尙くはふれば、 |
必偃 | 必かならず偃ふす。 |
12-20 | |
子張問 | 子張しちやう問とふ、 |
士何如 | 士しは如何いかなる |
斯可謂之「達」矣 | 斯こゝに之これを達たつと謂いふ可べき。 |
子曰 | 子曰く、 |
何哉 | 何なんぞや爾なんぢが所謂いはゆる達たつとは。 |
爾所謂「達」者 | 子張しちやう対こたへて曰いはく、 |
子張對曰 | 邦くにに在ありて必かならず聞きこえ、 |
在邦必聞 | 家いへに在ありても必かならず聞きこゆ。 |
在家必聞 | 子曰く、 |
子曰 | 是これ聞ぶんなり、 |
是「聞」也 | 達たつに非あらざるなり。 |
非「達」也 | 夫それ達たつなる者ものは、 |
夫「達」也者 | 質しつ直ちよくにして義ぎを好このみ、 |
質直而好義 | 言げんを察さつして色いろを観み、 |
察言而觀色 | 慮おもんばかつて以もつて人ひとに下くだる。 |
慮以下人 | 邦くにに在ありても必かならず達たつし、 |
在邦必達 | 家いへに在ありても必かならず達たつす。 |
在家必達 | 夫それ聞ぶんなる者ものは、 |
夫「聞」也者 | 色いろ仁じんを取とり、 |
色取仁而行違 | 行おこなひは違たがふ、 |
居之不疑 | 之これに居ゐて疑うたがはず。 |
在邦必聞 | 邦くにに在ありても必かならず聞きこえ、 |
在家必聞 | 家いへに在ありても必かならず聞きこゆ。 |
12-21 | |
樊遲從遊於舞雩之下 | 樊遲はんち從したがひて舞雩ぶうの下もとに遊あそぶ。 |
曰 | 曰いはく、 |
敢問崇德 | 敢あへて徳とくを崇たかうし |
修慝 | 慝とくを脩をさめ |
辨惑 | 惑まどひを弁べんずるを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
善哉問 | 善よきかな問とひや。 |
先事後得 | 事ことを先さきにして得うるを後のちにするは、 |
非「崇德」與 | 徳とくを崇たかうるに非あらずや。 |
攻其惡 | 其その悪あくを攻せめて、 |
無攻人之惡 | 人ひとの悪あくを攻せむる無なきは、 |
非「修慝」與 | 慝とくを脩をさむるに非あらずや。 |
一朝之忿 | 一朝いつてうの忿いかりに、 |
忘其身 | 其その身みを忘わすれて、 |
以及其親 | 以もつて其その親しんに及およぼすは、 |
非「惑」與 | 惑まどひに非あらずや。 |
12-22 | |
樊遲問仁 | 樊遲はんち仁じんを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
愛人 | 人ひとを愛あいす。 |
問知 | 知ちを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
知人 | 人ひとを知しる。 |
樊遲未達 | 樊遲はんち未いまた達たつせず。 |
子曰 | 子曰く、 |
擧直錯諸枉 | 直なおきを挙あげて諸これを枉まがれるに錯おけば、 |
能使枉者直 | 能よく枉まがれる者ものをして直なおからしむ。 |
樊遲退 | 樊遲はんち退しりぞき子夏しかを見みて、 |
見子夏曰 | 曰いはく、 |
鄕也吾見於夫子而問「知」 | 郷さきに吾われ夫子ふうしに見まみえて知ちを問とふ、 |
子曰 | 子曰く、 |
「擧直錯諸枉 | 直なおきを挙あげて諸これを枉まがれるに錯おけば、 |
能使枉者直」 | 能よく枉まがれる者ものをして直なおからしむと。 |
何謂也 | 何なんの謂いひぞや。 |
子夏曰 | 子夏しか曰いはく、 |
富哉言乎 | 富とめるかな言げんや、 |
舜有天下 | 舜しゆん天下てんかを有たもつや、 |
選於衆 | 衆しうに選えらびて |
擧皋陶 | 皋陶かうえうを挙あげ、 |
不仁者遠矣 | 不仁者ふじんしや遠とほざかる。 |
湯有天下 | 湯たう天下てんかを有たもつや、 |
選於衆 | 衆しうに選えらびて、 |
擧伊尹 | 伊尹いいんを挙あげ、 |
不仁者遠矣 | 不仁者ふじんしや遠とほざかる。 |
12-24 | |
子貢問友 | 子貢しこう友いうを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
忠吿而善道之 | 忠告ちうこくして之これを善道ぜんだうし、 |
不可則止 | 不可ふかなれば止やめよ。 |
毋自辱焉 | 自みづから辱はづかしめらるゝ毋なかれ。 |
12-25 | |
曾子曰 | 曾子そうし曰いはく、 |
君子以文會友 | 君子くんしは文ぶんを以もつて友ともを会くわいす、 |
以友輔仁 | 友ともを以もつて仁じんを輔たすく。 |
子路第十三:しろ |
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13-1 | |
子路問政 | 子路しろ政まつりごとを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
先之 | 之これを先さきんじ |
勞之 | 之これを労らうす、 |
請益 | 益えきを請こふ。 |
曰 | 曰く、 |
無倦 | 倦うむ無なかれ。 |
13-2 | |
仲弓爲季氏宰 | 仲弓ちうきう季氏きしの宰さいと為なり |
問政 | 政まつりごとを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
先有司 | 有司いうしを先さきにす、 |
赦小過 | 小過せうくわを赦ゆるして、 |
擧賢才 | 賢才けんさいを挙あげよ。 |
曰 | 曰いはく、 |
焉知賢才而擧之 | 焉いづくんぞ賢才けんさいを知しつて之これを挙あげん。 |
曰 | 曰いはく、 |
擧爾所知 | 爾なんぢが知しる所ところを挙あげよ。 |
爾所不知 | 爾なんぢが知しらざる所ところは、 |
人其舍諸 | 人ひと其それ諸これを舍すてんや。 |
13-3 | |
子路曰 | 子路しろ曰いはく、 |
衞君 | 衞君ゑいくん、 |
待子而爲政 | 子しを待まつて政まつりごとを為なす。 |
子將奚先 | 子し将まさに奚なにをか先さきにせんとす。 |
子曰 | 子曰く、 |
必也正名乎 | 必かならずや名なを正たださんか。 |
子路曰 | 子路しろ曰いはく、 |
有是哉 | 是これ有あるかな |
子之迂也 | 子しの迂うなる、 |
奚其正 | 奚なんぞ其それ正たださん。 |
子曰 | 子し曰く、 |
野哉由也 | 野やなるかな由いうや。 |
君子於其所不知 | 君子くんしは其その知しらざる所ところに於おいて、 |
蓋闕如也 | 蓋けだし闕如けつじよするなり。 |
名不正 | 名な正たゞしからざれば、 |
則言不順 | 則すなはち言げん順じゆんならず。 |
言不順 | 言順ならざれば、 |
則事不成 | 則すなはち事こと成ならず。 |
事不成 | 事成らざれば、 |
則禮樂不興 | 則すなはち礼楽興おこらず。 |
禮樂不興 | 礼楽興らざれば、 |
則刑罰不中 | 則すなはち刑罰けいばつ中あたらず。 |
刑罰不中 | 刑罰中らざれば、 |
則民無所措手足 | 則すなはち民たみ手足しゆそくを措おく所ところ無なし。 |
故君子名之必可言也 | 故ゆゑに君子くんし之これを名なづくれば必かならず言いふ可べくす。 |
言之必可行也 | 之これを言いへば必かならず行おこなふ可べくす。 |
君子於其言 | 君子くんしは其その言げんに於おいて、 |
無所苟而已矣 | 苟いやしくもする所ところ無なきのみ。 |
13-4 | |
樊遲請學稼 | 樊遲はんち稼かを学まなばんと請こふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
吾不如老農 | 吾われ老農らうのうに如しかず。 |
請學爲圃 | 圃ほを為つくるを学まなばんと請こふ。 |
曰 | 曰く、 |
吾不如老圃 | 吾われ老圃らうほに如しかず。 |
樊遲出 | 樊遲はんち出いづ。 |
子曰 | 子し曰く、 |
小人哉 | 小人せうじんなるかな |
樊須也 | 樊須はんすや。 |
上好禮 | 上かみ礼れいを好このめば、 |
則民莫敢不敬 | 則すなはち民たみ敢あへて敬けいせざる莫なし。 |
上好義 | 上かみ義ぎを好このめば、 |
則民莫敢不服 | 則すなはち民たみ敢あへて服ふくせざるなし。 |
上好信 | 上かみ信しんを好このめば、 |
則民莫敢不用情 | 則すなはち民たみ敢あへて情じやうを用もちひざるなし。 |
夫如是 | 夫それ是かくの如ごとくば、 |
則四方之民 | 則すなはち四方しはうの民たみ、 |
襁負其子而至矣 | 其子そのこを襁負きやうふして而しかして至いたらん。 |
焉用稼 | 焉いづくんぞ稼かを用もちひん。 |
13-5 | |
子曰 | 子曰く、 |
誦詩三百 | 詩し三百を誦しようすれども、 |
授之以政 | 之これに授さづくるに政まつりごとを以もつてして |
不達 | 達たつせず、 |
使於四方 | 四方しはうに使つかひして、 |
不能專對 | 専対せんたいする能あたはずんば、 |
雖多 | 多おほしと雖いへども |
亦奚以爲 | 亦また奚なにを以もつて為せん。 |
13-6 | |
子曰 | 子曰く、 |
其身正 | 其その身み正たゞしければ、 |
不令而行 | 令れいせずして行おこなはれ、 |
其身不正 | 其その身み正たゞしからずんば、 |
雖令不從 | 令れいすと雖いへども從したがはず。 |
13-7 | |
子曰 | 子曰く、 |
魯衞之政 | 魯衞ろゑいの政まつりごとは |
兄弟也 | 兄弟けいていなり。 |
13-8 | |
子 | 子し、 |
謂衞公子荊 | 衞ゑいの公子こうし荊けいを謂いふ、 |
善居室 | 善よく室しつに居をると。 |
始有 | 始はじめ有あるに、 |
曰 | 曰いはく、 |
「苟合矣」 | 苟まことに合あへり。 |
少有曰 | 曰いはく、少すこしく有あるに |
「苟完矣」 | 苟まことに完まつたし。 |
富有曰 | 富さかんに有あるに曰いはく、 |
「苟美矣」 | 苟まことも美びなりと。 |
13-9 | |
子適衞 | 子し衞ゑいに適ゆく、 |
冉有僕 | 冉有ぜんいう僕ぼくたり。 |
子曰 | 子曰く、 |
庶矣哉 | 庶しよなるかな。 |
冉有曰 | 冉有曰く、 |
既庶矣 | 既すでに庶しよなり、 |
又何加焉 | 又また何なにをか加くはへん。 |
曰 | 曰く、 |
富之 | 之これを富とまさん。 |
曰 | 曰く、 |
既富矣 | 既すでに富とめり。 |
又何加焉 | 又また何なにをか加くはへん。 |
曰 | 曰く、 |
敎之 | 之これを教をしへん。 |
13-10 | |
子曰 | 子曰く、 |
苟有用我者 | 苟いやしくも我われを用もちふる者もの有あらば、 |
期月而已可也 | 期月きげつにして已すでに可かなり。 |
三年有成 | 三年さんねん成なる有あらん。 |
13-11 | |
子曰 | 子曰く、 |
「善人爲邦百年 | 善人ぜんにん邦くにを為をさむること百年ひやくねんならば、 |
亦可以勝殘去殺矣」 | 亦また以もつて殘ざんに勝かち殺さつを去さる可べしと。 |
誠哉是言也 | 誠まことなるかな是この言げんや。 |
13-12 | |
子曰 | 子曰く、 |
如有王者 | 如もし王者わうじや有ありとも、 |
必世而後仁 | 必かならず世せいにして後のちに仁じんならん。 |
13-13 | |
子曰 | 子曰く、 |
苟正其身矣 | 苟いやしくも其その身みを正ただしくせば、 |
於從政乎何有 | 政まつりごとに從したがふに於おいて何なにか有あらん、 |
不能正其身 | 其その身みを正ただしくする能あたはずんば、 |
如正人何 | 人ひとを正たゞすことを如何いかにせん。 |
13-14 | |
冉子退朝 | 冉子ぜんし朝てうを退しりぞく。 |
子曰 | 子曰く、 |
何晏也 | 何なんぞ晏おそきや。 |
對曰 | 対こたへて曰いはく、 |
有政 | 政まつりごと有あり。 |
子曰 | 子曰く、 |
其事也 | 其それ事ことならん。 |
如有政 | 如もし政まつりごと有あらば、 |
雖不吾以 | 吾われを以もちひずと雖いへども、 |
吾其與聞之 | 吾われ其それ之これを与あづかり聞きかん。 |
13-15 | |
定公問 | 定公ていこう問とふ。 |
一言而可以興邦 | 一言いちげんにして以もつて邦くにを興おこす可べきこと |
有諸 | 諸これ有あるか。 |
孔子對曰 | 孔子こうし対こたへて曰く、 |
言不可以若是其幾也 | 言げんは以もつて是かくの若ごとく其それ幾きすべからざるなり。 |
人之言曰 | 人ひとの言げんに曰いはく、 |
「爲君難 | 君きみ為たるは難かたし、 |
爲臣不易」 | 臣しん為たるは易やすからずと。 |
如知爲君之難也 | 如もし君きみ為たるの難かたきを知しらば、 |
不幾乎一言而興邦乎 | 一言いちげんにして而しかして邦くにを興おこすに幾きせざらんや。 |
曰 | 曰いはく、 |
一言而喪邦 | 一言いちげんにして而しかして以もつて邦くにを喪うしなふこと、 |
有諸 | 諸これ有あるか。 |
孔子對曰 | 孔子こうし対こたへて曰く、 |
言不可以若是其幾也 | 言げんは以もつて是かくの若ごとく其れ幾きすべからざるなり。 |
人之言曰 | 人ひとの言げんに曰いはく、 |
「予無樂乎爲君 | 予われ君きみ為たるを楽たのしむ無なし、 |
唯其言而莫予違也」 | 唯たゞ其それ言いうて予われに違たがふ莫なきなりと。 |
如其善而莫之違也 | 若もし其それ善ぜんにして、而しかして之これに違たがふ莫なきや、 |
不亦善乎 | 亦また善よからずや。 |
如不善而莫之違也 | 若もし不善ふぜんにして而しかして之これに違たがふ莫なきや、 |
不幾乎一言而喪邦乎 | 一言いちげんにして而しかして邦くにを喪うしなふに幾きせざらんや。 |
13-16 | |
葉公問政 | 葉公せふこう政まつりごとを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
近者說 | 近ちかき者もの説よころべば、 |
遠者來 | 遠とほき者もの来きたる。 |
13-17 | |
子夏爲莒父宰 | 子夏しか莒父きよほの宰さいと為なり、 |
問政 | 政まつりごとを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
無欲速 | 速すみやかならんことを欲ほつする無なかれ。 |
無見小利 | 小利せうりを見みる無なかれ。 |
欲速 | 速すみやかならんことを欲ほつせば、 |
則不達 | 則すなはち達たつせず。 |
見小利 | 小利せうりを見みば、 |
則大事不成 | 則すなはち大事だいじ成ならず。 |
13-18 | |
葉公語孔子曰 | 葉公せふこう孔子こうしに語かたりて曰いはく、 |
吾黨有直躬者 | 吾わが党たうに直躬ちよくきうといふ者もの有あり。 |
其父攘羊 | 其その父ちゝ羊ひつじを攘ぬすみて、 |
而子證之 | 而しかして子こ之これを証しようす。 |
孔子曰 | 孔子こうし曰く、 |
吾黨之直者 | 吾わが党たうの直なほき者ものは、 |
異於是 | 是これに異ことなり。 |
父爲子隱 | 父ちゝは子この為ために隱かくし、 |
子爲父隱 | 子こは父ちゝの為ために隱かくす。 |
直在其中矣 | 直なおきこと其その中うちに在あり。 |
13-19 | |
樊遲問仁 | 樊遲はんち仁じんを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
居處恭 | 居處きよしよ恭きように、 |
執事敬 | 事ことを執とりて敬けいに、 |
與人忠 | 人ひとと忠ちうなるは、 |
雖之夷狄 | 夷狄いてきに之ゆくと雖いへども、 |
不可棄也 | 棄すつ可べからざるなり。 |
13-20 | |
子貢問 | 子貢しこう問とふ。 |
曰 | 曰いはく、 |
何如斯可謂之「士」矣 | 如何いかなる斯これ之これを士しと謂いふ可べき。 |
子曰 | 子曰く、 |
行己有恥 | 己おのれを行おこなふに恥はぢあり、 |
使於四方 | 四方しほうに使つかひして、 |
不辱君命 | 君命くんめいを辱はづかしめざる、 |
可謂「士」矣 | 士しと謂いふ可べし。 |
曰 | 曰いはく、 |
敢問其次 | 敢あへて其その次つぎを問とふ。 |
曰 | 曰く、 |
宗族稱孝焉 | 宗族そうぞく孝かうを称しようし、 |
鄕黨稱弟焉 | 郷党きやうたう弟ていを称しようす。 |
曰 | 曰いはく、 |
敢問其次 | 敢あへて其その次つぎを問とふ。 |
曰 | 曰く、 |
言必信 | 言いへば必かならず信しん、 |
行必果 | 行おこなへば必かならず果くわ、 |
硜硜然 | 硜硜然こうぜんとして |
小人哉 | 小人せうじんなるかな、抑々そも |
抑亦可以爲次矣 | 亦また以もつて次つぎと為なす可べきか |
曰 | 曰いはく、 |
今之從政者何如 | 今いまの政まつりごとに從したがふ者ものは如何いかに |
子曰 | 子曰く、 |
噫 | 噫あゝ、 |
斗筲之人 | 斗筲とさうの人ひと、 |
何足算也 | 何なんぞ算かぞふるに足たらんや |
13-21 | |
子曰 | 子曰く、 |
不得中行而與之 | 中行ちうかうを得えて之これに与くみせずんば、 |
必也狂狷乎 | 必かならずや狂狷きやうけんか。 |
狂者進取 | 狂者きやうしやは進すゝんで取とり、 |
狷者有所不爲也 | 狷者けんしやは為なさざる所ところ有あるなり。 |
13-22 | |
子曰 | 子曰く、 |
南人有言 | 南人なんじん言いへる有あり。 |
曰 | 曰いはく、 |
「人而無恆 | 人ひとにして恆つね無なくんば |
不可以作巫醫」 | 以もつて巫醫ふいを作なす可べからずと。 |
善夫 | 善よいかな。 |
「不恆其德 | 其その徳とくを恆つねにせずんば、 |
或承之羞」 | 或あるひは之これに羞はぢを承すゝむと。 |
子曰 | 子曰く、 |
不占而已矣 | 占うらなはざるのみ。 |
13-23 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子和而不同 | 君子くんしは和わして同どうぜず。 |
小人同而不和 | 小人せうじんは同どうして和わせず。 |
13-24 | |
子貢問 | 子貢しこう問とふ。 |
曰 | 曰いはく、 |
鄕人皆好之 | 郷人きやうじん皆みな之これを好よみせば、 |
何如 | 如何いかん。 |
子曰 | 子曰く、 |
未可也 | 未いまだ可かならざるなり。 |
鄕人皆惡之 | 郷人きやうじん皆みな之これを悪にくまば、 |
何如 | 如何いかん。 |
子曰 | 子曰く、 |
未可也 | 未いまだ可かならざるなり。 |
不如鄕人之善者好之 | 郷人きやうじんの善者ぜんしや之これを好よみし、 |
其不善者惡之 | 其その不善者ふぜんしや之これを悪にくむに如しかず。 |
13-25 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子易事而難說也 | 君子くんしは事つかへ易やすくして説よろこばせ難がたし。 |
說之不以道 | 之これを説よろこばするに道みちを以もつてせざれば、 |
不說也 | 説よろこばざるなり。 |
及其使人也 | 其その人ひとを使つかふに及およびてや、 |
器之 | 之これを器きにす。 |
小人難事而易說也 | 小人せうじんは事つかへ難がたくして説よろこばせ易やすし。 |
說之雖不以道 | 之これを説よろこばするに道みちを以もつてせずと雖いへども |
說也 | 説よろこぶなり。 |
及其使人也 | 其その人ひとを使つかふに及およびてや、 |
求備焉 | 備そなはらんことを求もとむ。 |
13-26 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子泰而不驕 | 君子くんしは泰たいにして驕けうならず、 |
小人驕而不泰 | 小人せうじんは驕けうにして泰たいならず。 |
13-27 | |
子曰 | 子曰く、 |
剛毅木訥 | 剛毅木訥がうきぼくとつは |
近仁 | 仁じんに近ちかし。 |
13-28 | |
子路問 | 子路しろ問とふ。 |
曰 | 曰いはく、 |
何如斯可謂之「士」矣 | 如何いかなる斯これ之これを士しと謂いふ可べきか。 |
子曰 | 子曰く、 |
切切偲偲、怡怡如也 | 切切偲偲怡怡如せつせつししいいじよたり、 |
可謂「士」矣 | 士しと謂いふ可べし |
朋友切切偲偲 | 朋友ほういうには切切偲偲せつせつししたり、 |
兄弟怡怡 | 兄弟きやうだいには怡怡いいたり |
13-29 | |
子曰 | 子曰く、 |
善人敎民七年 | 善人ぜんにん民たみを教をしふる七年ならば、 |
亦可以卽戎矣 | 亦また以もつて戎じゆうに卽つかしむ可べし。 |
13-30 | |
子曰 | 子曰く、 |
以不敎民戰 | 教をしへざる民たみを以もつて戦たゝかふは、 |
是謂棄之 | 是これ之これを棄すつと謂ふ。 |
憲問第十四:けんもん |
|
14-1 | |
憲問恥 | 憲けん恥はぢを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
邦有道穀 | 邦くに道みちあれば穀こくす。 |
邦無道穀 | 邦くに道みち無なくして穀こくするは |
恥也 | 恥はぢなり。 |
14-2 | |
克、伐、怨、欲 | 克こく伐ばつ怨ゑん欲よく |
不行焉 | 行おこなはれずんば、 |
可以爲仁矣 | 以もつて仁じんと為なす可べきか。 |
子曰 | 子曰く、 |
可以爲難矣 | 以もつて難かたしと為なすべし。 |
仁則吾不知也 | 仁じんは則すなはち吾われ知しらざるなり。 |
14-3 | |
子曰 | 子曰く、 |
士而懷居 | 士しにして居きよを懷おもへば、 |
不足以爲士矣 | 以もつて士しと為なすに足たらず。 |
14-4 | |
子曰 | 子曰く、 |
邦有道 | 邦くに道みちあれば、 |
危言危行 | 言げんを危あやふうし行おこなひを危あやふうす。 |
邦無道 | 邦くに道みちなければ、 |
危行言孫 | 行おこなひを危あやふうし言げんは孫したがふ。 |
14-5 | |
子曰 | 子曰く、 |
有德者 | 徳とくある者ものは、 |
必有言 | 必かならず言げんあり。 |
有言者 | 言げんある者ものは、 |
不必有德 | 必かならずしも徳とく有あらず。 |
仁者必有勇 | 仁者じんしやは必かならず勇ゆう有あり。 |
勇者不必有仁 | 勇者ゆうしやは必かならずしも仁じん有あらず。 |
14-6 | |
南宮适問於孔子 | 南宮适なんきうかつ孔子こうしに問とふ。 |
曰 | 曰いはく、 |
羿善射 | 羿げいは射しやを善よくし、 |
奡盪舟 | 奡がうは舟ふねを盪くつがへす、 |
俱不得其死然 | 俱ともに其その死然しぜんを得えず、 |
禹稷躬稼而 | 禹稷うしよく躬みづから稼かして、 |
有天下 | 天下てんかを有たもつと。 |
夫子不答 | 夫子ふうし答こたへず。 |
南宮适出 | 南宮适なんきうかつ出いづ。 |
子曰 | 子曰く、 |
君子哉若人 | 君子くんしなるかな若かくのごとき人ひと。 |
尙德哉若人 | 徳とくを尙たふとぶかな若かくのごとき人ひと。 |
14-7 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子而不仁者有矣夫 | 君子くんしにして不仁ふじんなる者もの有あらんか。 |
未有小人而仁者也 | 未いまだ小人せうじんにして仁じんなる者ものあらざるなり。 |
14-8 | |
子曰 | 子曰く、 |
愛之 | 之これを愛あいす、 |
能勿勞乎 | 能よく労らうせしむる勿なからんや。 |
忠焉 | 忠ちうす、 |
能勿誨乎 | 能よく誨をしふる勿なからんや。 |
14-9 | |
子曰 | 子曰く、 |
爲命 | 命めいを為つくる、 |
裨諶草創之 | 裨諶ひじん之これを草創さうさうし、 |
世叔討論之 | 世叔せいしゆく之これを討論たうろんし、 |
行人子羽修飾之 | 行人かうじん子羽しう之これを修飾しうしよくし、 |
東里子產潤色之 | 東里たうりの子産しさん之これを潤色じゆんしよくす。 |
14-10 | |
或問子產 | 或あるひと子産しさんを問とふ、 |
子曰 | 子曰く、 |
惠人也 | 恵人けいじんなり。 |
問子西 | 子西しせいを問とふ、 |
曰 | 曰く、 |
彼哉彼哉 | 彼かれをや彼かれをや。 |
問管仲 | 管仲くわんちうを問とふ、 |
曰 | 曰く、 |
人也 | 人ひとや、 |
奪伯氏騈邑三百 | 伯氏はくしの騈邑べんいう三百を奪うばひ、 |
飯疏食 | 疏食そしを飯くらひ、 |
沒齒 | 歯よはひを沒ぼつするまで、 |
無怨言 | 怨言ゑんげん無し。 |
14-11 | |
子曰 | 子曰く、 |
貧而無怨 | 貧ひんにして怨うらむるなきは |
難 | 難かたく、 |
富而無驕 | 富とみて驕おごるなきは |
易 | 易やすし。 |
14-12 | |
子曰 | 子曰く、 |
孟公綽 | 孟公綽まうこうしやくは、 |
爲趙、魏老則優 | 趙魏てうぎの老らうと為なれば則すなはち優いうなり、 |
不可以爲滕、薛大夫 | 以もつて滕薛とうせつの大夫たいふと為なす可べからざるなり。 |
14-13 | |
子路問成人 | 子路しろ成人せいじんを問とふ、 |
子曰 | 子曰く、 |
若臧武仲之知 | 臧武仲ざうぶちうの知ち、 |
公綽之不欲 | 公綽こうしやくの不欲ふよく、 |
卞莊子之勇 | 卞荘子べんさうしの勇ゆう、 |
冉求之藝 | 冉求ぜんきうの芸げいの若ごとくして、 |
文之以禮樂 | 之これを文かざるに礼楽れいがくを以もつてせば、 |
亦可以爲成人矣 | 亦また以もつて成人せいじんと為なす可べし。 |
曰 | 曰く、 |
今之成人者 | 今いまの成人せいじんは、 |
何必然 | 何なんぞ必かならずしも然しからん。 |
見利思義 | 利りを見みて義ぎを思おもひ、 |
見危授命 | 危あやふきを見みて命めいを授さづけ、 |
久要不忘平生之言 | 久要きうえう平生へいぜいの言げんを忘わすれずんば、 |
亦可以爲成人矣 | 亦また以もつて成人せいじんと為なすべし。 |
14-14 | |
子問公叔文子於公明賈 | 子し公叔文子こうしゆくぶんしを公明賈こうめいかに問とふ、 |
曰 | 曰く、 |
信乎 | 信まことなるか、 |
夫子不言不笑不取乎 | 夫子ふうし言いはず笑わらはず取とらざるか。 |
公明賈對曰 | 公明賈こうめいか対こたへて曰いはく、 |
以吿者過也 | 以もつて告つぐる者もの過あやまてるなり、 |
夫子時然後言 | 夫子ふうし時ときにして然しかる後のちに言いふ、 |
人不厭其言 | 人ひと其その言ふを厭いとはず。 |
樂然後笑 | 楽たのしみて然しかる後のちに笑わらふ、 |
人不厭其笑 | 人ひと其その笑わらひを厭いとはず。 |
義然後取 | 義ぎにして然しかる後のちに取とる、 |
人不厭其取 | 人ひと其その取とるを厭いとはず。 |
子曰 | 子曰く、 |
其然 | 其それ然しかり、 |
豈其然乎 | 豈あに其それ然しからんや。 |
14-15 | |
子曰 | 子曰く、 |
臧武仲以防 | 臧武仲ざうぶちうは防ばうを以もつて、 |
求爲後於魯 | 後のちを為なすを魯ろに求もとむ、 |
雖曰不要君 | 君きみを要えうせずと曰いふと雖いへども、 |
吾不信也 | 吾われ信しんぜざるなりと。 |
14-16 | |
子曰 | 子曰く、 |
晉文公譎而不正 | 晋しんの文公ぶんこうは譎いつはりて正ただしからず、 |
齊桓公正而不譎 | 斉せいの桓公くわんこうは正ただしうして譎いつはらず。 |
14-17 | |
子路曰 | 子路しろ曰いはく、 |
桓公殺公子糾 | 桓公くわんこう公子糾こうしきうを殺ころす、 |
召忽死之 | 召忽せうこつ之これに死しす、 |
管仲不死 | 管仲くわんちう死しせず、 |
曰 | 曰いはく、 |
未仁乎 | 未いまだ仁じんならざるか。 |
子曰 | 子曰く、 |
桓公九合諸侯 | 桓公くわんこう諸侯しよこうを九合きうがふするに、 |
不以兵車 | 兵車へいしやを以もつてせず、 |
管仲之力也 | 管仲くわんちうの力ちからなり、 |
如其仁 | 其その仁じんに如しかんや、 |
如其仁 | 其その仁じんに如しかんや。 |
14-18 | |
子貢曰 | 子貢しこう曰いはく、 |
管仲非仁者與 | 管仲くわんちうは仁者じんしやに非あらざるか、 |
桓公殺公子糾 | 桓公くわんこう公子糾こうしきうを殺ころす、 |
不能死 | 死しする能あたはず、 |
又相之 | 又また之これを相たすく。 |
子曰 | 子曰く、 |
管仲相桓公 | 管仲くわんちう桓公くわんこうを相たすけて、 |
霸諸侯 | 諸侯しよこうに霸はたらしめ、 |
一匡天下 | 天下てんかを一匡いつきようす。 |
民到于今受其賜 | 民たみ今いまに到いたるまで其その賜たまものを受うく。 |
微管仲 | 管仲くわんちう微なかりせば、 |
吾其被髮左衽矣 | 吾われ其それ髮かみを被かうむり衽じんを左ひだりにせん。 |
豈若匹夫匹婦之爲諒也 | 豈あに匹夫ひつぷ匹婦ひつぷの諒まことを為なす、 |
自經於溝瀆 | 自みづから溝瀆こうとくに經くびれて、 |
而莫之知也 | 之これを知しる莫なきが若ごとくならんや。 |
14-19 | |
公叔文子之臣大夫僎 | 公叔文子こうしゆくぶんしの臣しん大夫僎たいふせん、 |
與文子同升諸公 | 文子ぶんしと同おなじく公こうに升のぼる。 |
子聞之 | 子し之これを聞きき、 |
曰 | 曰く、 |
可以爲文矣 | 以もつて文ぶんと為なす可べし。 |
14-20 | |
子言衞靈公之無道也 | 子し衞ゑいの霊公れいこうの無道むだうを言いふ、 |
康子曰 | 康子かうし曰いはく、 |
夫如是 | 夫それ是かくの如ごとくんば、 |
奚而不喪 | 奚いづくんぞ喪ほろびざる。 |
孔子曰 | 孔子こうし曰く、 |
仲叔圉治賓客 | 仲叔圉ちうしゆくぎよ賓客ひんかくを治をさめ、 |
祝鮀治宗廟 | 祝鮀しゆくだ宗廟そうべうを治をさめ、 |
王孫賈治軍旅 | 王孫賈わうそんか軍旅ぐんりよを治をさむ、 |
夫如是 | 夫それ是かくの如ごとし、 |
奚其喪 | 奚いづくんぞ其それ喪ほろびん。 |
14-21 | |
子曰 | 子曰く、 |
其言之不怍 | 其その之これを言いうて怍はぢず、 |
則爲之也難 | 則すなはち之これを為なす難かたし。 |
14-22 | |
陳成子弒簡公 | 陳成子ちんせいし簡公かんこうを弒しいす。 |
孔子沐浴而朝 | 孔子こうし沐浴もくよくして朝てうし、 |
吿於哀公 | 哀公あいこうに告つげて、 |
曰 | 曰く、 |
陳恆弒其君 | 陳恆ちんこう其その君きみを弑しいす、 |
請討之 | 請こふ之これを討うたん。 |
公曰 | 公こう曰いはく、 |
吿夫三子 | 夫かの三子さんしに告つげよ、 |
孔子曰 | 孔子こうし曰く、 |
以吾從大夫之後 | 吾われ大夫たいふの後しりへに從したがふを以もつて、 |
不敢不吿也 | 敢あへて告つげずんばあらず。 |
君曰 | 君きみ曰いはく、 |
「吿夫三子」者 | 夫かの三子者さんししやに告つげよと。 |
之三子吿 | 三子さんしに之ゆきて告つぐ。 |
不可 | 可きかず。 |
孔子曰 | 孔子こうし曰のたまはく、 |
以吾從大夫之後 | 吾われ大夫たいふの後しりへに從したがふを以もつて、 |
不敢不吿也 | 敢あへて告つげずんばあらざるなり。 |
14-23 | |
子路問事君 | 子路しろ君きみに事つかふるを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
勿欺也 | 欺く勿れ、 |
而犯之 | 而して之を犯おかせ。 |
14-24 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子上達 | 君子くんしは上達じようたつし、 |
小人下達 | 小人せうじんは下達かたつす。 |
14-25 | |
子曰 | 子曰く、 |
古之學者爲己 | 古いにしへの学者がくしやは己おのれの為ためにし、 |
今之學者爲人 | 今いまの学者がくしやは人ひとの為ためにす。 |
14-26 | |
蘧伯玉使人於孔子 | 蘧伯玉きよはくぎよく人ひとを孔子こうしに使つかひす。 |
孔子與之坐而問焉 | 孔子こうし之これと坐ざして問とふ、 |
曰 | 曰く、 |
夫子何爲 | 夫子ふうし何なにをか為なす。 |
對曰 | 対こたへて曰いはく、 |
夫子欲寡其過而 | 夫子ふうし其その過あやまちを寡すくなくせんと欲ほつして、 |
未能也 | 未いまだ能あたはざるなりと。 |
使者出 | 使者ししや出いづ。 |
子曰 | 子曰く、 |
使乎 | 使つかひなるかな、 |
使乎 | 使つかひなるかな。 |
14-27 | |
子曰 | 子曰く、 |
不在其位 | 其その位くらゐに在あらざれば、 |
不謀其政 | 其その政まつりごとを謀はからず。 |
14-28 | |
曾子曰 | 曾子そうし曰いはく、 |
君子思不出其位 | 君子くんしは思おもふこと其その位くらゐを出いでず。 |
14-29 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子恥其言而過其行 | 君子くんしは其その言げんの其その行おこなひに過すぐるを恥はづるなり。 |
14-30 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子道者三 | 君子くんしの道みちなる者もの三さん、 |
我無能焉 | 我われ能よくする無なし、 |
仁者不憂 | 仁者じんしやは憂うれへず、 |
知者不惑 | 知者ちしやは惑まどはず、 |
勇者不懼 | 勇者ゆうしやは懼おそれず。 |
子貢曰 | 子貢しこう曰いはく、 |
夫子自道也 | 夫子ふうし自みづから道いふなり。 |
14-31 | |
子貢方人 | 子貢しこう人ひとを方たくらぶ。 |
子曰 | 子曰く、 |
賜也 | 賜しや |
賢乎哉 | 賢けんなるかな、 |
夫我則不暇 | 夫それ我われは則すなはち暇いとまあらず。 |
14-32 | |
子曰 | 子曰く、 |
不患人之不己知 | 人ひとの己おのれを知しらざるを患うれへず、 |
患其不能也 | 其の能あたはざるを患うれふ。 |
14-33 | |
子曰 | 子曰く、 |
不逆詐 | 詐いつはりを逆むかへず、 |
不億不信 | 不信ふしんを億おもんばからず、 |
抑亦先覺者 | 抑々そもそも亦また先覚せんかくする者ものは |
是賢乎 | 是これ賢けんか |
14-34 | |
微生畝謂孔子曰 | 微生畝びせいほ孔子こうしに謂いひて曰いはく、 |
丘 | 丘きう |
何爲是栖栖者與 | 何なんぞ是この栖栖せいせいたる者ものを為なす、 |
無乃爲佞也乎 | 乃すなはち佞ねいを為なす無なからんか |
孔子曰 | 孔子こうし曰く、 |
非敢爲佞也 | 敢あへて佞ねいを為なすに非あらざるなり、 |
疾固也 | 固こを疾にくめばなり |
14-35 | |
子曰 | 子曰く、 |
驥不稱其力 | 驥きはその力ちからを称しようせず、 |
稱其德也 | 其その徳とくを称しようするなり。 |
14-36 | |
或曰 | 或あるひと曰いはく、 |
以德報怨 | 徳とくを以もつて怨うらみに報むくいば、 |
何如 | 如何いかんと。 |
子曰 | 子曰く、 |
何以報德 | 何なにを以もつて徳とくに報むくいん。 |
以直報怨 | 直ちよくを以もつて怨うらみに報むくい、 |
以德報德 | 徳とくを以もつて徳とくに報むくいん。 |
14-37 | |
子曰 | 子曰く、 |
莫我知也夫 | 我われを知しる莫なきか、 |
子貢曰 | 子貢しこう曰いはく、 |
何爲其莫知子也 | 何なんぞ其それ子しを知しる莫なしと為なす。 |
子曰 | 子曰く、 |
不怨天 | 天てんを怨うらみず、 |
不尤人 | 人ひとを尤とがめず、 |
下學而上達 | 下学かがくして上達じようたつす、 |
知我者 | 我われを知しる者ものは |
其天乎 | 其それ天てんか。 |
14-38 | |
公伯寮愬子路於季孫 | 公伯寮こうはくれう子路しろを季孫きそんに愬うつたふ。 |
子服景伯以吿 | 子服景伯しふくけいはく以もつて告つぐ。 |
曰 | 曰く、 |
夫子固有惑志於公伯寮 | 夫子ふうし固もとより公伯寮こうはくれうに惑志わくし有あり、 |
吾力猶能肆諸市朝 | 吾わが力ちから猶なほ能よく諸これを市朝してうに肆さらさん。 |
子曰 | 子曰く、 |
道之將行也與命也 | 道みちの将まさに行おこなはれんとするや命めいなり、 |
道之將廢也與命也 | 道みちの将に廃すたれんとするや命めいなり、 |
公伯寮其如命何 | 公伯寮こうはくれう其それ命めいを何如いかにせん。 |
14-39 | |
子曰 | 子曰く、 |
賢者辟世 | 賢者けんじやは世よを辟さく、 |
其次辟地 | 其その次つぎは地ちを辟さく、 |
其次辟色 | 其その次つぎは色いろを辟さく、 |
其次辟言 | 其その次つぎは言げんを辟さく。 |
14-40 | |
子曰 | 子曰く、 |
作者七人矣 | 作たつ者もの七人しちにん。 |
14-41 | |
子路宿於石門 | 子路しろ石門せきもんに宿しゆくす。 |
晨門曰 | 晨門しんもん曰く、 |
奚自 | 奚いづれよりすと。 |
子路曰 | 子路しろ曰いはく、 |
自孔氏 | 孔氏こうしよりす。 |
曰 | 曰いはく、 |
是知其不可而爲之者與 | 是これ其その不可ふかを知しりて之これを為なす者か。 |
14-42 | |
子擊磬於衞 | 子し磬けいを衞ゑいに擊うつ。 |
有荷蕢者而過孔氏之門者 | 蕢きを荷になひて孔氏こうしの門もんを過すぐる者もの有あり、 |
曰 | 曰いはく、 |
有心哉 | 心こゝろ有あるかな |
擊磬乎 | 磬けいを擊うつや。 |
既而曰 | 既すでにして曰く、 |
鄙哉 | 鄙ひなる哉かな |
硜硜乎 | 硜硜乎こうこうこたり、 |
莫己知也 | 己おのれを知しる莫なきなり、 |
斯已而已矣 | 斯これ已やまんのみ、 |
「深則厲 | 深ふかければ則すなはち厲れいし、 |
淺則揭」 | 淺あさければ則ち揭けいす |
子曰 | 子曰く、 |
果哉 | 果くわなるかな、 |
末之難矣 | 之これ難かたき末なし |
14-43 | |
子張曰 | 子張しちやう曰いはく、 |
書云 | 書しよに云ふ、 |
「高宗諒陰 | 高宗かうそう諒陰りやうゐん |
三年不言」 | 三年さんねん言ものいはずと、 |
何謂也 | 何なんの謂いひぞ。 |
子曰 | 子曰く、 |
何必高宗 | 何なんぞ必かならずしも高宗かうそうのみならん、 |
古之人皆然 | 古いにしへの人ひと皆みな然しかり、 |
君薨 | 君きみ薨こうずれば |
百官總己 | 百官ひやくくわん己おのれを總すべて、 |
以聽於冢宰 | 以もつて冢宰ちようさいに聴きくこと |
三年 | 三年さんねんなり。 |
14-44 | |
子曰 | 子曰く、 |
上好禮 | 上かみ礼れいを好このめば、 |
則民易使也 | 民たみ使つかひ易やすし。 |
14-45 | |
子路問君子 | 子路しろ君子くんしを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
修己以敬 | 己おのれを脩をさめて以もつて敬けいす。 |
曰 | 曰く、 |
如斯而已乎 | 斯かくの如ごときのみか。 |
曰 | 曰く、 |
修己以安人 | 己おのれを脩をさめて以もつて人ひとを安やすんず。 |
曰 | 曰いはく、 |
如斯而已乎 | 斯かくの如ごときのみか。 |
曰 | 曰く、 |
修己以安百姓 | 己おのれを脩をさめて以もつて百姓ひやくせいを安やすんず。 |
修己以安百姓 | 己を脩めて以て百姓を安んずるは、 |
堯舜其猶病諸 | 堯舜げうしゆんも其それ猶なほ諸これを病やめり。 |
14-46 | |
原壤夷俟 | 原壤げんじやう夷いして俟まつ。 |
子曰 | 子曰く、 |
幼而不孫弟 | 幼えうにして孫弟そんていならず、 |
長而無述焉 | 長ちやうじて述のぶる無なく、 |
老而不死 | 老おいて死しせず、 |
是爲賊 | 是これを賊ぞくと為なすと。 |
以杖叩其脛 | 杖つゑを以もつて其その脛けいを叩うてり。 |
14-47 | |
闕黨童子將命 | 闕党けつたうの童子どうじ命めいを将おこなふ。 |
或問之 | 或あるひと之これを問とうて、 |
曰 | 曰いはく、 |
益者與 | 益えきする者ものか。 |
子曰 | 子曰く、 |
吾見其居於位也 | 吾われ其その位くらゐに居をるを見みる、 |
見其與先生竝行也 | 其その先生せんせいと並ならび行ゆくを見みる、 |
非求益者也 | 益えきを求もとむる者ものに非あらざるなり、 |
欲速成者也 | 速すみやかに成ならんと欲ほつする者ものなり。 |
衞靈公第十五:えいれいこう |
|
15-1 | |
衞靈公問陳於孔子 | 衞ゑいの霊公れいこう陳ちんを孔子こうしに問とふ。 |
孔子對曰 | 孔子こうし対こたへて曰く、 |
俎豆之事 | 俎豆そとうの事ことは |
則嘗聞之矣 | 則すなはち嘗かつて之これを聞きけり、 |
軍旅之事 | 軍旅ぐんりよの事ことは |
未之學也 | 未いまだ之これを学まなばざるなりと。 |
明日遂行 | 明日みやうにち遂つひに行さる。 |
在陳絕糧 | 陳ちんに在ありて糧りやうを絶たつ。 |
從者病 | 從者じゆうしや病やみ、 |
莫能興 | 能よく興たつ莫なし。 |
子路慍見曰 | 子路しろ慍うらみ見みて曰いはく、 |
君子亦有窮乎 | 君子くんしも亦また窮きうする有あるか。 |
子曰 | 子曰く、 |
君子固窮 | 君子くんし固もとより窮きうす、 |
小人窮斯濫矣 | 小人せうじん窮きうすれば斯こゝに濫らんす。 |
15-2 | |
子曰 | 子し曰く、 |
賜也 | 賜しや、 |
女以予爲多學而識之者與 | 女なんぢ予よを以もつて多おほく学まなんで之これを識しる者ものと為なすか。 |
對曰 | 対こたへて曰いはく、 |
然 | 然しかり、 |
非與 | 非ひなるか。 |
曰 | 曰く、 |
非也 | 非ひなり、 |
予一以貫之 | 予われ一いつ以もつて之これを貫つらぬく。 |
15-3 | |
子曰 | 子し曰く、 |
由 | 由いう、 |
知德者鮮矣 | 徳とくを知しる者ものは鮮すくなし。 |
15-4 | |
子曰 | 子し曰く、 |
無爲而治者 | 無為むゐにして治をさまる者ものは |
其舜也與 | 其それ舜しゆんか、 |
夫何爲哉 | 夫それ何なにを為なさんや、 |
恭己正南面而已矣 | 己おのれを恭うやうやしくし正ただしく南面なんめんするのみ |
15-5 | |
子張問行 | 子張しちやう行おこなはるゝを問とふ。 |
子曰 | 子し曰く、 |
言忠信 | 言げん忠信ちうしん、 |
行篤敬 | 行おこなひ篤敬とくけいならば、 |
雖蠻貊之邦行矣 | 蛮貊ばんぱくの邦くにと雖いへども行おこなはれん。 |
言不忠信 | 言げん忠信ちうしんならず、 |
行不篤敬 | 行おこなひ篤敬とくけいならずんば、 |
雖州里行乎哉 | 州里と雖も行はれんや。 |
立 | 立てば |
則見其參於前也 | 則すなはち其前そのまへに參さんたるを見み、 |
在輿 | 輿よに在ありては、 |
則見其倚於衡也 | 則すなはち其衡そのかうに倚よる見みる、 |
夫然後行 | 夫それ然しかる後のちに行おこなはれん。 |
子張書諸紳 | 子張しちやう諸これを紳しんに書しよす。 |
15-6 | |
子曰 | 子し曰く、 |
直哉史魚 | 直ちよくなるかな史魚しぎよ、 |
邦有道如矢 | 邦くに道みち有あれば矢やの如ごとく、 |
邦無道如矢 | 邦くに道みち無なきも矢やの如ごとし。 |
君子哉蘧伯玉 | 君子くんしなるかな蘧伯玉きよはくぎよく、 |
邦有道 | 邦くに道みち有あれば、 |
則仕 | 則すなはち仕つかえ、 |
邦無道 | 邦くに道みち無なければ、 |
則可卷而懷之 | 則すなはち卷まいて之を懷ふところにす可べし。 |
15-7 | |
子曰 | 子し曰く、 |
可與言 | 与ともに言ふ可べくして、 |
而不與之言 | 而して之と与ともに言いはざれば、 |
失人 | 人ひとを失うしなふ、 |
不可與言 | 与ともに言いふ可べからずして、 |
而與之言 | 而して之と与ともに言いへば、 |
失言 | 言げんを失うしなふ。 |
知者不失人 | 知者ちしやは人ひとを失うしなはず、 |
亦不失言 | 亦また言げんを失うしなはず。 |
15-8 | |
子曰 | 子し曰く、 |
志士仁人 | 志士しし仁人じんじんは、 |
無求生以害仁 | 生せいを求もとめて以もつて仁じんを害がいすること無なし、 |
有殺身以成仁 | 身みを殺ころして以もつて仁じんを成なす有あり。 |
15-9 | |
子貢問爲仁 | 子貢しこう仁じんを為なすを問とふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
工欲善其事 | 工こう其事そのことを善よくせんと欲ほつせば、 |
必先利其器 | 必かならず先まづ其器そのきを利りにす。 |
居是邦也 | 是この邦くにに居をるや、 |
事其大夫之賢者 | 其その大夫たいふの賢者けんしやに事つかへ、 |
友其士之仁者 | 其士そのしの仁者じんしやを友ともとす。 |
15-10 | |
顏淵問爲邦 | 顏淵がんゑん邦くにを為をさむるを問とふ。 |
子曰 | 子し曰く、 |
行夏之時 | 夏かの時ときを行おこなひ、 |
乘殷之輅 | 殷いんの輅ろに乗のり、 |
服周之冕 | 周しうの冕べんを服ふくし、 |
樂則韶舞 | 楽がくは則すなはち韶舞せうぶし、 |
放鄭聲 | 鄭聲ていせいを放はなち、 |
遠佞人 | 佞人ねいじんを遠とほざけよ。 |
鄭聲淫 | 鄭聲ていせいは淫いんに、 |
佞人殆 | 佞人ねいじんは殆あやふし。 |
15-11 | |
子曰 | 子曰く、 |
人無遠慮 | 人ひと遠とほき慮おもんばかり無なければ、 |
必有近憂 | 必かならず近ちかき憂うれひあり。 |
15-12 | |
子曰 | 子曰く、 |
已矣乎 | 已やんぬるかな、 |
吾未見好德如好色者也 | 吾われ未いまだ徳とくを好このむこと色いろを好このむが如ごとくする者ものを見みざるなり。 |
15-13 | |
子曰 | 子曰く、 |
臧文仲 | 臧文仲ざうぶんちうは |
其竊位者與 | 其それ位くらゐを窃ぬすむものか、 |
知柳下惠之賢 | 柳下恵りうかけいの賢けんを知しりて、 |
而不與立也 | 而も与ともに立たたざるなり。 |
15-14 | |
子曰 | 子曰く、 |
躬自厚 | 躬み自みづから厚あつくして、 |
而薄責於人 | 薄うすく人ひとを責せむれば、 |
則遠怨矣 | 則すなはち怨うらみに遠とおざかる。 |
15-15 | |
子曰 | 子曰く、 |
不曰「如之何 | 之これを如何いかにせん、 |
如之何」者 | 之これを如何いかにせんと曰いはざるものは、 |
吾末如之何也已矣 | 吾われ之これを如何いかんともする末なきのみ。 |
15-16 | |
子曰 | 子曰く、 |
群居終日 | 羣居ぐんきよ終日しゆうじつ、 |
言不及義 | 言げん義ぎに及およばず、 |
好行小慧 | 好このんで小慧せうけいを行おこなふ、 |
難矣哉 | 難かたいかな。 |
15-17 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子義以爲質 | 君子くんしは義ぎ以もつて質しつと為なし、 |
禮以行之 | 礼れい以もつて之これを行おこなひ、 |
孫以出之 | 孫そん以もつて之これを出いだし、 |
信以成之 | 信しん以もつて之これを成なす、 |
君子哉 | 君子くんしなるかな。 |
15-18 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子病無能焉 | 君子くんしは能のうなきを病やむ、 |
不病人之不己知也 | 人ひとの己おのれを知しらざるを病やまざるなり。 |
15-19 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子疾沒世而名不稱焉 | 君子くんしは世よを沒ぼつして名な称しようせられざるを疾にくむ。 |
15-20 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子求諸己 | 君子くんしは諸これを己おのれに求もとめ、 |
小人求諸人 | 小人せうじんは諸これを人ひとに求もとむ。 |
15-21 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子矜而不爭 | 君子くんしは矜つゝしみて争あらそはず、 |
群而不黨 | 羣ぐんして党たうせず。 |
15-22 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子不以言擧人 | 君子くんしは言げんを以もつて人ひとを挙あげず、 |
不以人廢言 | 人ひとを以もつて言げんを廃はいせず。 |
15-23 | |
子貢問 | 子貢しこう問とふ、 |
曰 | 曰いはく、 |
有一言而可以終身行之者乎 | 一言いちげんにして以もつて終身しゆうしん之これを行おこなふ可べき者もの有ありや。 |
子曰 | 子曰く、 |
其恕乎 | 其それ恕じよか、 |
己所不欲 | 己おのれの欲ほつせざる所ところは |
勿施於人 | 人ひとに施ほどこすこと勿なかれ。 |
15-24 | |
子曰 | 子曰く、 |
吾之於人也 | 吾われの人ひとに於おける、 |
誰毀誰譽 | 誰たれをか毀そしり誰たれをか譽ほめん、 |
如有所譽者 | 如もし譽ほむる所ところの者あらば、 |
其有所試矣 | 其それ試こころみる所ところ有あらん。 |
斯民也 | 斯この民たみや、 |
三代之所以直道而行也 | 三代さんだいの直道ちよくだうにして行おこなふ所以ゆゑんなり。 |
15-25 | |
子曰 | 子曰く、 |
吾猶及史之闕文也 | 吾われ猶なほ史しの闕文けつぶんに及およぶ、 |
有馬者 | 馬うま有ある者ものは、 |
借人乘之 | 人ひとに借かして之これに乗のらしむ、 |
今亡矣夫 | 今いまは亡なきかな。 |
15-26 | |
子曰 | 子曰く、 |
巧言亂德 | 巧言かうげんは徳とくを乱みだる。 |
小不忍 | 小せう忍しのびざれば、 |
則亂大謀 | 則すなはち大謀たいばうを乱みだる。 |
15-27 | |
子曰 | 子曰く、 |
衆惡之 | 衆しう之これを悪にくむも、 |
必察焉 | 必かならず察さつし、 |
衆好之 | 衆しう之これを好このむも、 |
必察焉 | 必かならず察さつす。 |
15-28 | |
子曰 | 子曰く、 |
人能弘道 | 人ひと能よく道みちを弘ひろむ、 |
非道弘人 | 道みち人ひとを弘ひろむるに非あらざるなり。 |
15-29 | |
子曰 | 子曰く、 |
過而不改 | 過あやまつて改あらためざるは、 |
是謂過矣 | 是これを過あやまちと謂いふ。 |
15-30 | |
子曰 | 子曰く、 |
吾嘗終日不食 | 吾われ嘗かつて終日しゆうじつ食くらはず、 |
終夜不寑 | 終夜しゆうや寝いねずして、 |
以思 | 以もつて思おもへり、 |
無益 | 益えきなし、 |
不如學也 | 学まなぶに如しかざるなり。 |
15-31 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子謀道不謀食 | 君子くんしは道みちを謀はかりて食しよくを謀はからず、 |
耕也 | 耕たがやすや、 |
餒在其中矣 | 餒うゑ其中そのうちに在あり、 |
學也 | 学まなぶや、 |
祿在其中矣 | 禄ろく其中そのうちに在あり、 |
君子憂道 | 君子くんしは道みちを憂うれへ、 |
不憂貧 | 貧ひんを憂うれへず。 |
15-32 | |
子曰 | 子曰く、 |
知及之 | 知ち之これに及およべども、 |
仁不能守之 | 仁じん之これを守まもる能あたはざれば、 |
雖得之 | 之これを得うると雖いへども、 |
必失之 | 必かならず之これを失うしなふ。 |
知及之 | 知ち之これに及および、 |
仁能守之 | 仁じん能よく之これを守まもるも、 |
不莊以蒞之 | 荘さう以もつて之これに蒞のぞまざれば、 |
則民不敬 | 則すなはち民たみ敬けいせず。 |
知及之 | 知ち之これに及び、 |
仁能守之 | 仁じん能よく之これを守まもり、 |
莊以蒞之 | 荘さう以て之に蒞のぞめども、 |
動之不以禮 | 之これを動うごかすに礼れいを以もつてせざれば、 |
未善也 | 未いまだ善よからざるなり。 |
15-33 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子不可小知 | 君子くんしは小知せうちす可べからず、 |
而可大受也 | 而して大受たいじゆせしむ可べきなり。 |
小人不可大受 | 小人せうじんは大受たいじゆせしむ可べからず、 |
而可小知也 | 而して小知せうちす可べきなり。 |
15-34 | |
子曰 | 子曰く、 |
民之於仁也 | 民たみの仁じんに於おけるや、 |
甚於水火 | 水火すゐくわより甚はなはだし。 |
水火 | 水火すゐくわは |
吾見蹈而死者矣 | 吾われ蹈ふんで死しする者ものを見みる、 |
未見蹈仁而死者也 | 未いまだ仁じんを蹈ふんで死しする者ものを見みざるなり。 |
15-35 | |
子曰 | 子曰く、 |
當仁 | 仁じんに當あたつては |
不讓於師 | 師しに讓ゆずらず。 |
15-36 | |
子曰 | 子曰く、 |
君子貞而不諒 | 君子くんしは貞ていにして諒まことならず。 |
15-37 | |
子曰 | 子曰く、 |
事君敬其事 | 君きみに事つかへて其事そのことを敬けいし、 |
而後其食 | 而して其食そのしよくを後のちにす。 |
15-38 | |
子曰 | 子曰く、 |
有敎無類 | 教をしへ有ありて類るゐなし。 |
15-39 | |
子曰 | 子曰く、 |
道不同 | 道みち同おなじからざれば、 |
不相爲謀 | 相あひ為ために謀はからず。 |
15-40 | |
子曰 | 子曰く、 |
辭 | 辞じは |
達而已矣 | 達たつするのみ。 |
15-41 | |
師冕見 | 師し冕べん見まみゆ、 |
及階 | 階かいに及およぶ。 |
子曰 | 子曰く、 |
階也 | 階かいなり。 |
及席 | 席せきに及およぶ。 |
子曰 | 子曰く、 |
席也 | 席せきなり。 |
皆坐 | 皆みな坐ざす。 |
子吿之曰 | 子し之これに告つげて曰く、 |
某在斯 | 某ぼうは斯こゝに在あり、 |
某在斯 | 某は斯に在り。 |
師冕出 | 師し冕べん出いづ。 |
子張問曰 | 子張しちやう問とうて曰いはく、 |
與師言之道與 | 師しと言いふの道みちか。 |
子曰 | 子曰く、 |
然 | 然しかり、 |
固相師之道也 | 固もとより師しを相たすくるの道みちなり。 |
季氏第十六:きし |
|
16-1 | |
季氏將伐顓臾 | 季氏きし将まさに顓臾せんゆを伐うたんとす。 |
冉有季路 | 冉有ぜんいう・季路きろ、 |
見於孔子 | 孔子こうしに見まみえて、 |
曰 | 曰いはく、 |
季氏將有事於顓臾 | 季氏きし将まさに顓臾せんゆに事こと有あらんとす。 |
孔子曰 | 孔子こうし曰く、 |
求 | 求きう |
無乃爾是過與 | 乃すなはち爾なんぢ是これ過あやまつ無なきか。 |
夫顓臾 | 夫それ顓臾せんゆは、 |
昔者先王以爲東蒙主 | 昔むかし先王せんわう以もつて東蒙とうもうの主しゆと為なす、 |
且在邦域之中矣 | 且かつ邦域はうゐきの中うちに在あり、 |
是社稷之臣也 | 是これ社稷しやしよくの臣しんなり、 |
何以伐爲 | 何なんぞ伐うつを以もつて為せん。 |
冉有曰 | 冉有ぜんいう曰いはく、 |
夫子欲之 | 夫子ふうし之これを欲ほつす、 |
吾二臣者 | 吾われ二臣にしんの者ものは |
皆不欲也 | 皆みな欲ほつせざるなり。 |
孔子曰 | 孔子こうし曰く、 |
求 | 求きう、 |
周任有言曰 | 周任しうにん言いへる有あり、 |
「陳力就列 | 曰いはく力ちからを陳のべて、列れつに就つく、 |
不能者止」 | 能あたはざれば止やむと。 |
危而不持 | 危あやふくして持ぢせず、 |
顚而不扶 | 顚てんして扶たすけずんば、 |
則將焉用彼相矣 | 則すなはち将また焉いづくんぞ彼かの相しやうを用もちひん。 |
且爾言過矣 | 且かつ爾なんぢの言げん過あやまてり。 |
虎兕出於柙 | 虎兕こじ柙をりより出いで、 |
龜玉毀於櫝中 | 亀玉きぎよく櫝中とくちうに毀やぶれば、 |
是誰之過與 | 是これ誰たれの過あやまちか。 |
冉有曰 | 冉有ぜんいう曰いはく、 |
今夫顓臾 | 今いま夫かの顓臾せんゆは、 |
固而近於費 | 固かたくして費ひに近ちかし、 |
今不取 | 今いま取とらざれば、 |
後世必爲子孫憂 | 後世こうせい必かならず子孫しそんの憂うれへを為なさん。 |
孔子曰 | 孔子曰く、 |
求 | 求きう、 |
君子疾夫舍曰欲之而 | 君子くんしは夫かの之これを欲ほつすと曰いふを舍おいて、 |
必爲之辭 | 必かならず之これが辞じを為なすを疾にくむ。 |
丘也聞 | 丘きうや聞きく、 |
有國有家者 | 国くにを有たもち家いへを有たもつ者ものは、 |
不患寡而患不均 | 寡すくなきを患うれへずして、均ひとしからざるを憂うれふ、 |
不患貧而患不安 | 貧ひんを患うれへずして、安やすからざるを患うれふ。 |
蓋均無貧 | 蓋けだし均ひとしければ貧まづしきこと無なく、 |
和無寡 | 和わすれば寡すくなきこと無なく、 |
安無傾 | 安やすければ傾かたむくこと無なし。 |
夫如是 | 夫それ是かくの如ごとし。 |
故遠人不服 | 故ゆゑに遠人ゑんじん服ふくせざれば、 |
則修文德以來之 | 則すなはち文徳ぶんとくを脩をさめて以もつて之これを来きたす。 |
既來之 | 既すでに之これを来きたせば、 |
則安之 | 則すなはち之これを安やすんず。 |
今由與求也 | 今いま由いうと求きうと、 |
相夫子 | 夫子ふうしを相たすけ、 |
遠人不服而不能來也 | 遠人ゑんじん服ふくせずして来きたす能あたはざるなり。 |
邦分崩離析而 | 邦くに分崩ぶんほう離析りせきして、 |
不能守也 | 守まもる能あたはざるなり。 |
而謀動干戈於邦內 | 而して干戈かんくわを邦内はうないに動うごかすを謀はかる。 |
吾 | 吾われ、 |
恐季孫之憂 | 季孫きそんの憂うれへ、 |
不在顓臾 | 顓臾せんゆに在あらずして、 |
而在蕭牆之內也 | 而して蕭牆せうしやうの内うちに在あるを恐おそる。 |
16-2 | |
孔子曰 | 孔子曰く、 |
天下有道 | 天下てんか道みち有あれば、 |
則禮樂征伐自天子出 | 則すなはち礼楽れいがく征伐せいばつ天子てんしより出いで、 |
天下無道 | 天下てんか道みち無なければ、 |
則禮樂征伐自諸侯出 | 則すなはち礼楽れいがく征伐せいばつ諸侯しよこうより出いづ。 |
自諸侯出 | 諸侯しよこうより出いづれば、 |
蓋十世希不失矣 | 蓋けだし十世失うしなはざるは希まれなり。 |
自大夫出 | 大夫たいふより出いづれば、 |
五世希不失矣 | 五世失うしなはざるは希まれなり。 |
陪臣執國命 | 陪臣ばいしん国命こくめいを執とれば、 |
三世希不失矣 | 三世失うしなはざるは希まれなり。 |
天下有道 | 天下てんか道みちあれば、 |
則政不在大夫 | 則すなはち政まつりごと大夫たいふに在あらず、 |
天下有道 | 天下てんか道みち有あれば、 |
則庶人不議 | 則すなはち庶人しよじん議ぎせず。 |
16-3 | |
孔子曰 | 孔子曰く、 |
祿之去公室五世矣 | 禄ろくの公室こうしつを去さること五世、 |
政逮於大夫四世矣 | 政まつりごと大夫たいふに逮およぶこと四世しせい、 |
故夫三桓之子孫 | 故ゆゑに夫かの三桓さんくわんの子孫しそん |
微矣 | 微びなり。 |
16-4 | |
孔子曰 | 孔子曰く、 |
益者三友 | 益者三友えきしやさんいう、 |
損者三友 | 損者三友そんしやさんいう、 |
友直 | 直ちよくを友ともとし、 |
友諒 | 諒りやうを友ともとし、 |
友多聞 | 多聞たぶんを友ともとするは |
益矣 | 益えきなり、 |
友便辟 | 便辟べんべきを友ともとし、 |
友善柔 | 善柔ぜんじうを友ともとし、 |
友便佞 | 便佞べんねいを友ともとするは |
損矣 | 損そんなり。 |
16-5 | |
孔子曰 | 孔子曰く、 |
益者三樂 | 益者三楽えきしやさんらく、 |
損者三樂 | 損者三楽そんしやさんらく、 |
樂節禮樂 | 礼楽れいがくを節せつするを楽たのしみ、 |
樂道人之善 | 人ひとの善ぜんを道いふを楽たのしみ、 |
樂多賢友 | 賢友けんいう多おほきを楽たのしむは |
益矣 | 益えきなり、 |
樂驕樂 | 驕楽けうらくを楽たのしみ、 |
樂佚遊 | 佚遊いついうを楽たのしみ、 |
樂宴樂 | 宴楽えんらくを楽たのしむは |
損矣 | 損そんなり。 |
16-6 | |
孔子曰 | 孔子曰く、 |
侍於君子 | 君子くんしに侍じするに、 |
有三愆 | 三愆さんげんあり、 |
言未及之而言 | 言げん未いまだ之これに及およばずして言いふ、 |
謂之躁 | 之これを躁さうと謂いふ、 |
言及之而不言 | 言げん之これに及およんで言いはざる、 |
謂之隱 | 之これを隱いんと謂いふ、 |
未見顏色而言 | 未いまだ顏色がんしよくを見みずして言いふ、 |
謂之瞽 | 之これを瞽こと謂いふ。 |
16-7 | |
孔子曰 | 孔子曰く、 |
君子有三戒 | 君子くんしに三戒さんかい有あり、 |
少之時 | 少わかき時ときは、 |
血氣未定 | 血気けつき未いまだ定さだまらず、 |
戒之在色 | 之これを戒いましむる色いろに在あり、 |
及其壯也 | 其その壮さうなるに及およんでや、 |
血氣方剛 | 血気けつき方まさに剛がうなり、 |
戒之在鬭 | 之これを戒いましむる闘たうに在あり、 |
及其老也 | 其その老おゆるに及およんでや、 |
血氣既衰 | 血気けつき既すでに衰おとろふ、 |
戒之在得 | 之これを戒いましむる得うるにあり。 |
16-8 | |
孔子曰 | 孔子曰く、 |
君子有三畏 | 君子くんしに三畏さんゐ有あり、 |
畏天命 | 天命てんめいを畏おそれ、 |
畏大人 | 大人たいじんを畏おそれ、 |
畏聖人之言 | 聖人せいじんの言げんを畏おそる。 |
小人不知天命而 | 小人せうじんは天命てんめいを知しらずして、 |
不畏也 | 畏おそれざるなり。 |
狎大人 | 大人たいじんに狎なれ、 |
侮聖人之言 | 聖人せいじんの言げんを侮あなどる。 |
16-9 | |
孔子曰 | 孔子曰く、 |
生而知之者 | 生うまれながらにして之これを知しる者ものは、 |
上也 | 上かみなり、 |
學而知之者 | 学まなんで之これを知しる者ものは、 |
次也 | 次つぎなり、 |
困而學之 | 困くるしんで之これを学まなぶは、 |
又其次也 | 又また其その次つぎなり、 |
困而不學 | 困くるしんで学まなばざるは、 |
民斯爲下矣 | 民たみ斯これを下しもと為なす。 |
16-10 | |
孔子曰 | 孔子曰く、 |
君子有九思 | 君子くんしに九思きうし有あり、 |
視思明 | 視しは明めいを思おもひ、 |
聽思聰 | 聴ていは聰そうを思おもひ、 |
色思溫 | 色いろは温をんを思ひ、 |
貌思恭 | 貌かたちは恭きようを思ひ、 |
言思忠 | 言げんは忠ちうを思ひ、 |
事思敬 | 事ことは敬けいを思ひ、 |
疑思問 | 疑うたがひは問もんを思ひ、 |
忿思難 | 忿いかりは難なんを思ひ、 |
見得思義 | 得うるを見ては義ぎを思おもふ。 |
16-11 | |
孔子曰 | 孔子曰く、 |
「見善如不及 | 善ぜんを見みては及およばざるが如ごとくし、 |
見不善如探湯」 | 不善ふぜんを見みては湯ゆを探さぐるが如ごとくす、 |
吾見其人矣 | 吾われ其その人ひとを見み、 |
吾聞其語矣 | 吾われ其その語ごを聞きけり。 |
「隱居以求其志 | 隱居いんきよして以もつて其その志こゝろざしを求もとめ、 |
行義以達其道」 | 義ぎを行おこなうて以もつて其その道みちを達たつす、 |
吾聞其語矣 | 吾われ其その語ごを聞きけども、 |
未見其人也 | 未いまだ其その人ひとを見みざるなり。 |
16-12 | |
(誠不以富亦祇以異) | |
齊景公有馬千駟 | 斉せいの景公けいこう馬うま千駟せんし有あり、 |
死之日 | 死しするの日ひ、 |
民無德而稱焉 | 民たみ徳とくとして称しようする無なし、 |
伯夷叔齊餓於首陽之下 | 伯夷はくい叔斉しゆくせい首陽しゆやうの下もとに餓がす。 |
民到于今稱之 | 民たみ今いまに到いたるまで之これを称しようす、 |
其斯之謂與 | 其それ斯これの謂いひか。 |
16-13 | |
陳亢問於伯魚 | 陳亢ちんかう伯魚はくぎよに問とふ、 |
曰 | 曰く、 |
子亦有異聞乎 | 子も亦また異聞いぶん有あるか。 |
對曰 | 対こたへて曰いはく、 |
未也 | 未いまだし。 |
嘗獨立 | 嘗かつて独ひとり立たてり。 |
鯉趨而過庭 | 鯉り趨はしりて庭にはを過すぐ、 |
曰 | 曰いはく、 |
「學《詩》乎」 | 詩しを学まなびたるか。 |
對曰 | 対こたへて曰いはく、 |
「未也」 | 未いまだし。 |
「不學《詩》 | 詩しを学まなばずんば、 |
無以言」 | 以もつて言いふ無なし。 |
鯉退而學《詩》 | 鯉り退しろぞいて詩しを学まなべり。 |
他日又獨立 | 他日たじつ又また独ひとり立たてり。 |
鯉趨而過庭 | 鯉り趨はしりて庭にはを過すぐ、 |
曰 | 曰いはく、 |
「學禮乎」 | 礼れいを学まなびたるか。 |
對曰 | 対こたへて曰いはく、 |
「未也」 | 未いまだし。 |
「不學禮 | 礼れいを学まなばずんば、 |
無以立」 | 以もつて立たつ無なし。 |
鯉退而學禮 | 鯉り退しろぞいて礼れいを学まなべり。 |
聞斯二者 | 斯この二者しやを聞きけり。 |
陳亢退而喜曰 | 陳亢ちんかう退しりぞいて喜よろこびて曰いはく、 |
問一得三 | 一いつを問とうて三さんを得えたり、 |
聞《詩》 | 詩しを聞きき、 |
聞禮 | 礼れいを聞きき、 |
又聞君子之遠其子也 | 又また君子くんしの其子そのこを遠とほざくるを聞きけり。 |
16-14 | |
邦君之妻 | 邦君はうくんの妻つま、 |
君稱之 | 君きみ之これを称しようして、 |
曰夫人 | 夫人ふじんと曰いふ。 |
夫人自稱 | 夫人ふじん自みづから称しようして、 |
曰小童 | 小童せうどうと曰いふ。 |
邦人稱之 | 邦人はうじん之これを称しようして、 |
曰君夫人 | 君夫人くんぷじんと曰いふ。 |
稱諸異邦 | 諸これを異邦いはうに称しようして、 |
曰寡小君 | 寡小君くわせうくんと曰いふ。 |
異邦人稱之 | 異邦人いはうじん之これを称しようして、 |
亦曰君夫人 | 亦また君夫人くんぷじんと曰いふ。 |
陽貨第十七:ようか |
|
17-1 | |
陽貨欲見孔子 | 陽貨やうくわ孔子こうしを見みんと欲ほつす、 |
孔子不見 | 孔子こうし見まみえず。 |
歸孔子豚 | 孔子こうしに豚ぶたを帰おくる。 |
孔子時其亡也 | 孔子こうし其その亡なきを時ときとして、 |
而往拜之 | 而して往ゆきて之これを拝はいす。 |
遇諸塗 | 諸これに塗みちに遇あふ。 |
謂孔子曰 | 孔子こうしに謂いひて曰いはく、 |
來 | 来きたれ、 |
予與爾言 | 予われ爾なんぢと言いはん。 |
曰 | 曰いはく、 |
懷其寶而迷其邦 | 其寶そのたからを懷いだきて而して其邦そのくにを迷まどはす、 |
可謂仁乎 | 仁じんと謂いふ可べきか。 |
曰 | 曰いはく、 |
不可 | 不可ふか。 |
好從事而亟失時 | 事ことに從したがふを好このみて而して亟々しばしば時ときを失しつす、 |
可謂知乎 | 知ちと謂いふ可べきか。 |
曰 | 曰いはく、 |
不可 | 不可ふか。 |
日月逝矣 | 日月じつげつ逝ゆきぬ、 |
歲不我與 | 歳とし我われと与ともならず。 |
孔子曰 | 孔子曰く、 |
諾 | 諾だく、 |
吾將仕矣 | 吾われ将まさに仕つかへんとす。 |
17-2 | |
子曰 | 子曰く、 |
性相近也 | 性せい相あひ近ちかきなり、 |
習相遠也 | 習ならひ相あひ遠とほきなり。 |
17-3 | |
子曰 | 子曰く、 |
唯上知與下愚 | 唯たゞ上知じやうちと下愚かぐとは |
不移也 | 移うつらず。 |
17-4 | |
子 | 子し、 |
之武城 | 武城ぶじやうに之ゆき、 |
聞弦歌之聲 | 弦歌げんかの聲こゑを聞きく、 |
夫子莞爾而笑 | 夫子ふうし莞爾くわんじとして笑わらふ、 |
曰 | 曰く、 |
割雞 | 雞にはとりを割さくに、 |
焉用牛刀 | 焉いづくんぞ牛刀ぎうとうを用ひん。 |
子游對曰 | 子游しいう対こたへ曰いはく、 |
昔者 | 昔むかし偃えんや、 |
偃也聞諸夫子 | 諸これを夫子ふうしに聞きけり、 |
曰 | 曰く、 |
「君子學道 | 君子くんし道みちを学まなべば、 |
則愛人 | 則すなはち人ひとを愛あいし、 |
小人學道 | 小人せうじん道みちを学まなべば、 |
則易使也」 | 則すなはち使つかひ易やすきなりと。 |
子曰 | 子曰く、 |
二三子 | 二三子にさんしよ、 |
偃之言是也 | 偃えんの言げん是ぜなり、 |
前言戲之耳 | 前言ぜんげんは之これに戲たはむれたるのみ。 |
17-5 | |
公山弗擾 | 公山弗擾こうざんふつぜう、 |
以費畔 | 費ひを以もつて畔そむく。 |
召 | 召よぶ、 |
子欲往 | 子し往ゆかんと欲ほつす。 |
子路不說 | 子路しろ説よろこばず、 |
曰 | 曰いはく、 |
末之也已 | 之ゆく末なきのみ、 |
何必公山氏之之也 | 何なんぞ必かならずしも公山氏こうざんしに之これ之ゆかん。 |
子曰 | 子曰く、 |
夫召我者 | 夫それ我われを召よぶ者ものは、 |
而豈徒哉 | 豈あに徒ただならんや、 |
如有用我者 | 如もし我われを用もちふる者ものあらば、 |
吾其爲東周乎 | 吾われ其それ東周とうしうを為なさんか。 |
17-6 | |
子張問仁於孔子 | 子張しちやう仁じんを孔子こうしに問とふ。 |
孔子曰 | 孔子曰く、 |
能行五者於天下 | 能よく五者ごしやを天下てんかに行おこなふを |
爲仁矣 | 仁じんと為なす。 |
請問之 | 之これを請こひ問とふ。 |
曰 | 曰く、 |
恭、寬、信、敏、惠 | 恭きよう寬くわん信しん敏びん恵けい、 |
恭則不侮 | 恭きようなれば則すなはち侮あなどられず、 |
寬則得衆 | 寬くわんなれば則すなはち衆しうを得う、 |
信則人任焉 | 信しんなれば則すなはち人ひと任にんず、 |
敏則有功 | 敏びんなれば則すなはち功こう有あり、 |
惠則足以使人 | 恵けいなれば則すなはち以もつて人ひとを使つかふに足たる。 |
17-7 | |
佛肸召 | 佛肸ひつきつ召よぶ、 |
子欲往 | 子し往ゆかんと欲ほつす。 |
子路曰 | 子路しろ曰いはく、 |
昔者由也聞諸夫子 | 昔むかし由いうや諸これを夫子ふうしに聞きく、 |
曰 | 曰く、 |
「親於其身爲不善者 | 親みづから其身そのみに於おいて不善ふぜんを為なす者ものは、 |
君子不入也」 | 君子くんしは入いらざるなりと。 |
佛肸以中牟畔 | 佛肸ひつきつ中牟ちうぼうを以もつて畔そむけり。 |
子之往也 | 子しの往ゆくや、 |
如之何 | 之これを如何いかん。 |
子曰 | 子曰く、 |
然 | 然しかり、 |
有是言也 | 是この言げん有あるなり、 |
不曰堅乎 | 堅かたしと曰いはずや、 |
磨而不磷 | 磨ますれども磷りんせず、 |
不曰白乎 | 白しろしと曰いはずや、 |
涅而不緇 | 涅でつすれども緇しせず。 |
吾豈匏瓜也哉 | 我われ豈あに匏瓜ほうくわならんや、 |
焉能繫而不食 | 焉いづくんぞ能よく繫かゝりて食くらはれざらん。 |
17-8 | |
子曰 | 子曰く、 |
由也 | 由いうや |
女聞「六言六蔽」矣乎 | 女なんぢ六言りくげん六蔽りくへいを聞きくか。 |
對曰 | 対こたへ曰いはく、 |
未也 | 未いまだし。 |
居 | 居をれ、 |
吾語女 | 吾われ女なんぢに語かたらん。 |
好仁不好學 | 仁じんを好このんで学がくを好このまずんば、 |
其蔽也愚 | 其蔽そのへいや愚ぐ。 |
好知不好學 | 知ちを好このんで学がくを好このまずんば、 |
其蔽也蕩 | 其蔽そのへいや蕩たう。 |
好信不好學 | 信しんを好このんで学がくを好このまずんば、 |
其蔽也賊 | 其蔽そのへいや賊ぞく。 |
好直不好學 | 直ちよくを好このんで学がくを好このまずんば、 |
其蔽也絞 | 其蔽そのへいや絞かう。 |
好勇不好學 | 勇ゆうを好このんで学がくを好このまずんば、 |
其蔽也亂 | 其蔽そのへいや乱らん。 |
好剛不好學 | 剛がうを好このんで学がくを好このまずんば、 |
其蔽也狂 | 其蔽そのへいや狂きやう。 |
17-9 | |
子曰 | 子曰く、 |
小子 | 小子せうし |
何莫學夫《詩》 | 何なんぞ夫かの詩しを学まなぶ莫なき。 |
《詩》可以興 | 詩しは以もつて興おこす可べし、 |
可以觀 | 以もつて観みるべし、 |
可以群 | 以もつて羣ぐんす可べし、 |
可以怨 | 以もつて怨うらむ可べし、 |
邇之事父 | 之これを邇ちかくしては父ちゝに事つかへ、 |
遠之事君 | 之これを遠とほくしては君きみに事つかふ、 |
多識於鳥獸草木之名 | 多おほく鳥獸てうじう草木さうもくの名なを知しる。 |
17-10 | |
子 | 子し、 |
謂伯魚曰 | 伯魚はくぎよに謂いひて曰く、 |
女 | 女なんぢ、 |
爲周南召南矣乎 | 周南しうなん・召南せうなんを為をさめたるか、 |
人而不爲周南召南 | 人ひとにして周南しうなん・召南せうなんを為をさめずんば、 |
其猶正牆面而立也與 | 其それ猶なほ正たゞしく牆かきに面めんして立たつが如ごとくなるか。 |
17-11 | |
子曰 | 子曰く、 |
禮云禮云 | 礼れいと云いひ礼れいと云いふ、 |
玉帛云乎哉 | 玉帛ぎよくはくと云いはんや。 |
樂云樂云 | 楽がくと云いひ楽がくと云ふ、 |
鐘鼓云乎哉 | 鐘鼓しようこと云いはんや。 |
17-12 | |
子曰 | 子曰く、 |
色厲而內荏 | 色いろ厲れいにして内うち荏じんなるは、 |
譬諸小人 | 諸これを小人せうじんに譬たとふれば、 |
其猶穿窬之盜也與 | 其それ猶なほ穿窬せんゆの盜たうのごときか。 |
17-13 | |
子曰 | 子曰く、 |
鄕原 | 郷原きようげんは |
德之賊也 | 徳とくの賊ぞくなり。 |
17-14 | |
子曰 | 子曰く、 |
道聽而塗說 | 道みちに聴きいて塗みちに説とくは、 |
德之棄也 | 徳とくを之これ棄すつるなり。 |
17-15 | |
子曰 | 子曰く、 |
鄙夫 | 鄙夫ひふは |
可與事君也與哉 | 与ともに君きみに事つかふ可べきならんや。 |
其未得之也 | 其の未だ之を得えざるや、 |
患得之 | 之これを得えんことを患うれへ、 |
既得之 | 既すでに之これを得うれば、 |
患失之 | 之これを失うしなはんことを患うれふ。 |
苟患失之 | 苟いやしくも之これを失うしなはんことを患うれへば、 |
無所不至矣 | 至いたらざる所ところ無なし。 |
17-16 | |
子曰 | 子曰く、 |
古者民有三疾 | 古者いにしへは民たみに三疾さんしつ有あり、 |
今也或是之亡也 | 今いまや是これある亡なきなり。 |
古之狂也肆 | 古いにしへの狂きやうや肆し、 |
今之狂也蕩 | 今いまの狂きやうや蕩たう。 |
古之矜也廉 | 古いにしへの矜きようや廉れん、 |
今之矜也忿戾 | 今いまの矜きようや忿戾ふんれい。 |
古之愚也直 | 古いにしへの愚ぐや直ちよく、 |
今之愚也詐而已矣 | 今いまの愚ぐや詐さのみ。 |
17-17 | |
子曰 | 子曰く、 |
巧言令色 | 巧言令色かうげんれいしよく、 |
鮮矣仁 | 鮮すくなし仁じん。 |
17-18 | |
子曰 | 子曰く、 |
惡紫之奪朱也 | 紫むらさきの朱あけを奪うばふを悪にくむ。 |
惡鄭聲之亂雅樂也 | 鄭聲ていせいの雅楽ががくを乱みだるを悪にくむ。 |
惡利口之覆邦家者 | 利口りこうの邦家はうかを覆くつがへすを悪にくむ。 |
17-19 | |
子曰 | 子曰く、 |
予欲無言 | 予よ言いふ無なからんと欲ほつす。 |
子貢曰 | 子貢しこう曰いはく、 |
子如不言 | 子し如もし言いはずんば、 |
則小子何述焉 | 則すなはち小子せうし何なにをか述のべん。 |
子曰 | 子曰く、 |
天何言哉 | 天てん何なにをか言いふや、 |
四時行焉 | 四時しじ行おこなはれ、 |
百物生焉 | 百物ひやくぶつ生なる、 |
天何言哉 | 天てん何なにをか言いふや。 |
17-20 | |
孺悲欲見孔子 | 孺悲じゆひ孔子こうしを見みんと欲ほつす。 |
孔子辭以疾 | 辞じするに疾やまひを以もつてす。 |
將命者出戶 | 命めいを将おこなふ者もの戸とを出いづ。 |
取瑟而歌 | 瑟しつを取とりて歌うたひ、 |
使之聞之 | 之これをして之を聞きかしむ。 |
17-21 | |
宰我問 | 宰我さいが問とふ、 |
三年之喪 | 三年さんねんの喪もは、 |
期已久矣 | 期き已すでに久ひさし。 |
君子三年不爲禮 | 君子くんし三年さんねん礼れいを為なさずんば、 |
禮必壞 | 礼れい必かならず壞やぶれん。 |
三年不爲樂 | 三年さんねん楽がくを為なさずんば、 |
樂必崩 | 楽がく必かならず崩くづれん。 |
舊穀既沒 | 旧穀きうこく既すでに沒ぼつし、 |
新穀既升 | 新穀しんこく既すでに升みのる、 |
鑽燧改火 | 燧すゐを鑽きり火ひを改あらたむ、 |
期可已矣 | 期きにして已やむ可べし。 |
子曰 | 子曰く、 |
食夫稻 | 夫かの稻たうを食くらひ、 |
衣夫錦 | 夫かの錦にしきを衣きる、 |
於女安乎 | 女なんぢに於おいて安やすきか。 |
曰安 | 曰いはく安やすし。 |
曰く、 | |
女安 | 女なんぢ安やすくば |
則爲之 | 則すなはち之これを為なせ。 |
夫君子之居喪 | 夫かの君子くんしの喪もに居をる、 |
食旨不甘 | 旨うまきを食くらへども甘あまからず、 |
聞樂不樂 | 楽がくを聞きけども楽たのしまず、 |
居處不安 | 居處きよしよ安やすからず、 |
故不爲也 | 故ゆゑに為なさざるなり。 |
今女安 | 今いま女なんぢ安やすくば |
則爲之 | 則すなはち之これを為なせ。 |
宰我出 | 宰我さいが出いづ。 |
子曰 | 子曰く、 |
予之不仁也 | 予よの不仁ふじんなるや。 |
子生三年 | 子こ生うまれて三年さんねん、 |
然後免於父母之懷 | 然しかる後のち父母ふぼの懷ふところを免まぬかる。 |
夫三年之喪 | 夫それ三年の喪もは、 |
天下之通喪也 | 天下てんかの通喪つうさうなり。 |
予也 | 予よや |
有三年之愛於其父母乎 | 其その父母ふぼに三年の愛あいあるか。 |
17-22 | |
子曰 | 子曰く、 |
飽食終日 | 飽食ほうしよく終日しゆうじつ、 |
無所用心 | 心こゝろを用もちふる所ところ無なくば、 |
難矣哉 | 難かたいかな。 |
不有博弈者乎 | 博弈ばくえきといふ者もの有あらざるか、 |
爲之 | 之これを為なすは |
猶賢乎已 | 猶なほ已やむに賢まされり。 |
17-23 | |
子路曰 | 子路しろ曰いはく、 |
君子尙勇乎 | 君子くんしは勇ゆうを尙たふとぶか。 |
子曰 | 子曰く、 |
君子義以爲上 | 君子くんしは義ぎ以もつて上かみと為す。 |
君子有勇而無義 | 君子くんし勇ゆう有ありて義ぎ無なければ、 |
爲亂 | 乱らんを為なす、 |
小人有勇而無義 | 小人せうじん勇ゆうありて義無なければ、 |
爲盜 | 盜たうを為なす。 |
17-24 | |
子貢曰 | 子貢しこう曰く、 |
君子亦有惡乎 | 君子くんしも亦また悪にくむこと有あるか。 |
子曰 | 子曰く、 |
有惡 | 悪にくむこと有あり。 |
惡稱人之惡者 | 人ひとの悪あくを称しようする者ものを悪にくむ。 |
惡居下流而訕上者 | 下流かりうに居をりて上かみを訕そしる者ものを悪にくむ。 |
惡勇而無禮者 | 勇ゆうにして礼れいなき者ものを悪にくむ。 |
惡果敢而窒者 | 果敢くわかんにして塞ふさがる者ものを悪にくむ。 |
曰 | 曰いはく、 |
賜也亦有惡乎 | 賜しも亦また悪にくむこと有あるかな。 |
惡徼以爲知者 | 徼もとめて以て知ちと為なす者ものを悪にくむ。 |
惡不孫以爲勇者 | 不孫ふそんにして以もつて勇ゆうと為なす者ものを悪にくむ。 |
惡訐以爲直者 | 訐あばいて以もつて直ちよくと為なす者ものを悪にくむ。 |
17-25 | |
子曰 | 子曰く、 |
唯女子與小人爲難養也 | 唯たゞ女子じよしと小人せうじんとは養やしなひ難がたしと為なす、 |
近之則不逊 | 之これを近ちかづくれば則すなはち不孫ふそんなり、 |
遠之則怨 | 之これを遠とほざくれば則すなはち怨うらむ。 |
17-26 | |
子曰 | 子曰く、 |
年四十而見惡焉 | 年とし四十にして悪にくまる、 |
其終也已 | 其それ終をはらんのみ。 |
微子第十八:びし |
|
18-1 | |
微子去之 | 微子びし之これを去さる、 |
箕子爲之奴 | 箕子きし之これが奴どと為なり、 |
比干諫而死 | 比干ひかんは諫いさめて死しす。 |
孔子曰 | 孔子曰く、 |
殷有三仁焉 | 殷いんに三仁さんじん有あり。 |
18-2 | |
柳下惠爲士師 | 柳下恵りうかけい士師ししと為なり、 |
三黜 | 三みたび黜しりぞけらる。 |
人曰 | 人ひと曰いはく、 |
子未可以去乎 | 子し以もつて去さる可べからざるか。 |
曰 | 曰いはく、 |
直道而事人 | 道みちを直なほくして人ひとに事つかへば、 |
焉往而不三黜 | 焉いづくに往ゆくとして三黜さんちゆつせられざらん、 |
枉道而事人 | 道みちを枉まげて人ひとに事つかへば、 |
何必去父母之邦 | 何なんぞ必かならずしも父母ふぼの邦くにを去さらん。 |
18-3 | |
齊景公待孔子 | 斉せいの景公けいこう孔子こうしを待まつて、 |
曰 | 曰いはく、 |
若季氏 | 季氏きしの若ごとくするは、 |
則吾不能 | 則すなはち吾われ能あたはず、 |
以季、孟之閒待之 | 季孟きまうの閒あひだを以もつて之これを待またん。 |
曰 | 曰いはく、 |
吾老矣 | 吾われ老おいたり、 |
不能用也 | 用もちふる能あたはざるなり。 |
孔子行 | 孔子こうし行さる。 |
18-4 | |
齊人歸女樂 | 斉人せいひと女楽じよがくを帰おくる。 |
季桓子受之 | 季桓子きくわんし之これを受うけて、 |
三日不朝 | 三日朝てうせず。 |
孔子行 | 孔子こうし行さる。 |
18-5 | |
楚狂接輿 | 楚その狂きやう接輿せつよ |
歌而過孔子 | 歌うたうて孔子こうしを過すぐ。 |
曰 | 曰いはく、 |
鳳兮鳳兮 | 鳳ほうや鳳ほうや、 |
何德之衰 | 何なんぞ徳とくの衰おとろへたるや、 |
往者不可諫 | 往者おうしやは諫いさむべからず、 |
來者猶可追 | 来者らいしやは猶なほ追おふべし、 |
已而已而 | 已やまん已やまん、 |
今之從政者殆而 | 今いまの政まつりごとに從したがふ者ものは殆あやふしと。 |
孔子下 | 孔子こうし下くだりて、 |
欲與之言 | 之これと言いはんと欲ほつす。 |
趨而辟之 | 趨はしつて之これを辟さけ、 |
不得與之言 | 之これと言いふを得えず。 |
18-6 | |
長沮、桀溺 | 長沮ちやうそ・桀溺けつでき、 |
耦而耕 | 耦ぐうして耕かうす、 |
孔子過之 | 孔子こうし之これを過すぐ。 |
使子路問津焉 | 子路しろをして津しんを問とはしむ。 |
長沮曰 | 長沮ちやうそ曰いはく、 |
夫執輿者爲誰 | 夫かの輿よを執とる者ものは誰たれと為なす。 |
子路曰 | 子路しろ曰いはく、 |
爲孔丘 | 孔丘こうきうと為なす。 |
曰 | 曰いはく、 |
是魯孔丘與 | 是これ魯ろの孔丘こうきうか。 |
曰 | 対こたへて曰いはく、 |
是也 | 是これなり。 |
曰 | 曰いはく、 |
是知津矣 | 是これならば津しんを知しらん。 |
問於桀溺 | 桀溺けつできに問とふ。 |
桀溺曰 | 桀溺けつでき曰いはく、 |
子爲誰 | 子しは誰たれと為なす。 |
曰 | 曰いはく |
爲仲由 | 仲由ちういうと為なす。 |
曰 | 曰いはく、 |
是魯孔丘之徒與 | 是これ魯ろの孔丘こうきうの徒とか。 |
對曰 | 対こたへて曰いはく |
然 | 然しかり。 |
曰 | 曰いはく、 |
滔滔者 | 滔滔たうたうたる者もの |
天下皆是也 | 天下てんか皆みな是これなり、 |
而誰以易之 | 而しかうして誰たれか以もつて之これを易かへん、 |
且而與其從辟人之士也 | 且かつ而なんぢ其その人ひとを辟さくるの士しに從したがはんより、 |
豈若從辟世之士哉 | 豈あに世よを辟さくるの士しに從したがふに若しかんやと。 |
耰而不輟 | 耰いうして輟やめず。 |
子路行以吿 | 子路しろ行ゆいて以もつて告つぐ。 |
夫子憮然 | 夫子ふうし憮然ぶぜんたり。 |
曰 | 曰く、 |
鳥獸不可與同群 | 鳥獸てうじうは与ともに羣ぐんを同おなじくす可べからず、 |
吾非斯人之徒與而 | 吾われ斯この人ひとの徒とと与ともにするに非あらずして、 |
誰與 | 誰たれと与ともにせんや。 |
天下有道 | 天下てんか道みち有あらば、 |
丘不與易也 | 丘きう与ともに易かへざるなり。 |
18-7 | |
子路從而後 | 子路しろ從したがひて後おくる。 |
遇丈人 以杖荷蓧 |
丈人じやうじんの 杖つゑを以もつて蓧でうを荷になふに遇あふ。 |
子路問曰 | 子路しろ問とふて曰いはく、 |
子見夫子乎 | 子し夫子ふうしを見みたるか。 |
丈人曰 | 丈人じやうじん曰いはく、 |
四體不勤 | 四体したい勤つとめず、 |
五穀不分 | 五穀ごこく分わかたず、 |
孰爲夫子 | 孰たれをか夫子ふうしと為なすと。 |
植其杖而芸 | 其杖そのつゑを植たてて芸くさぎる。 |
子路拱而立 | 子路しろ拱きようして立たつ。 |
止子路宿 | 子路しろを留とゞめて宿しゆくせしめ、 |
殺雞爲黍而食之 | 雞にはとりを殺ころし黍しよを為つくりて之これに食くらはしめ、 |
見其二子焉 | 其その二子しを見まみえしむ。 |
明日 | 明日みやうにち、 |
子路行以吿 | 子路しろ行ゆきて以もつて告つぐ。 |
子曰 | 子曰く、 |
隱者也 | 隱者いんじやなりと。 |
使子路反見之 | 子路しろをして反かへつて之これを見みしむ。 |
至則行矣 | 至いたれば則すなはち行されり。 |
子路曰 | 子路しろ曰いはく、 |
不仕無義 | 仕つかへざれば義ぎ無なし、 |
長幼之節 | 長幼ちやうえうの節せつは |
不可廢也 | 廃はいす可べからざるなり、 |
君臣之義 | 君臣くんしんの義ぎは、 |
如之何其廢之 | 之これを如何いかにして其それ之これを廃はいせん、 |
欲潔其身 | 其身そのみを潔いさぎよくせんと欲ほつして、 |
而亂大倫 | 大倫たいりんを乱みだる、 |
君子之仕也 | 君子くんしの仕つかふるや、 |
行其義也 | 其その義ぎを行おこなふなり、 |
道之不行 | 道みちの行おこなはれざるは、 |
已知之矣 | 已すでに之これを知しれり。 |
18-8 | |
逸民 | 逸民いつみんには、 |
伯夷、叔齊、虞仲、夷逸、朱張、柳下惠、少連 | 伯夷はくい・叔斉しゆくせい・虞仲ぐちう・夷逸いいつ・朱張しゆちやう・柳下恵りうかけい・少連せうれん。 |
子曰 | 子曰く、 |
不降其志 | 其志そのこゝろざしを降くださず、 |
不辱其身 | 其身そのみを辱はづかしめざるは、 |
伯夷叔齊與 | 伯夷はくい・叔斉しゆくせいか。 |
謂柳下惠、少連 | 柳下恵りうかけい・少連せうれんを謂いふ、 |
降志辱身矣 | 志こゝろざしを降くだし身みを辱はづかしむ、 |
言中倫 | 言げんは倫りんに當あたり、 |
行中慮 | 行おこなひは慮おもんばかりに中あたる、 |
其斯而已矣 | 其それ斯これのみ。 |
謂虞仲、夷逸 | 虞仲ぐちう・夷逸いいつを謂いふ、 |
隱居放言 | 隱居いんきよ言げんを放ほしいまゝにす、 |
身中淸 | 身みは淸せいに中あたり、 |
廢中權 | 廃して權けんに中あたる。 |
我則異於是 | 我われは則すなはち是これに異ことなり、 |
無可 | 可かも無なく、 |
無不可 | 不可ふかも無なし。 |
18-9 | |
大師摯適齊 | 大師たいし摯しは斉せいに適ゆき、 |
亞飯干適楚 | 亜飯あはん干かんは楚そに適ゆき、 |
三飯繚適蔡 | 三飯さんぱん繚れうは蔡さいに適ゆき、 |
四飯缺適秦 | 四飯しはん缺けつは秦しんに適ゆき、 |
鼓方叔入於河 | 鼓こ方叔ほうしゆくは河かに入いり、 |
播鼗武入於漢 | 播鼗はとう武ぶは漢かんに入いり、 |
少師陽、擊磬襄入於海 | 少師せうし陽やう・擊磬げきけい襄じやうは海うみに入いる。 |
18-10 | |
周公謂魯公曰 | 周公しうこう魯公ろこうに謂いひて曰いはく、 |
君子不施其親 | 君子くんしは其親そのしんを施かへず、 |
不使大臣怨乎不以 | 大臣だいじんをして以もちひざるを怨うらましめず、 |
故舊無大故 | 故旧こきうに大故たいこ無なければ、 |
則不棄也 | 則すなはち棄すてざるなり、 |
無求備於一人 | 備そなはるを一人いちにんに求もとむる無なかれ。 |
18-11 | |
周有八士 | 周しうに八士はつし有あり、 |
伯達、伯适、仲突、仲忽、叔夜、叔夏、季隨、季騧 | 伯達はくたつ・伯适はくくわつ・仲突ちうとつ・仲忽ちうこつ・叔夜しゆくや・叔夏しゆくか・季隨きずゐ・季騧きくわ。 |
子張第十九:しちょう |
|
19-1 | |
子張曰 | 子張しちやう曰く、 |
士見危致命 | 士しは危あやふきを見みては命めいを致いたし、 |
見得思義 | 得うるを見みては義ぎを思おもひ、 |
祭思敬 | 祭まつりには敬けいを思おもひ、 |
喪思哀 | 喪もには哀あいを思おもふ、 |
其可已矣 | 其それ可かなるのみ。 |
19-2 | |
子張曰 | 子張しちやう曰く、 |
執德不弘 | 徳とくを執とること弘ひろからず、 |
信道不篤 | 道みちを信しんずること厚あつからずんば、 |
焉能爲有 | 焉いづくんか能よく有ありと為なし、 |
焉能爲亡 | 焉いづくんか能よく亡なしと為なさん。 |
19-3 | |
子夏之門人 | 子夏しかの門人もんじん |
問交於子張 | 交まじはりを子張しちやうに問とふ。 |
子張曰 | 子張しちやう曰く、 |
子夏云何 | 子夏しかは何なにと云いへる。 |
對曰 | 対こたへて曰く、 |
子夏曰 | 子夏曰く、 |
「可者與之 | 可かなる者ものは之これに与くみして、 |
其不可者拒之」 | 其その不可ふかなる者ものは之これを拒ふせぐと。 |
子張曰 | 子張しちやう曰く、 |
異乎吾所聞 | 吾わが聞きく所ところに異ことなり、 |
「君子尊賢而容衆 | 君子くんしは賢けんを尊たふとび衆しうを容いれ、 |
嘉善而矜不能」 | 善ぜんを嘉よみして不能ふのうを矜あはれむ、 |
我之大賢與 | 我われの大賢たいけんなるか、 |
於人何所不容 | 人ひとに於おいて何なんぞ容いれられざる所ところあらん、 |
我之不賢與 | 我われの不賢ふけんなるか、 |
人將拒我 | 将まさに我われを拒ふせがんとす、 |
如之何其拒人也 | 之を如何いかんぞ其それ人ひとを拒ふせがん。 |
19-4 | |
子夏曰 | 子夏しか曰く、 |
雖小道 | 小道せうだうと雖いへども、 |
必有可觀者焉 | 必かならず観みる可べき者もの有あらん、 |
致遠恐泥 | 遠とほきを致いたすには恐おそらくは泥なづまん、 |
是以君子不爲也 | 是これを以もつて君子くんしは為をさめざるなり。 |
19-5 | |
子夏曰 | 子夏しか曰く、 |
日知其所亡 | 日ひに其その亡なき所ところを知しり、 |
月無忘其所能 | 月つきに其その能よくする所ところを忘わするゝ無なくんば、 |
可謂好學也已矣 | 学がくを好このむと謂いふ可べきのみ。 |
19-6 | |
子夏曰 | 子夏しか曰く、 |
博學而篤志 | 博ひろく学まなんで篤あつく志こゝろざし、 |
切問而近思 | 切せつに問とうて近ちかく思おもへば、 |
仁在其中矣 | 仁じん其の中うちに在あり。 |
19-7 | |
子夏曰 | 子夏しか曰く、 |
百工居肆以成其事 | 百工こうは肆しに居をりて以て其事そのことを成なし、 |
君子學以致其道 | 君子くんしは学まなびて以て其道そのみちを致いたす。 |
19-8 | |
子夏曰 | 子夏しか曰く、 |
小人之過也 | 小人せうじんの過あやまちや、 |
必文 | 必かならず文かざる。 |
19-9 | |
子夏曰 | 子夏しか曰く、 |
君子有三變 | 君子くんしに三変さんぺんあり、 |
望之儼然 | 之これを望のぞめば儼然げんぜんたり、 |
卽之也溫 | 之これに卽つくや温をん、 |
聽其言也厲 | 其言そのげんを聴きくや厲れい。 |
19-10 | |
子夏曰 | 子夏しか曰く、 |
君子信 | 君子くんし信しんぜられて、 |
而後勞其民 | 而しかる後のちに其民そのたみを労らうす、 |
未信 | 未だ信しんぜられざれば、 |
則以爲厲己也 | 則ち以もつて己おのれを厲やますと為なせばなり。 |
信而後諫 | 信しんぜられて而しかる後のちに諫いさむ、 |
未信則以爲謗己也 | 未だ信しんぜられざれば則すなはち以もつて己おのれを謗そしると為なせばなり。 |
19-11 | |
子夏曰 | 子夏しか曰く、 |
大德不踰閑 | 大徳たいとく閑のりを踰こえずんば、 |
小德出入可也 | 小徳せうとくは出入しゆつにふすとも可かなり。 |
19-12 | |
子游曰 | 子游しいう曰く、 |
子夏之門人小子 | 子夏しかの門人もんじん小子せうしは、 |
當洒掃應對進退則可矣 | 洒掃さいさう應対おうたい進退しんたいに當あたりては則すなはち可かなり、 |
抑末也 | 抑々そも末すゑなり |
本之則無 | 之これを本もとづければ則すなはち無なし |
如之何 | 之これを如何いかん |
子夏聞之曰 | 子夏しか之これを聞きいて曰く、 |
噫 | 噫あゝ、 |
言游過矣 | 言游げんいう過あやまてり、 |
君子之道 | 君子くんしの道みちは、 |
孰先傳焉 | 孰いずれをか先さきに伝つたへ、 |
孰後倦焉 | 孰いずれをか後のちに倦うまん、 |
譬諸草木 區以別矣 |
諸これを草木さうもくの 區くにして以て別べつあるに譬たとふ、 |
君子之道 | 君子くんしの道みちは |
焉可誣也 | 焉いづくんぞ誣しふ可べけん、 |
有始有卒者 | 始はじめ有あり卒をはり有ある者ものは、 |
其惟聖人乎 | 其それ唯たゞ聖人せいじんか |
19-13 | |
子夏曰 | 子夏しか曰く、 |
仕而優則學 | 仕つかへて而しかうして優いうなれば則すなはち学まなぶ、 |
學而優則仕 | 学まなんで而しかうして優いうなれば則すなはち仕つかふ。 |
19-14 | |
子游曰 | 子游しいう曰く、 |
喪致乎哀而止 | 喪もは哀あいを致いたして止やむ。 |
19-15 | |
子游曰 | 子游しいう曰く、 |
吾友張也 | 吾わが友とも張ちやうや、 |
爲難能也 | 能よくし難がたしと為なす、 |
然而未仁 | 然しかれども未いまだ仁じんならず。 |
19-16 | |
曾子曰 | 曾子そうし曰く、 |
堂堂乎張也 | 堂堂だうだうたるかな張ちやうや、 |
難與並爲仁矣 | 与ともに並ならびて仁じんを為なし難がたし。 |
19-17 | |
曾子曰 | 曾子そうし曰く、 |
吾聞諸夫子 | 吾われ諸これを夫子ふうしに聞きく、 |
「人未有自致者也 | 人ひと未いまだ自みづから致いたす者もの有あらざるなり、 |
必也親喪乎」 | 必かならずや親おやの喪もか。 |
19-18 | |
曾子曰 | 曾子そうし曰く、 |
吾聞諸夫子 | 吾われ諸これを夫子ふうしに聞きく、 |
「孟莊子之孝也 | 孟荘子まうさうしの孝かうや、 |
其他可能也 | 其他そのたは能よくす可べし、 |
其不改 父之臣與 父之政 |
其父そのちゝの臣しんと 父ちゝの政まつりごとを 改あらためざる、 |
是難能也」 | 是これ能よくし難がたきなりと。 |
19-19 | |
孟氏使陽膚爲士師 | 孟氏まうし陽膚やうふをして士師しし為たらしめ |
問於曾子 | 曾子そうしに問とふ。 |
曾子曰 | 曾子そうし曰く、 |
上失其道 | 上かみ其道そのみちを失うしなひ、 |
民散久矣 | 民たみ散さんずること久ひさし。 |
如得其情 | 如もし其情そのじやうを得えば、 |
則哀矜而勿喜 | 則すなはち哀矜あいきようして喜よろこぶ勿れ。 |
19-20 | |
子貢曰 | 子貢しこう曰く、 |
紂之不善 | 紂ちうの不善ふぜんは、 |
不如是之甚也 | 是かくの如ごとく之これ甚はなはだしからざるなり、 |
是以君子惡居下流 | 是これを以もつて君子くんしは下流かりうに居をるを悪にくむ、 |
天下之惡皆歸焉 | 天下てんかの悪あく皆みな焉これに帰きす。 |
19-21 | |
子貢曰 | 子貢しこう曰く、 |
君子之過也 | 君子の過あやまちや、 |
如日月之食焉 | 日月の食しよくの如ごとし、 |
過也 | 過つや、 |
人皆見之 | 人皆之を見る、 |
更也 | 更あらたむるや、 |
人皆仰之 | 人皆之を仰あふぐ。 |
19-22 | |
衛公孫朝問於子貢曰 | 衞ゑいの公孫朝こうそんてう子貢しこうに問とうて曰く、 |
仲尼焉學 | 仲尼ちうぢ焉いづくんか学まなびたる。 |
子貢曰 | 子貢しこう曰く、 |
文、武之道 | 文武ぶんぶの道、 |
未墜於地 | 未いまだ地ちに墜おちずして、 |
在人 | 人ひとに在あり、 |
賢者識其大者 | 賢者けんしやは其その大だいなる者ものを識しるし、 |
不賢者識其小者 | 不賢者ふけんしやは其その小せうなる者ものを識しるす、 |
莫不有文武之道焉 | 文武ぶんぶの道みち有あらざる莫なし、 |
夫子焉不學 | 夫子ふうし焉いづくにか学まなばざらん、 |
而亦何常師之有 | 而して亦また何なんの常師ぢやうしか之これ有あらん。 |
19-23 | |
叔孫武叔語大夫於朝 | 叔孫武叔しゆくそんぶしゆく大夫たいふに朝てうに語かたりて |
曰 | 曰いはく、 |
子貢賢於仲尼 | 子貢しこうは仲尼ちうぢより賢まさる。 |
子服景伯以吿子貢 | 子服景伯しふくけいはく以もつて子貢しこうに告つぐ。 |
子貢曰 | 子貢しこう曰く、 |
譬之宮牆 | 之これを宮牆きうしやうに譬たとふれば、 |
賜之牆也及肩 | 賜しの牆しやうや肩かたに及べり、 |
闚見室家之好 | 室家しつかの好よきを窺うかがひ見みるべし、 |
夫子之牆數仞 | 夫子ふうしの牆しやうは数仞すうじん、 |
不得其門而入 | 其門そのもんを得えて入いらざれば、 |
不見 宗廟之美 百官之富 |
宗廟そうべうの美び、 百官ひやくくわんの富とみを 見みず、 |
得其門者或寡矣 | 其門そのもんを得うる者ものは或あるひは寡すくなし、 |
夫子之云 | 夫子ふうしの云ふこと、 |
不亦宜乎 | 亦また宜むべならずや。 |
19-24 | |
叔孫武叔 | 叔孫武叔しゆくそんぶしゆく、 |
毀仲尼 | 仲尼ちうぢを毀そしる。 |
子貢曰 | 子貢しこう曰いはく、 |
無以爲也 | 為なすを以もつてする無なかれ、 |
仲尼不可毀也 | 仲尼ちうぢは毀そしる可べからざるなり、 |
他人之賢者丘陵也 | 他人たにんの賢者けんしやは丘陵きうりようなり、 |
猶可踰也 | 猶なほ踰ゆ可べし、 |
仲尼 | 仲尼ちうぢは |
日月也 | 日月にちげつなり、 |
無得而踰焉 | 得えて踰こゆる無なし、 |
人雖欲自絕 | 人ひと自みづから絕たたんと欲ほつすと雖いへども、 |
其何傷於日月乎 | 其それ何なんぞ日月を傷やぶらんや。 |
多見其不知量也 | 多々たまたま其その量りやうを知しらざるを見あらはすなり。 |
19-25 | |
陳子禽 | 陳子禽ちんしきん、 |
謂子貢曰 | 子貢しこうに謂いつて曰いはく、 |
子爲恭也 | 子しの恭きようを為なすや、 |
仲尼豈賢於子乎 | 仲尼ちうぢも豈あに子しより賢けんならんや。 |
子貢曰 | 子貢しこう曰く、 |
君子一言以爲知 | 君子くんしは一言いちげんを以て知ちと為なし、 |
一言以爲不知 | 一言いちげんを以て不知ふちと為なす、 |
言不可不愼也 | 言げんは慎つゝしまざる可べからざるなり。 |
夫子之不可及也 | 夫子ふうしの及およぶ可べからざるや、 |
猶天之不可階而升也 | 猶ほ天てんの階かいして升のぼる可べからざるがごときなり。 |
夫子之得邦家者 | 夫子ふうしにして邦家はうかを得えば、 |
所謂 | 所謂いはゆる |
「立之斯立 | 之これを立たつれば斯こゝに立たち、 |
道之斯行 | 之これを導みちびけば斯こゝに行ゆき、 |
綏之斯來 | 之これを綏やすんずれば斯こゝに来きたり、 |
動之斯和 | 之これを動うごかせば斯こゝに和わするなり、 |
其生也榮 | 其生そのせいや栄えい、 |
其死也哀」 | 其死そのしや哀あい、 |
如之何其可及也 | 之これを如何いかんぞ其それ及およぶ可べけんや。 |
堯曰第二十:ぎょうえつ |
|
20-1 | |
堯曰 | 堯げう曰く、 |
咨 | 咨あゝ |
爾舜 | 爾なんぢ舜しゆん、 |
天之曆數在爾躬 | 天てんの暦数れきすうは爾なんぢの躬みに在あり、 |
允執其中 | 允まことに其中そのちうを執とれ、 |
四海困窮 | 四海しかい困窮こんきうせば |
天祿永終 | 天禄てんろく永ながく終をへん、 |
舜亦以命禹 | 舜しゆんも亦また以もつて禹うに命めいず、 |
曰 | 曰く、 |
予小子履 | 予よ小子履せうしり、 |
敢用玄牡 | 敢あへて玄牡げんぼを用もつて、 |
敢昭吿于皇皇後帝 | 敢あへて昭あきらかに皇皇くわうくわうたる后帝こうていに告つぐ、 |
有罪不敢赦 | 罪つみ有あるは敢あへて赦ゆるさず、 |
帝臣不蔽 | 帝臣ていしん蔽おほはず、 |
簡在帝心 | 簡えらぶこと帝ていの心こゝろに在あり、 |
朕躬有罪 | 朕ちんが躬みに罪つみ有あれば、 |
無以萬方 | 萬方ばんはうを以もつてする無なかれ、 |
萬方有罪 | 萬方ばんはう罪つみ有あれば、 |
罪在朕躬 | 罪つみ朕ちんが躬みに在あらんと。 |
周有大賚 | 周しうに大賚たいらい有あり、 |
善人是富 | 善人ぜんにん是これ富とむ。 |
雖有周親 | 周親しうしん有ありと雖いへども、 |
不如仁人 | 仁人じんにんに如しかず。 |
百姓有過 | 百姓ひやくせい過つみ有らば、 |
在予一人 | 予われ一人いちにんに在ありと。 |
謹權量 | 權量けんりやうを謹つゝしみ、 |
審法度 | 法度はふどを審つまびらかにし、 |
修廢官 | 廃官はいくわんを脩をさめば、 |
四方之政行焉 | 四方しはうの政まつりごと行おこなはる。 |
興滅國 | 滅国めつこくを興おこし、 |
繼絕世 | 絕世ぜつせいを継つぎ、 |
擧逸民 | 逸民いつみんを挙あげば、 |
天下之民歸心焉 | 天下てんかの民たみ心こゝろを帰きす。 |
所重 | 重おもんずる所ところは |
民、食、喪、祭 | 民食みんしよく喪祭さうさい。 |
寬則得衆 | 寬くわんなれば則すなはち衆しうを得え、 |
信則民任焉 | 信しんなれば則すなはち民たみ任にんず。 |
敏則有功 | 敏びんなれば則ち功こう有あり、 |
公則說 | 公こうなれば則すなはち民たみ説よろこぶ。 |
20-2 | |
子張問於孔子曰 | 子張しちやう孔子こうしに問とうて曰く、 |
何如斯可以從政矣 | 何如いかにせば斯こゝに以もつて政まつりごとに從したがふ可べきか。 |
子曰 | 子曰く、 |
尊五美 | 五美ごびを尊たふとび、 |
屛四惡 | 四悪しあくを屛のぞけば、 |
斯可以從政矣 | 斯こゝに以もつて政まつりごとに從したがふ可べし。 |
子張曰 | 子張しちやう曰く、 |
何謂五美 | 何なにをか五美ごびと謂いふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
君子惠而不費 | 君子くんしは恵けいにして費つひやさず、 |
勞而不怨 | 労らうして怨うらみず、 |
欲而不貪 | 欲ほつして貪むさぼらず、 |
泰而不驕 | 泰たいにして驕おごらず、 |
威而不猛 | 威ゐにして猛まうならず。 |
子張曰 | 子張しちやう曰く、 |
何謂惠而不費 | 何なにをか恵けいにして費つひやさずと謂いふ。 |
子曰 | 子曰く、 |
因民之所利而利之 | 民たみの利りする所ところに因よりて之これを利りす、 |
斯不亦惠而不費乎 | 斯こゝに亦また恵けいにして費つひやさざるにあらずや。 |
擇可勞而勞之 | 労らうすべきを択えらんで之これを労らうす、 |
又誰怨 | 又また誰たれをか怨うらみん。 |
欲仁而得仁 | 仁じんを欲ほつして仁じんを得う、 |
又焉貪 | 又また焉いづくんぞ貪むさぼらん。 |
君子無衆寡 | 君子くんしは衆寡しうくわと無なく、 |
無小大 | 小大せうだいと無なく、 |
無敢慢 | 敢あへて慢まんする無なし、 |
斯不亦泰而不驕乎 | 斯こゝに亦また泰たいにして驕おごらざるにあらずや。 |
君子正其衣冠 | 君子くんしは其その衣冠いくわんを正たゞし、 |
尊其瞻視 | 其その瞻視せんしを尊たかくし、 |
儼然人望而畏之 | 儼然げんぜんとして人ひと望のぞんで之を畏おそる、 |
斯不亦威而不猛乎 | 斯こゝに亦また威ゐにして猛まうならざるにあらずや。 |
子張曰 | 子張しちやう曰く、 |
何謂四惡 | 何なにをか四悪しあくと謂いふ、 |
子曰 | 子曰く、 |
不敎而殺謂之虐 | 教をしへずして殺ころす、之これを虐ぎやくと謂いふ。 |
不戒視成謂之暴 | 戒いましめずして成せいを視みる、之これを暴ばうと謂いふ。 |
慢令致期謂之賊 | 令れいを慢まんにして期きを致いたす、之これを賊ぞくと謂いふ。 |
猶之與人也 | 猶ひとしく之れ人ひとに与あたふるなり、 |
出納之吝 | 出納すゐたふの吝らんなる、 |
謂之有司 | 之これを有司いうしと謂いふ。 |
20-3 | |
子曰 | 子曰く、 |
不知命 | 命めいを知しらざれば、 |
無以爲君子也 | 以もつて君子くんしたる無きなり、 |
不知禮 | 礼れいを知しらざれば、 |
無以立也 | 以もつて立たつ無きなり、 |
不知言 | 言げんを知しらざれば、 |
無以知人也 | 以もつて人ひとを知しる無きなり。 |
學→学 說→説 來→来 樂→楽 爲→為 亂→乱 傳→伝 乘→乗 餘→余 德→徳 溫→温 儉→倹 觀→観 禮→礼 齊→斉 勞→労 發→発 祿→禄 對→対 擧→挙 勸→勧 爭→争 繪→絵 徵→徴 獻→献 與→与 聽→聴 產→産 惠→恵 吿→告 歸→帰 黨→党 舊→旧 惡→悪 鄰→隣 輕→軽 辭→辞 廢→廃 畫→画 徑→径 將→将 變→変 陷→陥 濟→済 竊→窃 據→拠 藝→芸 藏→蔵 戰→戦 圖→図 數→数 虛→虚 擇→択 鄕→郷 氣→気 盡→尽 拜→拝 歲→歳 藥→薬 寢→寝 內→内 莊→荘 讀→読 國→国 會→会 獨→独 辨→弁 艸→草 專→専 證→証 稱→称 齒→歯 晉→晋 覺→覚 竝→並 靈→霊 蠻→蛮 敎→教 龜→亀 壯→壮 鬭→闘 戶→戸 體→体 亞→亜 榮→栄 曆→暦 繼→継