原文 (実践女子大本) |
現代語訳 (渋谷栄一) |
注釈 【渋谷栄一】 |
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世のはかなきことを嘆くころ、 | 世の中のはかないことを嘆いていたころ、 | 【世のはかなきことを嘆くころ】-夫宣孝を亡くして間もなくのころ。長保三年(一〇〇一)四月二十五日、夫宣孝死去。 |
陸奥に名ある所 | 陸奥国の名所を | |
どころ描いたるを見て、 | あれこれ描いた絵を見て、 | |
塩釜、 | 塩釜、 | 【塩釜】-陸奥国の歌枕。塩釜から、塩焼く煙が連想される。 |
見し人の | 連れ添った〈よく見た〉人が | |
煙となりし | 火葬の煙となった | |
夕べより | 夕べから | |
名ぞ睦ましき | その名前が親しく思われる、 | 【睦まし】-「室町時代末頃からムツマジと濁音にもいう」(岩波古語辞典) |
塩釜の浦 | 塩釜の浦よ | |
*「よのはかなきことをなげくころ、みちのくにに名あるところどころかきたるゑを見侍りてよめる 紫式部
見し人の煙なりし夕べより名ぞ睦ましき塩釜の浦」(寿本「新古今集」哀傷 八二〇)
*「見し人のけぶりとなりし夕よりなもむつましきしほがまのうら」(書陵部本「時代不同歌合」一一四)