原文 (実践女子大本) |
現代語訳 (渋谷栄一) |
注釈 【渋谷栄一】 |
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同じ人、 | 同じ人が、 | 【同じ人】-亡き夫宣孝の娘。 |
「荒れたる宿の | 「荒れた我が家の | |
桜のおもしろきこと」とて、 | 桜の花が美しいこと」と言って、 | |
折りておこせたるに、 | 折って寄越したので、 |
【折りて】-実践本「おる」は定家の仮名遣い。 【おこせたる】-「をこす」は定家の仮名遣い。 |
散る花を | 散る花を | |
嘆きし人は | 嘆いていたの〈人〉は | |
木のもとの | 散った後の木のもとの〈子供達が〉 | 【木のもと】-桜の花の散った後、自分の死後を喩える。〈木の下と子の許をかける(新大系・集成)〉 |
寂しきことや | 寂しいことを | |
かねて知りけむ | かねて御存じでいたのでしょうか | |
「思ひ絶えせぬ」と、 | 「心配が絶えない」と、 | 【思ひ絶えせぬ】-「さけばちるさかねばこひし山桜 思ひたえせぬ花のうへかな」(中院本「拾遺集」春 中務 三六)を引歌とする。 |
亡き人の言ひけることを | あの亡くなった方が言っていたことを | |
思ひ出でたるなり。 | 思い出したのである。 | |