原文 (実践女子大本) |
現代語訳 (渋谷栄一) 〈適宜当サイトで改め〉 |
注釈 【渋谷栄一】 〈適宜当サイトで補注〉 |
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人の | あの人が |
【人】-夫の宣孝。 〈通説は夫と断定し(新大系等)結婚一年目などと展開。しかし特定できないとする説(新注)もある。それでも創作的詠歌とするのは結局同じ穴(家父長的結婚観)のムジナ。題詠でないことを明示したものか(上原廣田・世界)に至っては、なぜ頑なに素直に別人と見ないか。そういう決まりでもあるのか。夫の滑稽な描写と死亡した歌序を無視して〉 |
おこせたる、 | 寄越した歌、 | 【おこせたる】-実践本「をこす」は定家の仮名遣い。 |
うち忍び | 〈人目を忍び、思い偲び |
〈忍び(隠れる)と偲び(慕う)を掛ける。独自。この枕詞だけでも夫とではない大きな要素となる〉 |
嘆き明かせば |
嘆き明かすと〉 △ため息をつきながら一夜を明かすと、 |
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しののめの | 〈東雲の〉 | |
ほがらかにだに | 明け方になってもはっきりとあなたの |
【ほがらかに】-はっきりと。 〈朗らか:明るい。はっきりととするのが通説だが、原義に忠実にして通る。 だに:せめて…だけでも。…でさえ〉 |
夢を見ぬかな | 夢を見ることができませんでした | |
〈検討: 新大系:あなたのことを思って眠れぬ夜を嘆き明かしたので、明け方になっても「きぬぎぬ」どころか、夢でさだかに逢うことすらも叶わぬことです→「きぬぎぬ」への言及は文脈が違うから不要。文脈と文言に忠実にしてほしい。 集成:お前に逢えずに、昨夜は人知れず嘆き明かしたので、夢の中で晴れやかに逢うことでさえもできなかった →文体がストーカー。夢の中で晴れやかに会うという表現はするか。しかも夫婦で? 恋愛観が錯綜している〉
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「しののめのほがらほがらとあけゆけば おのかきぬぎぬなるぞかなしき 」(古今集恋三637・詠み人知らず)