原文 実践女子大本 (定家本系筆頭) |
現代語訳 (渋谷栄一) |
注釈 【渋谷栄一】 |
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里に出でて、 | 実家に退出していて、 | |
大納言の君、 | 大納言の君が、 | 【大納言の君】-源時通の娘の簾子、道長の北の方倫子の姪。 |
文賜へるついでに、 | 手紙を下さった折に、 | |
浮き寝せし | 浮き寝をした | 【浮き寝せし水の上】-宮仕え生活を暗喩。 |
水の上のみ | 水の上ばかりが | |
恋しくて | 恋しく思われて | |
鴨の上毛に | 鴨の上毛の | 【鴨の上毛】-寒さを被うことを象徴。 |
さえぞ劣らぬ | 冷たさにも負けない侘しさです | 【さえ】-「冴える」意。 |
*「うきねせし水のうへのみ恋しくてかものうはげにさえぞおとらぬ」(黒川本「紫日記」一一)
*「冬ころさとにいでて、大納言三位につかはしける 紫式部
うきねせし水のうへのみこひしくてかものうはげにさえぞおとらぬ」(樋口芳麻呂氏本「新勅撰集」雑一 一一〇五)