原文 (実践女子大本) |
現代語訳 (渋谷栄一) 〈適宜当サイトで改め〉 |
注釈 【渋谷栄一】 〈適宜当サイトで補注〉 |
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又、 | 再び、 | |
同じ筋、 | 同じ心持ちを、 |
【同じ筋】-同じ心持ち。 〈92入る方はさやかなりける月影を上の空にも待ちし宵かな〉 |
九月、 | 九月の | |
月明かき夜、 | 月の明るい夜に、 | 〈「月明かき」で92のように歌詞を月影としないことからも、月影を月光とする定義は誤り〉 |
おほかたの | 世間一般の | |
秋のあはれを | 秋の〈哀れ〉情趣を |
【秋】-「飽き」を掛ける。夫の夜離れを嘆く。 〈通説は92から夫とするがその必然の根拠が文脈になく、「思われる」ばかりで根拠を示さない。 それらが根拠とするであろう月の解釈を左右させることからも論理的に誤り。 「おほかたの秋のあはれ」とは何か(大方の常識だろ?)というのがこの歌の趣旨。 秋の夜長で暇だから相手せよ(言わせるな)というのが文言(92:待ちし宵かな)に即した解釈。 ×新大系「男に飽きられた女が一様にいだく悲しみを思いやって下さい」→男目線で傲慢で浅はか ×集成「あなたに飽きられた晩秋のこの頃の悲しみを思ってみて下さい」→これが「おほかた」とは男都合すぎ、以下の文体も無視している |
思ひやれ | 思いやって〈よ〉ください | 〈思いやれ、は端的な命令形で、思ってみて下さいではない〉 |
月に心は | 月に〈心が〉誘われて心は |
【月】-他の妻妾を暗喩。 〈他の女とするのも通説だが、92の月影を夫とするのと整合しない。 夫との歌という前提で月を左右させるから前提が誤り。 ×集成「今夜の月のように美しい方にあなたの心が奪われていらっしゃる」→寝取った相手を美化する心情、命令形のあとで敬語を使う心情はありえない。 |
あくがれぬとも |
〈離れてしまった〉 浮かれ出たとしても |
〈あくがる:さまよう・心が離れる 「月に心はあくがれぬとも」で「上の空だったとしても」〉 |
「題しらず 紫式部
おほかたの秋のあはれをおもひやれ月に心はあくがれぬとも」(陽明文庫本「千載集」秋上 二九九)