原文 (実践女子大本) |
現代語訳 (渋谷栄一) 〈適宜当サイトで改め〉 |
注釈 【渋谷栄一】 〈適宜当サイトで補注〉 |
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何の折にか、 | 何の折であったか、 | 【折にか】-実践本「おり」は定家の仮名遣い。 |
人の返り事に、 | あの人への返事に、 |
【人】-夫の宣孝であろう。 〈こうして通説は以降、夫の夜離れを嘆く一連の歌とする。 しかしその大前提がここと以下のような安易な推測しかなく不適当。 論拠を示さず推測を重ね既成事実化するのが古文界の近代以前論法〉 |
入る方は | 月の入る方角〈いる所〉は |
【入る方】-本妻のもとを暗喩。 〈これも夫ありきの解釈で前提に欠け、文脈に根拠がない妄想の域。 入る方(いるかた)は居る所と掛けた解する。あの人の居所。 |
さやかなりける | はっきりしていた | つまり在室確認。距離感から宮中の人で、それを宵に待っているから、少なくとも74夜もすがらで訪問してきて75ただならじと式部が拒んだ道長ではない〉 |
月影を | 月光〈月の面影〉を |
【月影】-夫の宣孝を暗喩。 〈とするのが通説だが、月影は源氏の意味でも用いられ、特別な人・好きな人の面影。月影で夫なら1番歌の月影は何か。 夫の死後めぐりあった人ではなく夫とみなす根拠は何か。なぜ既に死んだ歌序を無視して夫と頑なにみなすか。それは学者達の願望的結婚観しかない。 源氏物語は後妻の空蝉が、若い源氏に言い寄られ始まる。まして紫式部はシングルマザーで積極的に婚活しようとする強い客観的動機もある。実際したかはともかく〉 |
上の空にも | ぼうっと上の空で | |
待ちし宵かな | 待っていた〈夜の入り〉夕べでしたわ | 〈宵:夜に入り間もない頃。夕べの後〉 |
「人につかはしける 紫式部
いるかたはさやかなりける月かげをうはのそらにもまちしよひかな」(寿本「新古今集」恋四 一二六二)