原文 (実践女子大本) |
現代語訳 (渋谷栄一) |
注釈 【渋谷栄一】 |
---|---|---|
世の中の騒がしきころ、 | 世の中の騒然としていたころ、 | 【世の中の騒がしきころ】-長保二年(一〇〇〇)冬から三年にかけて疫病が流行した。夫宣孝は昨年の三年四月二十五日に亡くなった。「さはかし」は平安の仮名遣い。 |
朝顔を人のもとへやるとて、 | 朝顔を人のもとへ贈るとして、 | |
消えぬ間の | 死なない間の | |
身をも知る知る | わが身を知りつつ | |
朝顔の | 朝顔のように | 【朝顔】-歌語、はかない花の象徴。 |
露と争ふ | はかない露と先を競う | 【露】-歌語、はかなさの象徴。 |
世を嘆くかな | 世を嘆くことよ | |
「世の中つねならず侍りける比、槿の花を人のもとにつかはすとて 紫式部
きえぬまの身をもしるしるあさがほの露とあらそふ世を歎くかな」(吉田兼右筆本「玉葉集」雑四 二三九一)