原文 (実践女子大本) |
現代語訳 (渋谷栄一) |
注釈 【渋谷栄一】 |
---|---|---|
すかされて、 |
〈当てが外れて〉 ×気持ちがなだめられて、 |
【すかされて】-なだめられて。式部の歌が夫婦仲の永続を願う内容であったことから、宣孝は気持ちがなだめられた。 〈わたしの言葉になだめすかされて、とするのが通説(新大系・集成)だが、すかされ(かわされ・放っておかれ)の素直な語義を真逆に反転させた補いで、前段同様、男本位の恣意的解釈を重ねた曲解。通説解釈は全体の文脈とも全く整合しない〉 |
いと暗うなりたるに、 | たいそう暗くなったころに | |
おこせたる、 | 寄越した歌、 | |
東風に | 春の東風で | 【東風に解くる】-こちかぜ。「孟春之月、東風解氷」(礼記・月令)を踏まえた表現。 |
解くるばかりを | 解けるくらいの氷ならば | |
底見ゆる | ||
石間の水は | 石間の水は | 【石間の水】-石と石の間を流れる水、浅い水。相手作者の浅い心を譬喩。 |
絶えば絶えなむ | 絶えるなら絶えればいいのだ | 【絶えば絶えなむ】-ヤ下二「絶え」未然形+接続助詞「ば」順接の仮定条件、ヤ下二「絶え」未然形+終助詞「なむ」願望の意。絶えてしまう仲ならば、絶えてしまってもよい。 |