原文 (実践女子大本) |
現代語訳 (渋谷栄一) |
注釈 【渋谷栄一】 |
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宮の御産屋、 | 若宮の御産屋の | 【宮】-敦成親王、のちの後一条天皇の誕生。なお第一親王は定子腹の敦康親王。 |
五日の夜、 | 五日目の夜、 | 【五日の夜】-寛弘五年(一〇〇八)九月十五日の夜。 |
月の光さへ | 月の光までが | |
ことに隈なき | 格別に明るく | |
水の上の橋に、 | 遣水の上の渡殿の橋にさして、 | |
上達部、 | 上達部や | |
殿よりはじめたてまつりて、 | 殿をはじめ申して、 | |
酔ひ乱れ | 酔い乱れて、 | |
ののしりたまふ。 | 大騒ぎなさる。 | |
盃の折にさし出づ。 | 酒盃の折にさし出した歌、 | |
めづらしき | 新しい | |
光さしそふ | 光がさし加わった | |
盃は | 盃は | |
もちながらこそ | 持ちながら満月のまま | 【もちながら】-「望月」と「持ち」の掛詞。 |
千世をめぐらめ | 千年もめぐっていくことでしょう | |
*「めづらしき光さしそふさか月はもちながらこそ千代をめぐらめ」(黒川本「紫日記」五)
*「後一条院うまれさせたまひて七夜に人人まゐりあひて、さか月いだせとはべりければ 紫式部
めづらしきひかりさしそふさか月はもちながらこそちよもめぐらめ」(書陵部本「後拾遺集」賀 四三三)
*「珍しき光指添ふ杯はもちながらこそちよをめぐらめ 紫式部」(梅沢記念館旧蔵本「新撰朗詠集」四五〇)
*「めづらしき光さしそふさかづきはもちながらこそ千世もめぐらめ」(群書類従本「後六々撰」一二一)
*「めづらしき光さしそふさか月はもちながらこそ千代もめぐらめ」(穂久邇文庫本「古来風体抄」賀 四三三)
*「珍しき光さしそふ杯はもちながらこそ千代をめぐらめ」(梅沢本「栄華物語」五八)
*「めづらしき光さしそふ杯はもちながらこそ千世は廻らめ」(「今鏡」一一)
*「後一条院むまれさせ給ひて、七夜に、女房さかづきいだせと侍りければ 紫式部
めづらしき光さしそふさかづきはもちながらこそ千世もめぐらめ」(書陵部本「定家八代抄」賀 六〇三)