元応の清暑堂の御遊に、玄上は失せにし頃、菊亭大臣、牧馬を弾じ給ひけるに、座に着きて、まづ柱をさぐられたりければ、ひとつ落ちにけり。 御懐にそくひを持ち給ひたるにて、つけられにければ、神供の参るほどによく干て、ことゆゑなかりけり。 いかなる意趣かありけん、物見ける衣かづきの、寄りて放ちて、もとのやうに置きたりけるとぞ。