世の人の心まどはすこと、色欲にはしかず。 人の心はおろかなるものかな。 匂ひなどはかりのものなるに、しばらく衣装に薫物すと知りながら、えならぬ匂ひには、必ず心ときめきするものなり。 久米の仙人の、物洗ふ女の脛の白きを見て、通を失ひけんは、まことに手足、はだへなどのきよらに、肥えあぶらづきたらんは、外の色ならねば、さもあらんかし。