原文 | 現代語訳 | 解釈上の問題点 |
---|---|---|
いにしへの聖の御代の | いにしえの聖人・聖帝の代の |
●聖=古来渡来概念。孔子など世と国を超え模範となる人物。 △徳の高い+天子(旧大系): 天子=渡来概念。天皇は「聖」の語義とは異なる。 ×天皇(醍醐・村上:900年代前半)とする説もあるが、それは各人の価値観。 著者は藤原と天皇をあげ、両者の300年の幅からすると奈良以前もある。 |
政をも忘れ、 | 政治も忘れ、 | |
民の愁、 | 民の憂いや、 | ・愁【しゅう・うれい】 |
国のそこなはるるをも知らず、 | 国が損なわれることも知らず、 | |
よろづにきよらをつくして | 全てに美麗を尽くして | ・きよら【清ら】 |
いみじと思ひ、 | 凄いと思い、 | 〇いみじ:甚だしいの口語調で凄い。 |
所せきさましたる人こそ、 | これ見よがしの人こそ、 |
〇所せし【所狭し】:これ見よがし(独自) △あたりせましとえらそうにふるまっている(旧大系・全注釈)、 △ぎょうさんな・傍若無人(全注釈の注)、 △財宝をぎっしり溜め込んだ様子(角ソ) 相手側:でかい態度、大袈裟、沢山の金・権力・能力・物を持ってる直接間接のアピール 例:服や袋等の目につくでかいロゴ、地位資格肩書の羅列等 受手側:大袈裟・面倒・目につく・下品(上記の状態に対する各人の印象) |
うたて、 | ひどく不快で、 | ・うたて【転】:ひどい・不快 |
思ふ所なく見ゆれ。 | 考えなしに見える。 | 無思慮とせず語調に合わせた |
「衣冠より馬、車にいたるまで、 | 衣服・冠から馬・車に至るまで、 | |
あるにしたがひて用ゐよ。 | あるに従って用いよ。 | |
美麗を求るなかれ」とぞ、 | 美麗を求めるでない」と、 | |
九条殿の遺誡 | 九条殿の『遺誡』 | ・九条殿:右大臣・藤原師輔(~960) |
にも侍る。 | にもあられる。 | ●はべり:あり+謙譲丁寧。自分を下げて相手を上げる。 |
基本の訳は「ございます」(①敬意対象に、②私・誰々はございます)。 しかし断定調の徒然草で突然「ございます」は不自然なので、かしこまって相手を上げる意味にした。 |
||
順徳院の、 | 順徳院が、 | ・順徳天皇(~1242) |
禁中の事ども | 宮中の事などを | ・『禁秘抄』 |
書かせ給へるにも、 | お書きなされたのにも、 | ・たまふ:下さる、お~なさる ・せたまふ:最高敬語 |
「おほやけの奉り物は、 | 「公への奉納物は、 | ・「天位着御物以疎為美」を引いたとされるが、表現が異なる(これ見よがしではなくなっている)。 |
おろそかなるもの | 粗末な(=派手でない)もの |
・おろそかなり:粗略な。 ただし天皇のおろそか(粗末・適当)は、普通の人の粗末・適当と基本異なる |
をもてよしとす」 | をもって良しとする」 | ・よし:禁秘抄では「美」。先行する「美麗」と対にして理解する。 |
とこそ侍れ。 | とあられることだ。 |
●はべり:上記九条部分参照。 ここでは謙譲を係り結びで強調しているので、裏返して強めの敬語とした。 謙譲丁寧は尊敬の特別概念で当然尊敬 |