登場人物
♪おなじおほきおとど
♀左大臣の御母・菅原の君
亭子の帝
♀后の宮
原文
おなじおほきおとど、
左大臣の御母・菅原の君かくれ給ひにけり。
御服はて給ひにけるころ、
亭子の帝なむ、内に御消息聞こえ給ひて、色ゆるされ給ひける。
さりければ、大臣いと清らに、蘇芳がさねなど着給ひて、
后の宮にまゐり給うて、
「院の御消息のいとうれしく侍りて、かく色ゆるされて侍ること」
など聞こえ給ふ。
さて、詠み給ひける。
♪146
ぬぐをのみ 悲しと思ひし なき人の
かたみの色は またもありけり
とてなむ、泣き給ひける。
そのほどは、中弁になむ、ものし給ひける。