亭子の帝
♪♪♀うかれめ=しろ
亭子の帝、
河尻におはしましにけり。
うかれめに、しろといふ者ありけり。
召しにつかはしたりければ、まゐりてさぶらふ。
上達部、殿上人、みこたち、あまたさぶらひ給ひければ、
しもに遠くさぶらふ。
「かくはるかにさぶらふよし、歌つかまつれ」
とおほせられければ、
すなはちよみ奉りける。
♪234
浜千鳥 とびゆくかぎり ありければ
雲立つ山を あはとこそ見れ
と詠みたりければ、
いとかしこくめで給ひて、かづけ物給ふ。
♪235
命だに 心にかなふ ものならば
なにかわかれの 悲しからまし
といふ歌も、
この、しろがよみたる歌なりけり。