♪♪♪♀修理の君=おなじ女
♪♪♪♪♪右馬の頭
修理の君に、
右馬の頭すみける時、
「方のふたがりければ、
方たがへにまかるとてなむ、えまゐり来ぬ」
といへりければ、
♪126
これならぬ ことをもおほく たがふれば
恨みむ方も なくぞわびしき
かくて、右馬の頭いかずなりにけるころ、
よみておこせたりける。
♪127
いかでなほ 網代の氷魚に こととはむ
何によりてか われを問はぬと
といへりければ、
返し、
♪128
網代より ほかには氷魚の よるものか
知らずは宇治の 人に問へかし
また、おなじ女に通ひける時、
つとめてよんだりける。
♪129
あけぬとて 急ぎもぞする 逢坂の
きり立ちぬとも 人に聞かすな
男、
はじめごとよんだりける。
♪130
いかにして われは消えなむ 白露の
かへりてのちの ものは思はじ
返し、
♪131
垣ほなる 君が朝顔 見てしかな
かへりてのちは ものや思ふと
おなじ女に、
けぢかくものなどいひて、
かへりてのちによみてやりける。
♪132
心をし 君にとどめて 来にしかば
もの思ふことは われにやあるらむ
修理が返し、
♪133
たましひは をかしきことも なかりけり
よろづの物は からにぞありける