登場人物
陽成院の二のみこ
♪♀後蔭の中将のむすめ
♀女五の宮
原文
陽成院の二のみこ、
後蔭の中将のむすめに、年ごろ住み給ひけるを、
女五の宮をえ奉り給ひて後、さらにとひ給はざりければ、
いまはおはしますまじきなめりと、
思ひ絶えて、いとあはれにてゐ給へりけるに、
いと久しくありて、
思ひかけぬほどにおはしましたりければ、
えものも聞こえで、にげて戸のうちに入りにけり。
かへり給ひて、
みこ、朝に、
「などか年ごろのことも申さむとて、まうでたりしに、隠れ給ひにし」
とありければ、
ことばはなくて、かくなむ。
♪34
せかなくに 絶えと絶えにし 山水の
たれしのべとか 声を聞かせむ