♪16故源大納言の君(源清蔭)
♪17♀忠房のぬしのみむすめ東の方(藤原忠房の娘。千兼の姉妹、としこの義理姉妹)
♀亭子院の若宮(通説:醍醐天皇皇女韶子内親王)
故源大納言の君、
忠房のぬしの御女(みむすめ)東の方を、年ごろ思ひて住み渡り給ひけるを、
亭子院の若宮につき奉り給ひて、はなれ給うて、ほど経にけり。
子どもなどありければ、言も絶えず、おなじ所になむ住み給ひける。
さて、詠み給へりける、
♪16
住の江の 松ならなくに 久しくも
君と寝ぬ夜の なりにけるかな
とありければ、返し、
♪17
久しくは おもほえねども 住の江の
松やふたたび 生ひかはるらむ
となむありける。