登場人物
♪亭子の帝(宇多天皇)
♪♀伊勢の御(宇多天皇の御息所。古今集22首で女性筆頭歌人。三十六歌仙:百人一首19歌人。初期女性歌人最重要人物。先行の小町は文屋とセットで実質単体ではないため)
原文
亭子の帝、今はおりゐさせ給ひなむとするころ、
弘徽殿の壁に、伊勢の御の書きつけける、
♪1
別るれど あひもをしまぬ ももしきを
見ざらむことの なにか悲しき
とありければ、
帝、御覧じて、
そのかたはらに書きつけさせたまうける。
♪2
身一つに あらぬばかりを おしなべて
行きめぐりても などか見ざらむ
となむありける。