原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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到坐 尾津前 一松之許。 |
尾津の前さきの 一つ松のもとに 到りまししに、 |
尾津おつの埼の 一本松のもとに おいでになりましたところ、 |
先御食之時。 |
先に、 御食みをしせし時、 |
先に食事をなさつた時に |
所忘其地 御刀。 |
其地そこに忘らしたりし 御刀みはかし、 |
其處にお忘れになつた 大刀が |
不失猶有。 | 失うせずてなほありけり。 | 無くならないでありました。 |
爾 御歌曰。 |
ここに 御歌よみしたまひしく、 |
そこで お詠み遊ばされたお歌、 |
袁波理邇 | 尾張に | 尾張の國に |
多陀邇牟迦幣流 | 直ただに向へる | 眞直まつすぐに向かつている |
袁都能佐岐那流 | 尾津の埼なる | 尾津の埼の |
比登都麻都 | 一つ松、 | 一本松よ。 |
阿勢袁 | 吾兄あせを。 | お前。 |
比登都麻都 | 一つ松 | 一本松が |
比登邇阿理勢婆 | 人にありせば、 | 人だつたら |
多知波氣麻斯袁 | 大刀佩はけましを | 大刀を佩はかせようもの、 |
岐奴岐勢麻斯袁 | 衣きぬ着せましを。 | 着物を著せようもの、 |
比登都麻都 | 一つ松、 | 一本松よ。 |
阿勢袁 | 吾兄を。 | お前。 |