原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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又一時天皇。 登幸 葛城之山上。 |
またある時、天皇 葛城かづらきの山の上に 登り幸でましき。 |
また或る時、天皇が 葛城山の上に お登りになりました。 |
爾大猪出。 | ここに大きなる猪出でたり。 | ところが大きい猪が出ました。 |
即天皇。 以鳴鏑。 射其猪之時。 |
すなはち天皇 鳴鏑なりかぶらをもちて その猪を射たまふ時に、 |
天皇が 鏑矢かぶらやをもつて その猪をお射になります時に、 |
其猪怒而。 | その猪怒りて、 | 猪が怒つて |
宇多岐依來。 〈宇多岐 三字以音〉 |
うたき 依り來。 |
大きな口をあけて 寄つて來ます。 |
故天皇。 | かれ天皇、 | 天皇は、 |
畏其宇多岐。 | そのうたきを畏みて、 | そのくいつきそうなのを畏れて、 |
登坐榛上。 | 榛はりの木の上に登りましき。 | ハンの木の上にお登りになりました。 |
爾歌曰。 | ここに御歌よみしたまひしく、 | そこでお歌いになりました御歌、 |
夜須美斯志 | やすみしし | 天下を知ろしめす |
和賀意富岐美能 | 吾わが大君の | 天皇の |
阿蘇婆志斯 | 遊ばしし | お射になりました |
志斯能夜美斯志能 | 猪の、病猪やみししの | 猪の手負い猪の |
宇多岐加斯古美 | うたき畏み、 | くいつくのを恐れて |
和賀爾宜能煩理斯 | わが逃げ登りし、 | わたしの逃げ登つた |
阿理袁能 | あり岡をの | 岡の上の |
波理能紀能延陀 | 榛はりの木の枝。 | ハンの木の枝よ。 |