原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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天皇。 初爲將所知 天津日繼之時。 |
天皇 初め天つ日繼 知らしめさむとせし時に、 |
初はじめ天皇てんのう、 帝位に お即つきになろうとしました時に |
天皇辭而。 | 辭いなびまして、 | 御辭退遊ばされて |
詔之。 | 詔りたまひしく | |
我者。 有一長病。 |
「我は 長き病しあれば、 |
「わたしは 長い病氣があるから |
不得所知日繼。 |
日繼をえ知らさじ」と 詔りたまひき。 |
帝位に即つくことができない」 と仰せられました。 |
然大后始而。 | 然れども大后より始めて、 | しかし皇后樣をはじめ |
諸卿等。 | 諸卿まへつぎみたち | 臣下たちも |
因堅奏而乃。 | 堅く奏すに因りて、 | 堅くお願い申しましたので、 |
治天下。 | 天の下治らしめしき。 | 天下をお治めなさいました。 |
此時。 | この時、 | この時に |
新良國主。 | 新羅しらぎの國主こにきし、 | 新羅の國主が |
貢進。 御調 八十一艘。 |
御調物みつぎもの 八十一艘やそまりひとふね 獻りき。 |
御調物みつぎものの 船八十一艘を 獻りました。 |
金波鎭漢紀武(こんぱちんかんキム) |
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爾御調之大使。 | ここに御調の大使、 | その御調の大使は |
名云 金波鎭 漢紀武。 |
名は 金波鎭漢紀武 こみはちに かにきむといふ。 |
名なを 金波鎭漢紀武 こみぱちに かにきむと言いました。 |
此人 深知藥方。 |
この人 藥の方みちを深く知れり。 |
この人が 藥の處方をよく知つておりましたので、 |
故治差。 帝皇之御病。 |
かれ天皇が御病を 治めまつりき。 |
天皇の御病氣を お癒し申し上げました。 |