原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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大雀→隼→女鳥 |
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亦天皇。 | また天皇、 | また天皇は、 |
以其弟 速總別王。 爲媒而。 |
その弟 速總別の王を 媒なかだちとして、 |
弟の ハヤブサワケの王を 媒人なこうどとして |
乞 庶妹 女鳥王。 |
庶妹ままいも 女鳥めとりの王を 乞ひたまひき。 |
メトリの王を お求めになりました。 |
爾女鳥王。 | ここに女鳥の王、 | しかるにメトリの王が |
語 速總別王曰。 |
速總別の王に 語りて曰はく、 |
ハヤブサワケの王に 言われますには、 |
因大后之強。 | 「大后の強おずきに因りて、 | 「皇后樣を憚かつて、 |
不治賜 八田若郎女。 |
八田の若郎女を 治めたまはず。 |
ヤタの若郎女をも お召しになりませんのですから、 |
故思不仕奉。 | かれ仕へまつらじと思ふ。 | わたくしもお仕え申しますまい。 |
吾爲 汝命之妻。 |
吾あは 汝が命の妻めにならむ」 といひて、 |
わたくしは あなた樣の妻になろうと思います」 と言つて |
即相婚。 | すなはち婚あひましつ。 | 結婚なさいました。 |
是以 速總別王。 不復奏。 |
ここを以ちて 速總別の王 復奏かへりごとまをさざりき。 |
それですから ハヤブサワケの王は 御返事申しませんでした。 |
それおれの? |
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爾天皇。 | ここに天皇、 | ここに天皇は |
直幸 女鳥王之 所坐而。 |
直ただに 女鳥の王の います所にいでまして、 |
直接に メトリの王の おいでになる處に行かれて、 |
坐其殿戶之閾上。 |
その殿戸の 閾しきみの上にいましき。 |
その戸口の 閾しきいの上においでになりました。 |
於是女鳥王。 坐機而 織服。 |
ここに女鳥の王 機はたにまして、 服みそ織りたまふ。 |
その時メトリの王は 機はたにいて 織物を織つておいでになりました。 |
爾天皇歌曰。 | ここに天皇、歌よみしたまひしく、 | 天皇のお歌いになりました御歌は、 |
賣杼理能 | 女鳥の | メトリの女王の |
和賀意富岐美能 | 吾が王おほきみの | |
淤呂須波多 | 織おろす機はた、 | 織つていらつしやる機はたは、 |
他賀多泥呂迦母 | 誰たが料たねろかも。 | 誰の料でしようかね。 |
ちゃう・雀はさがっとれー |
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女鳥王答歌曰。 | 女鳥の王、答へ歌ひたまひしく、 | メトリの王の御返事の歌、 |
多迦由久夜 | 高行くや | 大空おおぞら高たかく飛とぶ |
波夜夫佐和氣能 | 速總別の | ハヤブサワケの王の |
美淤須比賀泥 | みおすひがね。 | お羽織の料です。 |
故天皇。 | かれ天皇、 | それで天皇は |
知其情。 | その心を知らして、 | その心を御承知になつて、 |
還入於宮。 | 宮に還り入りましき。 | 宮にお還りになりました。 |