原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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淡路では出会わじ |
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於是天皇。 | ここに天皇、 | ここに天皇は |
戀其黑日賣。 | その黒日賣に戀ひたまひて、 | 黒姫をお慕い遊ばされて、 |
欺大后。 | 大后を欺かして、のりたまはく、 | 皇后樣に欺いつわつて、 |
曰 欲見 淡道嶋而。 |
「淡道島あはぢしま 見たまはむとす」 とのりたまひて、 |
淡路島を 御覽になる と言われて、 |
幸行之時。 | 幸いでます時に、 | |
坐淡道嶋。 | 淡道島にいまして、 | 淡路島においでになつて |
遙望歌曰。 |
遙はろばろに望みさけまして、 歌よみしたまひしく、 |
遙にお眺めになつて お歌いになつた御歌、 |
オノゴロ島 |
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淤志弖流夜 | おしてるや、 | 海の照り輝く |
那爾波能佐岐用 | 難波の埼よ | 難波の埼から |
伊傳多知弖 | 出で立ちて | 立ち出でて |
和賀久邇美禮婆 | わが國見れば、 | 國々を見やれば、 |
阿波志摩 | 粟島 | アハ島や |
淤能碁呂志摩 | 淤能碁呂島おのごろしま、 | オノゴロ島 |
阿遲摩佐能 | 檳榔あぢまさの | アヂマサの |
志麻母美由 | 島も見ゆ。 | 島も見える。 |
佐氣都志摩美由 | 佐氣都さけつ島見ゆ。 | サケツ島も見える。 |
ここでの歌詞「おしてるや」は万葉16巻末尾の乞食者の長歌(3886)とリンクしている。
「おしてるや 難波の小江に廬作り 隠りて居る葦蟹を
大君召すと何せむに
我を召すらめや 明けく
我が知ることを 歌人と
我を召すらめや 笛吹きと
我を召すらめや 琴弾きと
我を召すらめや かもかくも
命受けむと
今日今日と 飛鳥に至り
置くとも 置勿に至り
つかねども 都久野に至り
東の 中の御門ゆ 参入り来て 命受くれば」
歌詞の内容から、この乞食者は古事記を記した安万侶(通名人麻呂。万侶=人麻呂。字形。没年一致)の心境以外ありえない。人麻呂集こと万侶集で万葉集。
おしてるや難波、つぎねふや山城、あをによし奈良、そらみつ大和、これらはいずれもこの仁徳の章に記されている。
よってこれらはいずれも人麻呂語。