原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
---|---|---|
如此之白而。 | かく白して | かように申して |
乃隠也。 | ||
故随白而。 | ||
於出雲國之 多藝志之小濱。 〈多藝志三字以音〉 |
出雲の國の 多藝志たぎしの 小濱をばまに、 |
出雲の國の タギシの 小濱おはまに |
造天之御舍而。 | 天の御舍みあらかを造りて、 | りつぱな宮殿を造つて、 |
水戶神之孫。 | 水戸みなとの神の孫ひこ | 水戸みなとの神の子孫の |
櫛八玉神。 | 櫛八玉くしやたまの神 | クシヤタマの神を |
爲膳夫。 | 膳夫かしはでとなりて、 | 料理役として |
獻天御饗之時。 | 天つ御饗みあへ獻る時に、 | 御馳走をさし上げた時に、 |
祷白而。 | 祷ほぎ白して、 | 咒言を唱えて |
櫛八玉神 化鵜。 |
櫛八玉の神 鵜に化なりて、 |
クシヤタマの神が 鵜うになつて |
入海底。 | 海わたの底に入りて、 | 海底に入つて、 |
咋出底之波邇。 〈此二字以音〉 |
底の埴はこを 咋くひあがり出でて、 |
底の埴土はにつちを 咋くわえ出て |
作天八十毘良迦 〈此三字以音〉而。 |
天の八十平瓮びらかを 作りて、 |
澤山の神聖なお皿を 作つて、 |
鎌 海布之柄。 |
海布めの柄からを 鎌かりて |
また海草の幹みきを 刈り取つて來て |
作燧臼。 | 燧臼ひきりうすに作り、 | 燧臼ひうちうすと |
以海蓴之柄。 | 海蓴こもの柄を | |
作燧杵而。 | 燧杵ひきりぎねに作りて、 | 燧杵ひうちきねを作つて、 |
鑚出火 云。 |
火を鑽きり出でて まをさく、 |
これを擦すつて火をつくり出して 唱言となえごとを申したことは、 |
是我所燧火者、 | 「この我が燧きれる火は、 | 「今わたくしの作る火は |
於高天原者、 | 高天の原には、 | 大空高く |
神產巢日 御祖命之、 |
神産巣日御祖 かむむすび みおやの命の |
カムムスビの命の |
登陀流天之 新巢之凝烟 〈訓凝姻云州須〉之。 |
富足とだる天の 新巣にひすの 凝烟すすの |
富み榮える 新しい宮居の 煤すすの |
八拳垂摩弖燒擧。 〈麻弖二字以音〉 |
八拳やつか垂るまで 燒たき擧げ、 |
長く垂たれ下さがるように 燒たき上あげ、 |
地下者。 | 地つちの下は、 | 地の下は |
於底津石根 燒凝而。 |
底つ石根に 燒き凝こらして、 |
底の巖に 堅く燒き固まらして、 |
栲繩之 千尋繩打延、 |
栲繩たくなはの 千尋繩うち延はへ、 |
コウゾの 長い綱を延ばして |
爲釣海人之。 | 釣する海人あまが、 | 釣をする海人あまの |
口大之 尾翼鱸。 〈訓鱸云須受岐〉 |
口大の 尾翼鱸をはたすずき |
釣り上げた大きな 鱸すずきを |
佐和佐和邇 〈此五字以音〉 控依騰而。 |
さわさわに 控ひきよせ騰あげて、 |
さらさらと 引き寄せあげて、 |
打竹之 登遠遠 登遠遠邇 〈此七字以音〉 |
拆さき竹の とをを とををに、 |
机つくえも たわむまでに |
獻 天之眞魚咋也。 |
天の眞魚咋まなぐひ 獻る」 とまをしき。 |
りつぱなお料理を 獻上致しましよう」 と申しました。 |
故建御雷神。 | かれ建御雷の神 | かくしてタケミカヅチの神が |
返參上。 | 返りまゐ上りて、 | 天に還つて上つて |
復奏。 | ||
言向和平 葦原中國 之状。 |
葦原の中つ國を 言向ことむけ平やはしし 状をまをしき。 |
葦原の中心の國を 平定した 有樣を申し上げました。 |