原文 |
書き下し (武田祐吉) |
現代語訳 (武田祐吉) |
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此時 伊邪那伎命 大歡喜詔。 |
この時 伊耶那岐の命 大いたく歡ばして 詔りたまひしく、 |
イザナギの命は たいへんにお喜びになつて、 |
吾者 生生子而。 |
「吾は子を 生み生みて、 |
「わたしは 隨分ずいぶん 澤山たくさんの子こを生うんだが、 |
於生終。 | 生みの終はてに、 | 一番ばんしまいに |
得 三貴子。 |
三柱の貴子 うづみこを得たり」 と詔りたまひて、 |
三人の 貴い御子みこを得た」 と仰せられて、 |
即 | すなはち | |
其御頸珠之 玉緒母 |
その御頸珠 みくびたまの 玉の緒も |
頸くびに 掛けておいでになつた 玉の緒おを |
由良邇 〈此四字以音 下效此〉 取由良迦志而。 |
もゆらに 取りゆらかして、 |
ゆらゆらと 搖ゆらがして |
賜 天照大御神 而詔之。 |
天照らす大御神に 賜ひて 詔りたまはく、 |
天照あまてらす大神に お授けになつて、 |
汝命者。 所知高天原矣。 |
「汝が命は 高天の原を知らせ」と、 |
「あなたは 天をお治めなさい」 |
事依(而)賜也。 | 言依ことよさして賜ひき。 | と仰せられました。 |
故 其御頸珠名 |
かれ その御頸珠の名を、 |
この御頸おくびに掛かけた 珠たまの名を |
謂 御倉板擧之神。 〈訓板擧云多那〉 |
御倉板擧 みくらたなの神 といふ。 |
ミクラタナの神 と申します。 |
次詔 月讀命。 |
次に 月讀の命に詔りたまはく、 |
次に 月讀つくよみの命に、 |
汝命者。 所知夜之食國矣。 |
「汝が命は 夜よの食をす國を知らせ」と、 |
「あなたは 夜の世界をお治めなさい」 |
事依也。 〈訓食云袁須〉 |
言依さしたまひき。 | と仰せになり、 |
次詔 建速 須佐之男命。 |
次に 建速須佐 たけはやすさの男をの命に 詔りたまはく、 |
スサノヲの命には、 |
汝命者。 所知海原矣。 |
「汝が命は 海原を知らせ」と、 |
「海上を お治めなさい」 |
事依也。 | 言依さしたまひき。 | と仰せになりました。 |