伊勢物語 64段:玉すだれ あらすじ・原文・現代語訳

第63段
つくもがみ
伊勢物語
第三部
第64段
玉すだれ
第65段
在原なりける

 
 目次
 

 ・あらすじ(大意)
 

 ・原文対照
 

 ・現代語訳(逐語解説)
 
  吹く風にわが身をなさば 
 
  誰が許さば 
 
 
 
 

あらすじ

 
 
 むかし男が「みそかに語ること」もしなかった。
 
 「みそか」とは、月末か密かか、どっちなのか、そういう怪しさでヨんだ。
 

 吹く風を、我が身に例えて、玉簾(花か簾か)。
 
 ヒマを求めて入るもの、と解く。その心は、
 風のような風来坊のオレ様、するっと花のような女のもとにかいくぐって入るってか?
 

 返し(謎=天の声)、
 風のように頭が軽いこと言ってんじゃないよ。
 誰の許しで買って良いと思ってるの。
 あ、簾の話ね。え、花のこと? え、女?
 
 その心は、どっちだろうと隠そうと隠すまいと、天道はお見通し。ほんま救えない阿保の子よ。
 

 この段は、前段で在五が「けじめみせぬ心」であったことを受けている。
 
 コラ在五。けじめつけろや、けじめ。自らの行いに相応の責任果たせや。な? ミズからくくれや(106段)。な?
 神の意味など、おめーにゃわかるまい。せいぜい、てめーのツクモ髪でもいじってな。
 
 あ、つまりみそかにしないってこういう意味。
 そんで次の段でも〆ます。
 
 
 
 

原文対照

男女
及び
和歌
定家本 武田本
(定家系)
朱雀院塗籠本
(群書類従本)
  第64段 玉すだれ(簾)
   
♂♀  むかし、男、  昔、おとこ女、  むかし男。
  みそかに語らふわざもせざりせば、 みそかにかたらふわざもせざりければ、 女をみそかにかたらふわざもせざりければ。
  いづくなりけむ、怪しさによめる。 いづくなりけむ、あやしさによめる。 いづこなりけむ。あやしさによめる。
       

116
 吹く風に
 わが身をなさば玉すだれ
 吹風に
 わが身をなさば玉すだれ
 吹風に
 我身をなさは玉すたれ
  ひま求めつつ
  入るべきものを
  ひまもとめつゝ
  いるべきものを
  ひま求めつゝ
  いらまし(いるへき一本)ものを
       
  返し、 返し、 返し。女。
       

117
 取りとめぬ
 風にはありとも玉すだれ
 とりとめぬ
 風にはありともたますだれ
 とりとめぬ
 風にはあれと玉簾
  誰が許さば
  かひもとむべき
  たがゆるさば
  かひまもとむべき
  たかゆるさは
  か隙もとむへき
       
      とてやみにけり。
   

現代語訳

 
 

吹く風にわが身をなさば

 

むかし、男、
みそかに語らふわざもせざりせば、
いづくなりけむ、怪しさによめる。
 
吹く風に わが身をなさば 玉すだれ
 ひま求めつつ 入るべきものを

 
 
むかし男
 むかし男が
 

みそかに語らふわざもせざりせば
 みそかに語ることしなかったので
 (意味を確定できない、つまり、これ自体どっちつかずという意味)
 

 みそか 【三十日】
 :三十日。みそか。月末。つごもり。
 

 みそかなり 【密かなり】
 :こっそり。ひそかに。
 

 わざ 【業・態・技】:
 ①行い。行事。
 ②仕事。
 

いづくなりけむ怪しさによめる
 どっちつかずの怪しさで詠む。
 
 いづく 【何処】
 :どこ。どっち
 
 

吹く風に わが身をなさば
 吹く風に 流される気ままな風来に我が身を例え
 

玉すだれ
 玉簾(をみてみよう)
 

 玉簾:
 ①花の名。
 ②美しい簾。
 どっちとも言えない。
 

ひま求めつつ 入(▲い)るべきものを
 暇(間)があれば イるべきものを
 ①簾の隙間があれば、風も入るものを
 ②余裕があれば、(花も簾)買うものを
 を合わせたどっちつかず。
 
 

誰が許さば

 

返し、
 
取りとめぬ 風にはありとも玉すだれ
 誰が許さば かひもとむべき

 
 
返し(△女)
 誰かが返し(女という指定はない)
 

取りとめぬ 風にはありとも 玉すだれ
 とりとめのない、風のような内容だね
 前段の流れで、けじめが全くなってないね。
 

誰が許さば かひも(▲ま)とむべき(△か隙もとむへき)
 誰の許しで 買えると思っているの?
 

 つまりギャグ。業平の歌ではない。ネタにしただけ。
 だから、けじめないのはだめだって。大らかな愛? なにそれ。
 
 風のように軽い、軽薄な言葉だね。