むかしむさしなる男が、武蔵鐙にかけて、京女に歌を詠む(鐙:爪先をかける馬具)。
しかし何を言いたいかわからない(聞ゆれば恥し、聞ねば苦し)。
他方で女は高圧的(問はぬもつらし、問ふもうるさし)。
その心は、妻先で足蹴にされ、尻にしかれる男(道具)です。
言わんとわからん? ナニ? ナニしたい? うっさいなあって。
うわあ。これまじ。真剣と書いてマジ。だって、16段で片手で足りたと書いてある。
武蔵も切り捨てる、それが女流の強さです。
彼の妻は藤原の大臣の娘でした。つまり最京の女。
武蔵なる男は、関東辺りに赴任した紀有常のこと(下野国。867年)。
16段で彼は妻に捨てられた。ショボいから尼になるといわれ、出て行かれた。彼の剣がナマクラだったのだろうか…。
それで「堪へがたき心地」で死にそうなっている、のかもしれない。
彼は16段で「あてはかなる(高貴だが儚い)」と形容され、伊勢の「あてなる男」は有常のこと。「昔男」が著者であるように。
さらに41段で「かのあてなる男」の男気あふれる行いが「武蔵野の心なるべし」と表現される。
となると、漢(オトコ)のように武蔵(オトコ)と読んでもいいのではないか。むかしオトコなる男。
このように男が露骨にないがしろにされる関係は、この有常(あてなる男)の文脈でしか出てこない。
昔男もそうだが、もう少し控えめ。
男女 及び 和歌 |
定家本 |
武田本 (定家系) |
朱雀院塗籠本 (群書類従本) |
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第13段 武蔵鐙(あぶみ) | |||
♂ | むかし、武蔵なる男、 | 昔、武蔵なるおとこ、 | 昔。武藏なる男。 |
京なる女のもとに、 | 京なる女のもとに、 | 京なる女のもとに。 | |
聞ゆれば、恥し、 聞ねば苦し、と書きて、 |
きこゆればゝづかし、 きこえねばくるし、とかきて、 |
きこゆればはづ・[か]し。 きこ・[え]ねばくるしとかきて。 |
|
上書に武蔵鐙と書きて、 おこせてのち、 |
うはがきにむさしあぶみとかきて、 をこせてのち、 |
うはがきにむさしあぶみとのみ書て。 のち |
|
おともせずなりにければ、 | をともせずなりにければ、 | をともせずなりにければ。 | |
京より女、 | 京より女、 | 京より女。 | |
♪ 18 |
武蔵鐙を さすがにかけて頼むには |
むさしあぶみ さすがにかけてたのむには |
武藏鐙 流石に懸て思ふには |
問はぬもつらし 問ふもうるさし |
とはぬもつらし とふもうるさし |
とはぬもつらし とふもうるさし |
|
とあるを見てなむ、 | とあるを見てなむ、 | とあるを見てなん。 | |
堪へがたき心地しける。 | たへがたき心地しける。 | たへがたきこゝちしけり。 | |
♪ 19 |
問へば言ふ 問はねば恨む武蔵鐙 |
とへばいふ とはねばうらむゝさしあぶみ |
とへはいふ とはねは恨む武藏鐙 |
かゝる折にや 人は死ぬらむ |
かゝるおりにや 人はしぬらむ |
かゝる折にや 人はしぬらん |
|
むかし、武蔵なる男、京なる女のもとに、
「聞ゆれば、恥し、聞ねば苦し」と書きて、
上書に「武蔵鐙(むさしあぶみ)」と書きて、
おこせてのち、おともせずなりにければ、
むかし、武蔵なる男、
むかし、むさしとかいう男が、
京なる女のもとに、
京(とかいう)女のもとに
※京都。京女。察せよ。しかして、
聞ゆれば、恥し、
(何やら)聞こえてくるのも恥ずかしい
聞ねば苦しと書きて、
(しかし)聞かないのも心苦しいと書いて、
上書に武蔵鐙と書きて、
差出人(題名?)にむさしあぶみと書いて、
おこせてのち、
(書き)起こしてから、
おともせずなりにければ、
音もせずになれば、
(音信不通。つまり送ったかも、これだけでは不明で、意味も不明。
その「心」は何か? う~んなんやろ。もうこの時点でめんどくささ漂う)
京より女、
武蔵鐙を さすがにかけて 頼むには
問はぬもつらし 問ふもうるさし
京より女、
京より女(が返事をして)
(あ、みてくれた!)
武蔵鐙(▲を)
むさしトウ。
さすがにかけて 頼むには
刺すがにかけて 頼むには
※さすが:刺鉄の金具。
→禁句じゃない?
問はぬもつらし
切り捨てるのも辛い(御免だが)
問ふもうるさし
トウのもうっさい(面倒な男だ)
とあるを見てなむ、堪へがたき心地しける。
問へば言ふ 問はねば恨む 武蔵鐙
かゝる折にや 人は死ぬらむ
とあるを見てなむ、
とあるのを、男が見て、
堪へがたき心地しける。
耐え難い心地がした。
問へば言ふ
聞けば言う。
(いや用があるなら自分で言いなさい)
問はねば恨む 武蔵鐙
聞かねば恨む(というから) 武蔵トウ(問う)
(うわうぜーのう)
かゝる折にや
そんな折に(そんなことしたらば)、
人は死ぬらむ
オレ刺されてしんじゃう。
折=若死。うわよわ! じゃあ聞くなって。
その心は、そのまま詠んだらまずいって。誰とナニしてる? なんて言えないよ~♪(業ちがいや!) 聞くとあぶみ(ない)。
尻にしかれて足蹴にされる、それが鐙(あぶみ)やねん。もっといえば、爪先にかけて、妻が先やねん。うまいっしょ?
いや妻なのかも不明だが、一応(優しく)返事を返しているのだから、そうだったのかもしれない。でなければ無視でしょ。
鐙:鞍(くら)の両わきにさげて足を踏みかけるもの。あしでふむで、あぶみ。あー不通ね。なんで「音もせずなりにけれ」。
一応、郷ひ○とか業ひらとか、全く関係ない冗談なので。属性はほぼ同じかもしれんけど。あ~これが因縁? 「宿世」?(65段)